なぜ日本ではコロナワクチン忌避が控え目だったのか

この記事は、私が最近書いた以下の論文の要約です。
Tanihara, T. and Yamaguchi, S. (2023), "How was the coronavirus vaccine accepted on Twitter? A computational analysis using big data in Japan", Global Knowledge, Memory and Communication, Vol. ahead-of-print No. ahead-of-print.

https://doi.org/10.1108/GKMC-07-2022-0163

2021年3月から10月までにツイートされた、ワクチン関連の全ツイートを計算社会科学的な方法で分析しました。今回は、Word2vecという自然言語処理モデルをフル活用して、ツイートを機械的に解析しました。ファインディングスは以下の通りです。

・日本のTwitter上で、ワクチン忌避が一番盛り上がったのは2021年3月ごろ。
・しかしその当時、まだ一般向けにはワクチンが供給されていなかったため、実際のワクチン忌避は起こりようがなかった。
・7月以降は、ワクチン忌避ではなく、ワクチン接種後の体調の報告が多くつぶやかれた。
・一方で、ワクチン行政に対する不満は調査期間中ずっと拡散力を持っていた。
・特に、4月、5月は、オリンピック開催に関連してワクチン供給の遅れへの不満がTwitter上でピークに達していた。

日本で本格的なワクチン忌避が起こらなかったのは、主に以下の二つの点にまとめられます。

①ワクチン忌避言説が盛り上がった時、まだワクチンがなかった。
②ワクチンへの恐怖よりも、ワクチン供給が遅い政府への不満の感情が上回った。

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