
【40代後半】おじさん!わかったつもりになっていないかい?
社会復帰が刻一刻と近づいてくる。時間を大事にせねばとわかってはいるのだが、つい惰性で日々を過ごしてしまっている。すでに不治の病「仕事行きたくない病」を発症しているのだろうか。いまいち行動力が上がってこない。
転職は自分の選択だ。責任は自分にある。とはいえ、陰の住人としてやはり愚痴はこぼしたい。ネガティブに言えば、今回の転職では働く場所こそ変わるが、仕事に大きな変化がないことがぼんやりと見えている。自由な時間は少なく、人間不信が加速するであろう。
40代後半にもなると、なんとなく先が読めることが増えてくる。旅行をしても、映画を見ていても、音楽を聴いていても、noteを読んでいても次はこの展開だなと。仕事でもそうだ。大体このぐらいのエネルギーを注げば、これくらいの結果がでるだろう。「あぁ、これは負のスパイラル突入の合図だ」。等々、よく言えば俯瞰して物事を見ているのだが、悪く言えば冷めている。
わからないことも、調べればそれなりの情報にたどり着くことも影響している。旅先の情報も事前に知ることができ、答え合わせをするために訪れることも多い。仕事で違和感を感じてGoogle先生に聞けば「それパワハラですよね」「コンプラ大丈夫?」なんて粗を探す精度も上がっている。つまり、「何事においても新鮮味を感じることが少なく、全力で楽しめない」ということだ。イエス。これぞミッドライフクライシス。
愚痴はここまでにして、この「なんとなく先が読めて新鮮味がない問題」に向き合っていく。ヒントをくれたのが名作『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』だ。
なんとなく先が読めてしまうことは確かに多い。だがそれは「確定」ではない。まだ見ぬ世界のことを「わかったつもり」になっているだけではないだろうか。
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は、1997年より公開されたマット・デイモンとベン・アフレックの脚本の映画だ。
主人公ウィルは天才的な頭脳を持っているのだが、喧嘩に明け暮れるやんちゃな日々を送っている。その非凡な才能を持つゆえに、彼に関わる大人たちを掌で躍らせ論破していく。そんなウィルが最愛の妻に先立たれて失意に喘ぐ心理学者ショーンと出会うことにより、素直さを取り戻していく。ざっくりとだがそのようなストーリーだ。
そんな『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』から得たヒントとは、ショーンのセリフにあった。
美術の話をすると君は美術本の知識を。ミケランジェロのことにも詳しいだろう。だがシスティナ礼拝堂の匂いを?あの美しい天井がを見上げたことが?ないだろう
ウィルは読んだ本の内容を、完璧に記憶してしまう能力を持っているが故に、どの分野においても知識量で引けを取ることはない。だがそれは、あくまで本から得た知識にすぎない。実際に自身が体験したことと、本から得ただけの知識とではまったくの別物だ。
40代後半のおじさんは経験、知識がそれなりにあるため先が読めてしまう。だが、実際にまだ未来を体験したわけではない。確かに想像の範囲を大きく超えた何かが起きることは少ないかもしれない。それでも決めつけるのは良くないなと。
家を一歩外に出れば何が起きるかなんてことは誰にもわからない。ひょっとしたら人生に大きな影響を与える出会い、出来事があるかもしれない。社会復帰が近づく不安で、勝手に薄気味の悪い日常を想像し、仕事行きたくない病にかかっているだけだ。
情報に対しても注意する必要がある。調べれば淡い「答え風」のものへ簡単にたどり着く。だがそれはあくまで解像度の粗い「答え風」だ。実際に自身が経験していなければ、本当かどうかなんてわからないはずなのに「わかったつもり」になっていることもある。
答え合わせは自分でしなければならない。美しく加工された景色の画像を期待し、現地へ訪れてみたが「え?」となることも大事だ。それが自身で経験するということ。それも笑い話だ。
「わかったつもり」は日々をつまらなくさせる。わかったつもりで先読みし、ため息をつく日々を送るなんて、なんとも張りのない生活ではなかろうか。別に毎日「何か」が起こるスリリングな日常を送りたいわけではない。平凡を経験することが大事だと思う。今日も平凡だったなと今を捉える。その方がよっぽど楽しい人生だ。
年を重ねるって危険だ。気を抜くと嫌な大人になっていくから不思議だ。「俺は知ってるぜ」と武勇伝を語るようなおじさんにだけはなりたくない。なりたくはないのだが、油断をするとそっちに引っ張られていく。この事象について誰か説明してほしい。
最近では、「面倒くさい人」認定され脱落するおじさんが、他人事とは思えない。きっと彼らに悪気はない。経験なのか、脳の劣化なのか、孤独感からなのか。人生をわかったつもりになり、日々の新鮮さを失い、気づかぬうちに面倒くさくなってしまうのだろう。
わかったつもりはやっかいだ。経験していないことにもっと興味を持とう。私が知っていることなんて、ほんの僅かにすぎないのだ。
年齢なんて関係ない。おもしろい経験談を離せる人とのコミュニケーションを増やしたい。そして一つひとつ自分で経験をしていく。わかったつもりにならないこと。これって日々を楽しむうえで、意外と重要なことかもしれない。
今回は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のごく一部だけを切り取ったが、するりと感情に入り込む素敵な作品に思う。ウィルに向けられる様々な愛の形や、友人との関係性。繰り返し観たくなる作品としてマイリストに長く残る作品となった。