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この男のこういうとこ、天才。--高橋照美の「小人閑居」(51)
生まれて初めてできた友達・兼・親友の高橋照美が、今のところ自分(四郎です)にとって、ただ一人の友人。それでもう「友人」は、お腹いっぱい。
ここまで省エネな人生で、人として欠けすぎかなと思う時もある。だがひとたび彼を「友人」と呼んでみると、やはりほかの誰もが「知り合い」という薄さだなと納得してしまう(自分の感覚では)。
ので、心境が変わるまで友達は増やさないでおく。
高橋が崇拝するほど読み返していた『嫌われる勇気』ほかの古賀史健さんが、「電話線を引き抜いてやろうかというほど営業電話がかかってくる話」を書いておられて、「うわー、高橋貸したげたい」と思った。
今、ちょうど一本かかって来ているので、横で実況する。
「はい中澤経営事務、高橋です。はい。はい。あー、ありがとうございます。不動産ですとですねー、別の担当者がおりまして。ちなみにこの番号、どこで入手されました? あー、はいはい。そうですかありがとうございます。ちなみに扱っておられる系の商品は、今御社ではダイレクトマーケティングと今やっておられる電話営業と、インターネット広告ほかでは、どれがどのくらいコンバージョン差がありますかね。あ、そこらへんは上の方でないと分かんないですか。それでですね。この電話実は、弊社のお客様のこみいったご相談とクレームを頂戴する電話なんですよーー。なのでお手数ですがリストから外して頂けると助かります。はい、はい。よろしくお願いいたします。はい、失礼いたします」
今まで、かかってきた営業電話をきっかけとして、その会社が中澤の経営コンサルティングの客になった(逆営業をかけた)ことはないらしい。それでも、ボールを取りに行く姿勢というか、同じく仕事を懸命にしている仲間としてかかわる姿勢というか(共同体感覚というか)。
なんだろうかこれは、という気持ちのよさがあるのだ。
……俺が電話の相手なら、なごやかな気分で電話をリストから外すやろうな、と思う。こうやってリストから地道に外してもらえば、転売された時もリストからは削除されたままということだ。「地道に勝る魔法なし」とは『宇宙兄弟』の編集の佐渡島さんの言葉だが、まさにそれを目の当たりにする。
きっと五十年ぐらいこの男のそばにおっても、俺がこんな風に応対できるようになる日は永遠に来やへん。
けども、この男のこういうとこ、天才。と思いながらそばにおれるというのは、幸せな人生やなぁ。どうでしょうか。
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