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ネット世論から見た2024年衆議院選挙


私の本は過去のものになった

今年の8月に『「ネット世論」の社会学」という本を出し、ネット世論は必ずしも実際の世論のバロメータとはならないということを書いたのですが、今回の選挙でそれは「昔の話」となりました。

時代を読めず前著を書いてしまったことへの懺悔として、今回の衆院選を分析した記事を速報的に記しておきます。

各政党に対するX上の世論

選挙期間中のX上の世論がどのようなものだったかを調べたのが以下のグラフです。

選挙期間中における各政党に対するX世論の分布

データ取得方法:Yahoo!リアルタイム検索の「話題順」上位200ツイート(RT数も加えて計算)。対象期間は10月15日(公示日)から10月26日(投開票日前日)。各政党名をキーワードとして検索した。ラベリングに関しては筆者が人力でマイニングした。

自民党、立憲民主党、公明党、日本維新の会は反対意見が目立ちます。それに対して賛成意見が目立つのは、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、参政党、日本保守党です。

特に、国民民主党の玉木代表は積極的にツイートし、多くのリツイートを獲得しています。各党代表によるツイートのバズり具合を以下のグラフに示します。

各党代表によるツイートの伸び具合

比例代表における得票数との関係

次に、毎日新聞が発表した比例代表における各政党の得票数を確認してみましょう。

毎日新聞2024/10/29, 「衆院選比例 自民533万票減、公明114万票減 過去最少の得票数」https://mainichi.jp/articles/20241029/k00/00m/010/256000c

注目すべきは、前回の選挙からどれくらい増加あるいは減少したかです。先に示したX上の世論と見事に対応していると思いませんか?そこで、相関関係を探ってみました。

各政党へ言及したツイートと比例代表得票数の関係

x軸は、その政党に対するポジティブなツイートとネガティブなツイートの差です。y軸は比例代表の得票数(今回と前回の差)です。驚くべきことに、相関係数は0.83。行動データにしては非常に高い相関が認められました。

ただし、これは因果関係を意味するものではないことには注意してください。ただ単に数字が連動しているというだけです。

ネットは世論を反映することもある

前著で、「ネット上の意見は偏りがあり、あまり世論を反映しているとは言えない」的なことをさんざん述べたのですが、徹底的に反省します。時代は変わりました。

政治コミュニケーションにおいて、ネットメディアを用いて情報収集し、同時に情報を発信する新たな層が若年者を中心に形成されています。彼らの声はおおむね正確にXやYouTubeのコメント欄で可視化されています。

他にも色々定性的な考察をしているのですが、それはまた別の媒体で書く予定ですので、今回はとりあえずデータ紹介ということでご容赦ください。

が、ひとつだけ思っていることを述べておきます。それは、一定の層の人が、X上で展開される批判や悪口に疲れたのではないか、ということです。だからこそ、「対決より解決」を掲げる国民民主党に魅力を感じたのではないかと思います。確かに玉木代表はじめ国民民主党にポジティブなツイートは、他党をあまり批判していませんでした。

これはネットメディア研究者としては非常に望ましいことです。

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