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『冗談』

これは兼ねてより予定していたラランドの単独ライブを高校時代からの友人と観に行った日の話。充実感のある一日であった為パソコンを開いて認める他なかっただけの雑記である。あなたが読む必要はない。

今日は寝坊するところから始まった。私が代表を務める会社の定例MTGは11時から始まるのだが、気が付いた時には予定の時刻を5分程過ぎていた。大至急謝罪文を投稿し慌ててMeetに参加した。会議は滞りなく進み、そのままの流れで商談も済ませ、あたかも遅刻などしてないかのような顔で社員に挨拶をして一息つく。お腹は空いていたが遅刻している分際でコンビニに寄る事も出来ず鳴るお腹がバレないよう細心の注意を払いながら机へと向い仕事をしているフリをした。

たらたらと仕事をしているうちに集合の時間になったので、旧友と合流しラランドの単独が行われる会場、ABCホールへと向かった。福島駅から徒歩で向かう途中喉が渇いたのでコンビニに寄ったのだが、「サントリーの天然水」が売り切りれており、ファミリーマートオリジナルの「宮崎県霧島の天然水」と「新潟県津南の天然水」しか置いていなかった。私は生粋の日本人なので軟水を心より愛しており、「エビアン」などを好んで飲んでいる輩は日本国民としての誇りを忘れて生きているので普段から迫害する事にしている。「宮崎県霧島の天然水」と「新潟県津南の天然水」のうちどちらがより軟水に近いかがわからなかった為、人生で初めて水の成分表とにらめっこした。最近読んだ本の知識で日本の河川は急流が多く水が早く流れるのでマグネシウムの含有量が少なく諸外国の水よりも軟水であるという知識を蓄えていた為、マグネシウムの含有量が少ない「新潟県津南の天然水」を購入した。正直味の違いなんてわからない。気持ちの問題である。日本人だから。軟水だから美味しい。そう思い込むことが大切なのである。

会場に到着し受付を済ませるとラランドのマネージャーである”マネタク”がお客さんを出迎えていた。「こんな普通にスタッフしてはるんですね!」「スタッフ全然おらへんから~」みたいな軽口をし場内へ入る。場内に入ると所狭しと並べられた椅子にラランドファンっぽい若者達がぎっしりと詰まっており、ラランドの人気の高さを再確認した。我々もその一人であると思うと少しばかり気にくわない気持ちがあったがそれが何故なのかはわからなかった。

ラランドとの出会いは2019年のM-1グランプリ敗者復活戦にまで遡る。当時誰も知らなかった無名(少なくとも自分の周りでは)の男女コンビが正統派のコント漫才を堂々と披露し笑いを搔っ攫っている姿に心惹かれた。しかも事務所に所属しているわけではなくフリーで活動し、ボケ担当のサーヤに至っては広告代理店で働きながら芸人活動をしているらしい。そんな異色の経歴を持つ二人のファンになるのは難しいことではなかった。この年のM-1を皮切りにラランドは怒涛の勢いで売れ始め、サーヤのカリスマ性から若年層からの熱い支持を得るコンビとなった。レモンジャムという個人事務所も立ち上げ順風満帆のコンビであったが、人気すぎるが故に天邪鬼である私の熱が冷めていくのは避けられない事だったように思う。そこからたまにYouTubeを見るくらいの関係性に落ち着いていたので、今回単独のお誘いを旧友から受けた際に、行くと返信をするまでに少し時間が必要であった。

結果から申し上げると最高の体験だった。お笑い芸人の単独ライブは身内ネタや微妙なネタ、よくわからないビデオを見せられるイメージだったのだが、そんなイメージを完全に払拭するライブを見させていただいた。OP映像から転換のBGM、ネタの内容や順番、細部まで拘っていると感じるライブであった。これが事務所に所属せず、実費で開催する個人事務所の強みだと強く認識させられた。正直悔しかった、自分たちでこんな最高のライブを作り上げれたらどれだけ気持ちが良いか。ラランドチームが心から羨ましかった。

退場後、買うつもりのなかったグッズを投げ銭という意味で購入し、またまたお客さんを見送っている”マネタク”にありがとうございましたと伝え、ABCホールを後にした。森見登美彦を読み終わった時の様な気持ちの良い読後感を感じながらまだ明るい19時の福島を歩いたのはしばらく忘れないと思う。

私は明日5時半に起きなければならない。それなのに丑三つ時に突入してもなお文章を書く手が止まらなかったことは少しだけ誇らしく思った。

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