【レビュー】『首位相手にアウェイで納得の勝点1』~第18節ベガルタ仙台ⅤSファジアーノ岡山~
スタメン
マッチレポート
遠くに見えた仙台の背中。地力で掴んだ勝点1
首位を走る仙台の背中は思っていた以上に遠かった。
J2初年度の2009年以来にユアスタに乗り込んだ岡山は、立ち上がりからプレスをかけていくことを試みる。しかし、仙台のビルドアップは非常に質が高く、テンポの良いパス回しを捕まえることができない。また、サイドに流れて起点を作る仙台の2トップにディフェンスラインを押し下げられてしまう。岡山はコンパクトな陣形で奪いに行く守備ができない展開を受け入れて、自陣で我慢強く守っていくことにシフトした。
攻撃では自陣からパスをつないで前にボールを運んでいくことにもトライしたが、敵陣に入る回数を増やすことができなかった。意思統一された仙台のプレスによってサイドに追い込まれ、窮屈なビルドアップになってしまうと、仙台のサイド攻撃を受ける。ゴール前にクロスを入れられ、氣田にドリブルで切れ込まれたが、バイスと柳が中心になって粘り強く跳ね返していき、38分には、河野のクロスをイグォンがヘディングシュートを放ち、反発する姿勢を見せた。
後半に入ると、仙台の選手たちがゴールへの意欲を強めたことで攻撃の迫力が増していく中、岡山も集中を高めた。ゴール前ではCBの2人がタフにクロスを跳ね返し、サイドではSBが相手のドリブルに対して辛抱強く対応するも、仙台は攻め続けて左サイドからチャンスを作る。50分に左サイドから中央に切れ込んだ氣田がシュートを放ち、61分には左サイドを縦に突破した氣田がクロスを上げると、ニアで富樫が右足をうまく合わせてループシュートを打った。しかし、氣田のシュートは仙台ユース出身の堀田のセーブに遭い、富樫のシュートは途中出場の宮崎智に頭で掻き出された。
ギリギリのピンチを切り抜けた岡山は途中出場のチアゴ・アウベス、白井陽斗、宮崎幾が推進力を出して懸命にボールを前に運んでチャンスを作ろうとする。そして84分、CKから柳がヘディングシュートを打つも、GKにキャッチされた。
仙台に対して主体的なプレスとビルドアップは通用せず、組織としての成熟度を高めないといけない課題が浮き上がった。しかし、仙台の攻撃を個人の粘り強い対応で無失点に抑えて、アタッカーが個々でボールを敵陣に運んでいった。間違いなく地力はあるけれど、それだけでは勝てないと感じる今季初のスコアレスドローになった。
コラム
木山監督の2年ぶりのユアスタは納得感ある勝点1
「ふがいない気持ちでいっぱいです」
2020年12月18日に木山隆之監督が仙台の監督を退任するときに口にした言葉。あれから約2年が経ち、アウェイチームの指揮官としてかつての本拠地に足を踏み入れた。
木山監督が率いていた当時の仙台では、いろんなことが起こった。2月22日に開幕を迎えると、新型コロナウイルスが流行し、5カ月間にわたりリーグ戦が中断。7月にリーグは再開したが、観客動員数を制限され、“降格なし”という特別なレギュレーションになった。また、10月には所属選手が逮捕される出来事があり、新型コロナウイルスの影響による大幅な減収によって債務超過にも陥った。
ピッチの外が慌ただしい中、リーグ戦ではホームで1勝も挙げることができず、最終的には6勝10分18敗(勝点28)の17位でフィニッシュ。レギュレーションにより降格を巻逃れたが、1年で退任。悔しいシーズンを過ごしただろう。
そして2022年、「首位に立つ仙台が相手だったが、勝ちたいと思ってやってきた」木山監督は若手を積極的に起用。20歳の川本、22歳の阿部と本山、田中、24歳の疋田を先発に入れ、後半には18歳の佐野と22歳の白井を投入した。シーズンを通して「責任を持って戦えるようになった」若手の成長を促しながら、首位相手の勝点1は「納得できる」と述べてユアスタをあとにした。