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AI時代のPdMに求められるもの──作業の自動化より大切な“物語の設計”
書き出し
マネーフォワードPdMのtktです。
最近AIが本当にすごいのは皆さんご存知の通りだと思います。
私自身もこれまで数時間かけてた仕事が10分で終わって、業務中はAIサービスを並列で動かしまくってるという働き方に大きくシフトチェンジしました。(違う脳の使い方なので変に疲れる)
そんな中でふと20年後くらいにPdMという職種がまだ残っているなら、どういう働き方になるんだろう、生き残るためには何が必要なんだろう。ということを考えたのでまとめます。
AIが広げるPdMの役割と、ストーリーテリングの必要性
作業が自動化されていく先にPdMが担うべきことは何でしょうか。私が思うに、コンセプトや物語をしっかり描いたうえで、AIが出してくるアイデアを判断・選択し、方向性を決めることが重要になってくると考えます。コンセプトやストーリーが固まっているほど、AIのアウトプットがあっても迷わずに取捨選択しやすくなります。
「ストーリーテリング」が注目される背景
ストーリーテリングという言葉を使うと大げさに聞こえるんですが、要は「このプロダクトを通じてユーザーにどんな体験や感情を届けたいのか」を物語として描いてみることです。そこに筋が通っていると、どんな機能を優先すべきか、どういったUI/UXがふさわしいかといった判断もしやすくなりますし、開発チームや社内外の関係者との共通認識も生まれます。感動や驚きといった感情面はAIではまだ捉えきれない部分が多いため、人間の腕の見せ所でもあるわけです。
有名企業が体現するストーリーテリング事例
実際に「ストーリーやコンセプトにこだわると強いブランドになる」というのは、スターバックスやテスラ、Apple、Nikeといった企業を見れば納得できます。ここでは、それぞれが公式に掲げているブランドコンセプトやミッションが、ユーザーの体験としてどう落とし込まれているのか簡単に紹介します。
スターバックス:「第三の場所」を提供する物語
スターバックスは、「自宅と職場のあいだにある居心地のいい第三の場所」というコンセプトを大切にしています。創業者のハワード・シュルツがイタリアのカフェ文化に感銘を受けてからずっと、コーヒーそのものだけでなく、人々がリラックスして集える空間を作ることを目指してきました。
実際、世界中のスターバックス店舗では落ち着いた照明やインテリアが整えられ、あたたかい接客が行われていて、そこに行くだけで何となくホッとする雰囲気が感じられます。カップに名前を書いて呼んでくれるのも、「自分自身の居場所」というストーリーを支える一つの演出です。さらに、インクルーシブ(包摂的)な価値観を打ち出していて、多様な人が安心して過ごせるブランドイメージが醸成されています。
テスラ:ミッションで世界を変えるストーリー
テスラが掲げるミッションは「世界の持続可能エネルギーへの移行を加速する」こと。イーロン・マスクの大胆なメッセージや、既存の自動車業界にとらわれないビジネスモデルによって、多くの人に「この企業は本気で未来を変えようとしている」と思わせる物語を発信しています。
実際にテスラの車を購入したユーザーの多くは、「自分も地球環境に貢献している」「イノベーションの一端を担っている」という当事者意識を持つようです。定期的にソフトウェアアップデートが配信され、車がどんどん進化していく体験も含めて、ブランドのストーリーをユーザーが日常で感じられる仕組みになっています。
Apple:体験を通じて創造性をかき立てるストーリー
Appleは「Think Different」の時代から、製品スペックよりも「これであなたは何ができるようになるのか」というストーリーを大切にしてきました。iPhoneやMacなど、どの製品のプロモーションでも「家族とのつながり」「クリエイターとしての自分」「より豊かなライフスタイル」といった場面を描き、ユーザーの感情に訴えています。
Apple Storeでも商品がただ並んでいるわけではなく、洗練されたデザインと豊富なスタッフのサポートが整っており、訪れた人が「特別な体験」を味わえるよう工夫されています。「Shot on iPhone」のようなキャンペーンでユーザーの撮影写真を紹介する手法も、「あなたもクリエイターになれる」というメッセージを物語として共有している例といえるでしょう。
Nike:「Just Do It」で挑戦を後押しするストーリー
Nikeの有名なスローガン「Just Do It」は、単なる広告コピーではなく、「限界を決めず挑戦する」というブランドのストーリーを体現しています。広告ではトップアスリートの姿はもちろん、普段は表に出ないような人々も取り上げ、誰にでも“偉大さ”が内在しているというメッセージを送っています。
こうしたストーリーテリングのおかげで、Nikeはスポーツ用品メーカーという枠を超えて、「挑戦や自己実現のシンボル」として多くのファンを獲得しました。実際に購入者は単に靴やウェアを買うだけでなく、Nikeが描く「挑戦する人を応援する」物語の一部になった感覚を得ています。
PdMが学ぶべきポイント:物語の“筋”を描いてこそ判断しやすくなる
これらの企業に共通しているのは、しっかりとしたコンセプトやミッションを打ち立て、それを具体的な体験へと落とし込むストーリー設計をしているということです。プロダクトの機能やデザイン、ユーザーとのコミュニケーションなど、すべてがその物語の“筋”に沿うように作られています。
AIが発達して、作業やオペレーションが効率化されるほど、PdMの仕事は「どう作るか」から「何を作るか、どういう物語を描くか」を決める部分にシフトしていきます。ここで重要になるのが判断と選択ですが、そのための軸となるのが物語やコンセプトです。スターバックスの例でいえば「第三の場所」、テスラであれば「持続可能な未来」など、明確なストーリーがあるからこそ、どんな施策やアイデアが“自分たちらしい”のかをブレずに選択できます。
まとめ
作業の効率化が進むとPdMにより求められるのは「判断と選択」
AIが作ってくれた提案をうのみにするのではなく、プロダクトの世界観や価値をどう引き出すかを決める仕事が増えるでしょう。強いストーリーがあれば、迷わずに意思決定できる
有名企業の例を見ると、ブランドの核となる物語を明確に持っており、そこから逆算する形でアイデアや施策を組み立てているように見えます。物語は“使う人”の体験に落とし込む
ストーリーテリングは単にスローガンを作るだけではありません。実際に店舗やウェブサイト、プロダクトデザインなどを通して、ユーザーがどんな感情や発見を味わえるかを意識すると、コンセプトがしっかり体験に結びついてきます。感動や心の動きを意識する
便利なだけではなく、どんなときにユーザーが「わぁ、すごい」と感じるのか、あるいは「なんだか嬉しい」と思うのかなど、感情の動きを大切に考えると物語性が強くなります。AIはデータをもとに合理的な提案をしてくれますが、「心の動き」へのアプローチは人間だからこそ描きやすい部分です。日常の中で感動を見つけられるような生活をしたいと思います。
20年後、AI技術がさらに高度化しても、誰かが物語を描き、方向性を決める役割は残るんじゃないかなと思っています。AIが得意な部分は任せつつ、自分たちのストーリーをどうやって世に送り出すかをプロデュースする──それが今後のPdMにとって大切なポイントの1つになるんじゃないですかね
おわりっ!