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【祝・合格🎊】先人から多くを受け取るための、たったひとつの愚直なやりかた(2024年会計士試験合格祝賀企画に寄せて)

闘魂だ。

会計士試験論文式合格者のフレンズたち。まずは合格おめでとう。

おれが誰かはこの際どうでもいいことだが、ネットの片隅に生息する、しがない独立会計士だ。最近はご高齢経営者の電話相手(マジで)などして小銭を稼いでいる。

この記事は、今なお挑戦を続けるBIG監査法人元パートナーにしてレジェンド系会計士であるてりたま氏の呼びかけによる、「X会計士界隈から論文式試験合格者の皆さんへのリレーメッセージ」企画に寄せたものだ。

聞くところによると、今回は、呼びかけに応じて参集した会計士が45人ぐらいいるらしい。ネットの広さを考えるとそうでもなく見えるかも知れないが、現実に会計士を45人集めて仕事をするのは結構大変でスゴイ数だし、なによりてりたま氏の人徳がヤバい。もうこのまま、一夜限りの復活会計人コース(*1)特別増刊号としてフィジカルで出版してもいいぐらいだとおれは思う。

*1 中央経済社が発行していた会計系受験雑誌。2020年8月号を最後に紙媒体は休刊。いまはネットで頑張っており、ネット会計人界隈からも寄稿者が多く、出版への登竜門という噂も。
本を出したい人は、マジでブログとかいっぱい書くといいと思う。手始めに合格体験記でも送ってみては?
webサイト:会計人コースweb
X(twitter):https://x.com/kaikeijincourse

どんなメッセージが飛び出してくるのかおれも楽しみだが、ともかく、これから1日1本ずつ、計45本ぐらい記事がアップされるわけだから、しょっぱなから長々としたものは読むに堪えないだろう。だから今日は、めでたく合格したフレンズたちがここで、NOW今、やっておくべきとおれが確信するひとつのことをシンプルに述べたい。

「合格者へのリレーメッセージをぜんぶ読め」

以上だ。


なんだもう終わりかと思ったフレンズのために、おれがそう思う理由を述べておこう。ここからは結局長い。スマン。


1.案外みんな悩んで書いてる

新規の合格者になにか伝えたい、そういう気持ちはわりと多くの人にある。しかし、いざ書くとなると・・・さてはて、いったい何をどう伝えたものだろうか?これはジッサイ悩ましい。

中には、「やるって決めて15分でだいたい書けました!」みたいな剛の者もいるかもしれないが、そういう人はもともと会計士にならずに、もの書きかなんかになるべきだった少々特殊なフレンズだ。普通はそうじゃない。

内容は、まだ何とかなる。長く会計士をやっていれば、新人の頃に自分が知っておきたかったこととか、これでセカイが広がった系の話とか、有益な教訓をもたらすヤバい失敗談とか、そういうエピソードのひとつやふたつは持っているものだ。

悩ましいのは、キャリアのため未来のために、今こそこれをやっておくべき!意識するべき!系の「ためになる話」になればなるほど、ありがたい助言なのか、めんどい説教なのか、単なる自慢話なのか、というカミヒトエ=プロブレムが発生するというところだ。チョー賢いAIとかを駆使しても結局この問題は解けない。

合格から時がたち、監査法人を離れたりしていればいるほど、今から監査法人に入ろうとしている合格者のREALからは遠くなっていくのだ。気がつけば、おれですら、自分が合格したのは20年とかそれぐらい前になる。つまり、おれが助言をしようとしているのは、自分がイメージする、ヴァーチャルな合格者だ。ターゲット像があいまいであればあるほど、メッセージは当然ながら的外れになりやすい。そして、ただ無視されるだけならいいが、合格者にウザがられ、誰だか分からないネットのフレンズたちに嘲笑されるような事態にもなりかねない。これはプレッシャーだ。

そもそも、人に何かを伝えることは難しい。なにしろ、REALワールドでさえ、100%助言目的で本人のためを思って言ったはずのことが、たまたま気分が落ち込んでたとか、なんかそんなような理由で不幸な諍いになってしまうのが人類社会なのだ。ましてや、ここはインターネット・・・Uの字テーブルの向かいに座った奴といつ喧嘩が始まってもおかしくない過酷な世界・・・「Aを頑張ると良いことあります」と言っているだけなのに、「Bを頑張ってもムダという事でしょうか!」などとヤカラってくる通り魔のような手合いに、いつなんどき遭遇しないとも限らない。社会では、あらぬ誤解みたいなものは避けてとおれないのである。

そうつまり、人類は分かり合えない。現に世界から争いはなくならない。しかし、だからと言って、部屋の片隅で悲しみにくれていてもしょうがない。「伝える」努力をしなければ、社会もコミュニティも維持できないし、最高の仲間とも、サイテーな友達とも巡り合えないのだ。

今回メッセージを寄せてくれるパイセン達は、そりゃあ少しぐらいは?いいこと言ってチヤホヤされたいとか、そういう邪心もあるかも知れないが(例えばおれみたいなやつだ!)、少なからず、

「これを言うとウザがられるのではないか・・・」
「だからといって、ウスイメッセージでは響かないのでは・・・?」
「どうすれば??・・・しかし宇宙とは・・・そして真実の愛とは・・・。」

みたいな悩みを乗り越え、業務の時間を削り、顧客にクレームを言われ、家族にないがしろにされ、それでもなにかを表現したいという覚悟を握りしめて、参加を決意したグレートな人々だ。細部は多少違うかも知れないが、とりあえず、そんな風に思っておけば概ね問題ない。

だから素直な気持ちで読んでみてほしい。ぜんぶだ。そうすれば多くのものを受け取れるだろう。言葉の裏にあるハートも含めて。

2.人生やキャリアに正解はない

会計士を10人ばかし集めて、キャリア論を語らせると、中には多少の共通部分もあるかも知れないが、おどろくほどみんながみんなサンプル数1の世界を生きていることがわかる。時代・・・環境の違い・・・慢心・・・。さまざまな要素で、人それぞれ、違ったルートで紆余曲折ありつつ今に至っている。まさに人生だ。

業界のゲートをくぐる合格者たちの中には、なにか定番のキャリアストーリーみたいなものや、わかりやすい成功譚を参考に、そのルートをフォローしてみよう、というタイプがいるかもしれない。目標をもってなにかに取り組むのはもちろん悪くない。効率も大事かも知れない。素直なのもいい。

しかし、人生には思いがけないことが起こるもの。ひたすら邁進していても、アクシデントで道が閉ざされてしまうことは残念ながらあり得る。もしくは、魅力的だと思って突き進んでいる途中で、「なんか思ってたのと違う・・・」とシビアなREALを知り、心くじかれ、路線変更を余儀なくされるようなこともあるだろう。よくある。

さて、そんなハードシングスにぶち当たったとき、自分はどうするのか?どういう方向を目指すのか?何から考えるべきなのか?

もうお分かりのとおり、先人たちのたどった道にその答えがある、だから読め、という話になるわけだが、ひとつ注意点がある。残念ながら、答えがそのまま誰かのメッセージに書かれていることはほとんどない。世の中はそんなに甘くないのだ。結局は、自分だけの正解を見つけるしかない。これは、ネットの誰かではない、近しい間柄で行われる助言でも同じだ。

しかし、だからと言って先人たちの体験談やメッセージに意味がないわけではない。何しろ、そこには生き様や仕事観・・・つまり哲学やソウルが込められているのだ。しかも45とおりもある。現時点では誰が何を書くつもりなのか全くわからないが、仮にそんな気配のことがまったく書いてなかったとしても、勝手に感じ取ればよい。

それらは、個々に見るとバラバラで、時には互いに矛盾する話もあるかも知れない。だが、いつか道に迷った時、そんな話を集めて描かれた巨大な人生哲学のモザイク画が、自分だけのヴィジョンを浮かび上がらせる力の源泉になってくれるだろう。

だから、だまされたと思って全部読もう。ひとつの正解を見つけるのではなく、たくさん読むことに意味がある。

3.人から人へ伝わるもの

よその業界のことは知らないが、会計士業界では、一般にコミュニティのパワーには一定程度信頼を置いて良いものとされている。同期とのヨコのつながりや、苦楽を共にした先輩や後輩とのタテのつながり、または、それを経由したよくわからないつながり、そういうのは結構デカい。おれも、相当助けられている。

コミュニティなどというと、「わるいムラ社会」的なものがイメージされて苦手に感じるフレンズもいるかも知れないが、案外大丈夫だ。

社会一般の情勢と同じく、濃ゆいREAL人間関係、みたいなものはどんどん薄まってきている。そもそも、専門家の集まりはどちらかというと個人主義的になりがちなので、闇のシンジケートめいたむやみな結束力で結ばれた一部の変わった部門やチームを除けば、少なくともおれの知る20年ぐらい前には、もう近代的な感じになってきてたのが会計士業界ではないかと思う。

さらに、現代にはインターネットというものがある。ネットを通じて色んなものをスキップして、突然フラットなコネクションができたりするようになり、会計士を取り巻くコミュニティの可能性はずいぶん広がった。

そんな、会計士ネットコミュニティ発のムーブメントのひとつが、今回の企画だ。ここには、主催者であるてりたま氏のような偉人もいれば、おれのような小物もいて、REALでは文字通り住む世界が違うような会計士どうしがなんとなくゆるくつながっている不思議な場だ。そして、合格者にウエルカムメッセージを出そうぜ、と言えば、何十人と集まるようなポジティブさを湛えている。

そして、それが必ずしもネットだけでとどまらないのが、この界隈だ。ネットの知らない人と思っていたら、知人を1人か2人かませば実はその辺に普通にいた、みたいなことはこの業界にはよくある。実によくある。おれはどちらかというとREAL(仕事)とネット(遊び)を区別するタイプだが、ネットでの付き合いが思いがけずREALにつながり、人生を変えるダイナミックな動きになったりすることも、あるらしいと聞く。

まあ、そういう狭さは、ムラっぽいといえばムラっぽいのかも知れない。ただこれを、REALとのハイブリッドな展開に可能性を持ったネットコミュニティ、みたく前向きに捉える事もできる。どう付き合うかは個人のチョイス次第だが、うまく活用できれば様々な未来に繋がることだろう。

また、隣接業界に目を向けると、「X会計士界隈」は、歴史ある会計クラスタ等の良質なネットコミュニティとも接続されており、ときおり立場の違いを認識しながらも、親睦と相互理解を深めている。こちらでも今年は会計系アドベントカレンダーが2個も企画されており、肩書を問わず、様々な会計人がヤバい知見やゆるい知見を披露することになっている。楽しみだ。

つまり今は、ネットにアレルギーがなければ、会計人にとってはとてもとても恵まれた環境があるということだ。

しかし、世間にはひどいインターネットが溢れている中、こうした環境はどうして生まれたのだろう?人、時代、経済情勢、会計や監査を巡る変化、テクノロジーの波・・・考えだすと、関係しそうな要素が多すぎて、ほとんど偶然なんじゃないかと思えてくる。

そんなこんなを考える中で、おれはふと思い至る。会計人ネットコミュニティが、今後も一定の人にとって居心地がよく、思いがけない可能性がふと転がっているような界隈であり続けるとは限らないのではないかと。

ある日、古くから会計クラスタの治安を維持してきたような良識ある偉大な先人たちがネットを離れ、突然サークルクラッシャーめいた何かがやってくるかも知れないし、イーロン・マスクみたいなやつの野望とかにより、SNSはまんまと、いいねやページビュウのスコアを競い合う、過酷なe-sports空間へと完全に変貌を遂げ、我々は居場所を失ってしまうのかも知れない。

結局、今、目の前にあるラッキーな環境は、ただのラッキーでしかなくて、いつか「いい時代だったね」と終わってしまうものなのだろうか。

なにしろ諸行は無常であるし万物は流転するのである。ネットコミュニティなどなおさらだ。ひとつが消えたら、また新しいものが生まれ、どんどん変わっていく。多くの地球上の生命が、個体には寿命を設定し、子孫を残して代替わりすることで長期的に種を維持するシステムを採用しているように、現れては消えることがこの世界のありようなのだ・・・。さあ、宇宙の仕組みを受け入れ、あるがままに滅びを迎えよう・・・というのも悪くはないが、それでは少し人類に冷たすぎる。何より合格祝賀メッセージ向きではない。

というわけで、今日は往生際が悪いことで有名な人類諸君向けのシンプルなプランを用意した。

理屈はこうだ。人は言葉を持ち、物語を語り継ぐ事ができる。これまでも、そうやって多くのものが人から人を介し、時を超えてきた。今回もこの仕組みに期待してみよう。

つまり、仮に現環境が歴史の一幕にぽっと存在した幸運な偶然であったとしても、今年多くの愉快な会計士たちが、新たに業界のゲートをくぐる者のために、ネット上でウエルカムメッセージを発しようと集ったことは事実である。とりあえず、このことだけでも記憶にとどめおくのだ。

そのために何をすればいいか。簡単だ。その言葉を受け取ればいい。ぜんぶだ。

この企画を彩った楽しい人たちは、いつかいなくなる。その言葉はネットのどこかにしばらく残るかも知れないが、ネットは古代遺跡のように千年オーダーの風雨を耐えぬく堅牢なメディアではない。いずれは砂のようにサラサラと電子の海に消えてしまう。

しかし、ちょっとした思い出話や語り継がれる逸話の中であれば、中でこそ?、そういった人々や言葉は、ずっと生き続けられる。年月が経ち、例え元が何かわからなくなったとしても、受け継がれてきた文化や価値観のようなものの一部として、人知れず誰かを助けるだろう。

世界が変わり、人が入れ替わっても、この2024年合格発表を巡る思い出が伝播していけば、後世にもまた界隈が活気づくような面白いことが起こるかも知れない。おれは、そんな未来を期待する。

というところで、いい加減話をまとめよう。まあ、今回おれが言いたいのは、合格者のフレンズたちには、ネット会計人コミュニティの空気、そしてそこに住まう住人の息づかいをまず体感して頂きたい、ということだ。仮にコイツらウザいと思ったら回線を切れば済む話だし、しばらく気配を殺して様子見に徹してもいい。だが、もしも、気に入ったり興味を持ったなら、いずれ自分自身が何かを始めてみる事を考えてみて欲しい。

なにしろ、今はまだ合格したばかりだ。業界を盛り上げるとかそういうことは後から考えても十分間に合う。みんながそういう人間になりたいタイプではないだろうし、別にやらなくても全然構わない。ただ、どっちにしろ、今やっておいて損にならない事が間違いなくひとつある。

実にシンプルだ。

「合格者へのリレーメッセージをぜんぶ読め」

それは、おまえを助けるだけでなく、業界の未来を拓く偉大な一歩となるかも知れない。おまえにはその可能性がある。

以上だ。


明日は、投資銀行パーソンでありながら、夜間MBAで見識を広げ、さらにnoteで価値算定(Valuation)や、監査法人での過ごし方について情報発信をしている、ララさん(https://x.com/rara_kaikeishi)からです。
ララさんが贈りたいモノとは?楽しんで受け取ってください!

また、2024年12月は会計クラスタも、とても盛り上がる予感です。よろしければ、以下の会計系アドベントカレンダーもチェックしてみてください。

アドベントカレンダー:クリスマスまでの期間に日数を数えるために使用されるカレンダー。転じて、インターネット上などで、12月の1日から25日までに、特定のテーマに沿って毎日ブログなどに記事を投稿していくという企画を指すようになった。

会計系 Advent Calendar 2024
主催:blanknoteさん

2000字未満縛り!ゆる会計アドベント Advent Calendar 2024
主催:けいたろう@公開用さん


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電子の海に潜む闘魂
誠にありがたいことに、最近サポートを頂けるケースが稀にあります。メリットは特にないのですが、しいて言えばお返事は返すようにしております。