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何が「科学」を殺すのか?

結局、この30年の経済の停滞が日本の科学を停滞させてしまったのでは?

先日、取材の中で思わずそう考えてしまう場面に出くわしました。

8月上旬、国立科学博物館が財政難を理由に1億円を目指したクラウドファンディングに挑戦したことが大きな話題となりました。日本最大の科学博物館にお金がな無い……という衝撃的な現実に、科博ファンをはじめとした多くの人からの支援が集まり、目標金額の1億円はたった9時間で達成。9月現在、7億6000万円を超える資金が集まっています。

Business Insider Japanでは、このプロジェクトを主導した科学博物館の館長である篠田謙一博士に、科博の現状やこのクラウドファンディングを経た持続可能な博物館運営のあり方について取材をする機会をいただきました。

記事はもう少しで公開する予定なのですが、その取材の中で感じたのが冒頭の課題意識です。

基礎的な研究開発や、科博のような公的な教育リソースを「重要ではない」と考える人は、恐らくいないと思います。将来的な国としての成長の「余力」になるからです。ただ一方で、日本では短期的な利益に目が向きがちで、なかなかそういった領域に十分な支援が集まらない環境が続いています。

実際、科博では資金難に陥ることが決定的になった段階で、さまざまな方法で資金支援の道を探ったそうですが、企業からの支援はなかなか難しい状況だったといいます。アメリカなどでは、一大財産を成した起業家や個人の資産家が博物館などに多額の寄付をすることが当たり前のように行われていますが、日本では高度経済成長期をけん引したようなパワーを持つ起業家が数少なくなっているばかりか、その後の経済の停滞によって後継が現れていないのが現状です。これでは支援を集めようにも、うまくいくわけがありません。

科学技術立国としての立ち位置を確立するための仕組みづくりを進める上では、大学改革をはじめとした研究現場の中でのシステムづくりに目を向けがちです。ただ、国として最低限の経済的豊かさを保ち続けることができなければ、長期的な目線で物事を考えることはどうしても難しくなってしまうように思います。


※こちらはBusiness Insiderの無料会員用に用意したコラムです。三ツ村は金曜担当として、日々の取材で見聞きしたことや面白い研究論文などについて解説することが多いです。
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三ツ村崇志/Business Insider Japan 副編
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