原告記(仮)#9 「ベトナムご飯ノススメ」

数年前に上京したとき、とある銀座のベトナム料理店に、考えなしに入った。
フォーに生春巻きと、白身魚を揚げて甘辛く味付けされたおかずがのったミニ丼がついたランチのセット。  
これまでベトナム料理をあまり意識したことがなかったけれど、このとき、やけに美味しいと感じて一気に興味をもった。   

その後、ネットでベトナム料理のレシピ本を購入。よくよく見てみるとその著者は、なんとその店のオーナー。
そして、月1くらいのペースでベトナム料理をうちでも挑戦するようになった。


ここ数年、よく作ってきたのが、
『ティッ・コー・チュン』
ココナッツ風味のベトナム風角煮。

ご飯にパクチーとか葉野菜と一緒に、ココナッツミルクとニュクマムの甘じょっぱい煮汁が、それこそ"やみつき"で、もう何十回となく作っている。

敬愛する料理家の有元葉子先生にも似たレシピがあって、こちらは豚肩ロース肉とゆで卵を、ナンプラーと黒胡椒(粒のまま)で煮込んだもの。
最近は、この2つを合体させたようなレシピがうちの定番。

あと、案外知らない人も多いような、生春巻きで使うライスペーパーを生ではなく揚げてみると、このサクサク感…オススメです。


ベトナム料理に必須のニュクマム(魚醤)は、そのままだと強烈だけれども、料理に使うと味が深く広がる不思議…
日本だと醤油、インドネシアのサンバルや韓国だとコチュジャンとかもそう。
その国を表代表するような調味料の数々とその料理は奥深い。


脱線ノ余談。
私は納豆がダメ、しかしパートナーは大好物。
スーパーで買物のとき、自分が肘の内側でさげている買い物かごに、彼が背後からコッソリと納豆を放り込んでくる。
"納豆禁止!"とか言いながらそれを阻止したり、それで店内で軽く追いかけっこ的な真似をしたり…いい年の2人が。
主に朝、それでも納豆食べたあとの彼には"半径2メートル以内近づくな!"とか言ったり。これが2人の、日々の納豆を巡る20年近い攻防戦。


日本だと家族の団欒、同じ食卓を囲むことが、まるで原風景のように理想としてあるけれど、でも現実は、コンビニや外食のリアルがそれを上回っていて、それがもはや日常の風景にもみえる。

以前、よく出かけたバリ島の場合、台所におかずが何品か用意してあって、家族はそれぞれのタイミングで、自分の食べたいときに食べたいものを食べる。みんなで集って食卓を囲む習慣がなかったはずだ。

ベトナムでは、朝早くからフォーの店がやっていて、朝食は外でサッと済ます人々が多いという記事を見たことがある。なるほどフォーのさっぱり感、胃腸を温める感じは朝にピッタリ。


2020年は、前半にパートナーの自宅待機があったことで、うちでのご飯が増えたり、出勤出来ても弁当持参など、我が家の食生活も変化があった。

そんな中、今年よく作ったのがフォー。
面倒な印象があったけれど、やってみたら意外に簡単でちょうどよかった。

前夜にストウブの鍋に鶏肉と水でスープをとる。あとはニュクマムにいくつか調味料で十分に美味しいスープになる。
トマトやエビなどを足して、アレンジも簡単で楽しい。

「おいしい」に差別の余地はない。
食べることはつくづく幸せで、そして食卓の風景は、過ぎてしまえばホントに短いものだから、「家族」とは何なんだろう?…ちょっとだけ寂しくも感じる。

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