見出し画像

新卒でPdMを始めるのは昔より有利?不利?

書き出し

マネーフォワードPdMのtktです。
最近、「今もし自分が新卒としてプロダクトマネージャー(以下、PdM)を始めるとしたら、どうなるんだろう?」と考える機会がありました。
僕自身がPdMになった頃と比べると、この10〜20年で世の中もIT業界も大きく変わっています。
そこで、今の時代に新卒からPdMを始めることのメリット・デメリットを、昔と比較しながらまとめてみます。


昔のPdMキャリアはどうだった?

そもそも10年ほど前は「PdM」という言葉自体、それほど浸透していませんでした。
言い換えるならば「自分の職種に付随する業務をやっていくうちに、気づいたらPdM的な役割を担っていた」という人が多かったんです。(私も「自分がやっているこれってPdMって言うんだ。じゃあ今度からそう名乗ろう」だった)
エンジニアやデザイナー、開発ディレクターが、ロードマップ作成や要件定義など“PdMらしい仕事”を少しずつ覚えるうちに、自然とそのポジションに収まっていったというイメージです。

また当時は「PdM」というまとまったナレッジを検索しても情報が乏しく、メンターもいない環境で、エンジニアに要件定義を酷評されるとか、ロードマップを事業責任者に激烈に“ロジハラ”されるとか、プロジェクトマネジメントで上司に激詰めされるといった試行錯誤の中で、手探りでスキルを身につけるパターンが多かったと思います。


今の新卒がPdMを始めると有利な点

1. 情報・学習リソースの充実

現在はPdM向けの書籍、ブログ、海外のPMコミュニティ、オンライン学習サービスなどが豊富に存在しています。キーワードを検索すれば、プロダクトマネジメントに関する具体的な知見を瞬時に得られますし、国内外の優れたPMの講演やノウハウにもアクセスしやすくなりました。
昔はなかった「PdM」というポジションが明確に言語化されるようになり、情報収集しやすい時代になっています。

2. ツールやAI技術の進化

AIをはじめとした技術発展やプロダクト開発ツールの普及によって、アウトプットの質を効率よく底上げできるようになりました。たとえば要件定義書やロードマップなど、ある程度フォーマットが決まっているドキュメントであればAIがジュニア〜ミドルレベル相当のドラフトをサクッと作ってくれることもあります。
「とりあえず手戻りが少ないアウトプットを素早く出せる」環境は、昔と比べるとかなり恵まれています。

3. 職種としての明確化・周囲の理解

昔はPdMとプロジェクトマネージャー(PjM)の境界があいまいでしたが、今は「PdM=プロダクトの方向性・ビジョンを決める人」「PjM=プロジェクトの進行管理に特化した人」という認識が広まり、期待値がクリアになりました。
“PdMとして何を期待されているか”がはっきりしているため、新卒でも最初から目指すべき姿と必要なスキルをつかみやすくなりました。

4. キャリアパスの多様化

新卒からPdMとして採用する企業が増え、早期にビジネスサイドとテックサイドを横断しながら成長するチャンスが得られます。
大手企業でもPdM育成プログラムを整備しているところがあるため、最初からリソースが充実した環境で学ぶことも可能です。

5. ハラスメントの減少で働きやすい環境

以前に比べてパワハラやロジハラといった行為が否定的に捉えられるようになり、少なくとも表立ってそうした指導を受ける可能性は大幅に下がりました。
精神的に追い込まれすぎることなく、より健全な職場で働き始められるのは大きなメリットです。


今でも昔でも共通してキツい・不利な点

1. 信頼を得るまでのハードルは依然として高い

PdMは意思決定やロードマップ策定など、組織や事業に大きく影響する仕事を担うポジションです。
そのため、若手のうちから重要な判断を下すには度胸がいるし、周囲を納得させるためのデータやコミュニケーション能力が必要不可欠です。
特に大きな裁量を与えられた場合、新卒の“ペーペー感”を拭うために実績や説得力を積み上げる苦労は昔と変わりません。

2. 組織体制や先輩・上司PdMに左右される

PdMというロールは実践で学ぶ部分が圧倒的に大きいのが特徴です。
知識自体はネットや書籍で学べても、「実際にどこまでスコープに責任を持つのか」「ステークホルダーをどう巻き込むのか」といった現場対応力は、優れた先輩を間近で見ながらでないと吸収しづらい部分があります。
経験値が不足した上司のもとだと

  • ピンポイントのアドバイスが得られない

  • 自己流で限界を迎えるリスクがある

という状況は、昔と変わりません。現場で生きたスキルを身につけるには、結局どんな上司やメンターのもとで働くかがカギになるのは今も同じです。


今だからこそ不利な点

1. 期待値の上昇と競争の激化

昔は「PdM?何それ?」という状態でスタートしていた分、周囲もある意味で大目に見てくれる風潮がありました。ところが現在は、PdM=プロダクトの成否を握る重要ポジションという認識が一般的に広まっているため、

  • 新卒でも高いアウトプットと成果を期待される

  • PdM志望者が増えて競争が激化している
    という状況になり、スタートのハードルは上がっています。

2. 情報過多で自分なりの軸を見失いがち

学習リソースが豊富なのは有利ですが、同時に情報量が多すぎる側面もあります。PdMの定義やフレームワーク、ツール解説があふれているため、

  • 「PdMたるもの、これもあれも身につけなきゃ…」と焦る

  • 結局どのスキルを軸にすべきか迷走する

といった問題が生じやすいです。昔は情報が少ない分、目の前の実践や先輩のやり方から学ぶしかありませんでしたが、今は情報の森の中で自分の道を見失うリスクがあります。

3. ツールやAIに頼りすぎるリスク

AIがアウトプットの初期ドラフトを作ってくれるなど、一見便利ですが、思考プロセスの省略が進みすぎるとPdMに必要な「ユーザー理解」や「課題設定力」が育ちにくい可能性もあります。

  • 土台となるビジネス思考を鍛えないままAI出力に頼ると、表面的な判断に終始してしまう

  • ツールに引っ張られ、基礎的なロジカルシンキングや、クリティカルな意思決定力を身につける機会が乏しくなる

4. “厳しい指導”による強制的な学習機会が減った

昔はロジハラやパワハラまがいの指導も少なくなく、身体的・精神的負担は大きかったものの、強い先輩PdMの思考や働き方をほぼ強制的にコピーして習得できる環境でした。いわゆる「守破離」の段階を踏みながら、

  1. :先輩の言うとおりにやる(ときに理不尽なロジハラに耐えながらでも)

  2. :自分なりに手法をカスタマイズしてみる

  3. :最終的に自分独自のPdMスタイルを確立する
    のプロセスを、ある意味半強制的に体験できたわけです。

今はハラスメントが全面的に否定されるようになり、精神的にも働きやすい環境が増えました。これはめちゃくちゃ良いことです。
その一方で、「先輩PdMの思考回路を完全コピー→自分なりにアレンジする」というOJTの仕組みが以前ほど強力ではなくなっている可能性があります。
ネット上のナレッジだけではカバーしきれない、現場で得る“体感的な学び”を、どう再現していくかが課題になりそうです。


まとめ:強いPdMのOJT + 自分の軸が大事

  • 新卒でPdMを始める魅力は、情報やツールが圧倒的に充実しており、昔よりも効率よく学べる環境が整っており、昔ほど暗中模索せずにスタートできる点。

  • 今でも昔でも共通してキツいことは、意思決定のプレッシャーや、上司・先輩PdMの質に左右される点。

  • 今だからこそ不利なこととしては、周囲の期待値が高まり競争が激化していること、OJTで得られる経験を見過ごしがちになること、またAI・ツールに頼りすぎて思考プロセスを省略してしまうリスクなどが挙げられます。

結局、PdMとして成長するには「強い先輩のやり方をまず真似る」という守破離のプロセスが大事なのは昔も今も変わりません。
ただ、かつては多少のロジハラやパワハラを伴いながらも、先輩の思考を半ば強引にコピーすることで急成長する“場”がありました。
今はハラスメントが否定的に見られるぶん、そのような“厳しい中で鍛えられる”機会が減っており、どうやって現場のリアルな意思決定や思考力を盗むのか、組織や本人が意識的に工夫する必要が出てきていると思います。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集