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毎日note'19.11.27/"ヴィンランド・サガ"の愛

幸村誠先生の「ヴィンランド・サガ」がアニメ化されています.原作から読んでおり,前作のプラネテスから好きな作品です.

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B07TYPKRNF/ref=atv_hm_hom_1_c_DEaieV_2_2
「愛」ついて書かれるセリフはエモい.というか考えさせられる.
ざっくりあらすじ.

デンマークの第二王子クヌートは,イングランド制圧のために父であるデンマーク王から戦場へ出兵を命じられる.しかし,王の意図は戦場でクヌートを戦死させることにあった.次代のデンマーク王の派閥争いで,第一王子派と第二王子派に国が分かれることを恐れたのだった.クヌートは内向的な性格のため,王の器ではないとされており,間引かれる側である.
戦場ではロクに指揮をとれず,追われる身となったクヌートと臣下ラグナルは,戦いに参加していたヴァイキングを率いるアシェラッドとともに敗走する.アシェラッドの目的は,ひ弱なクヌートを王の器にして,自身が仕えるに相応しい王に成長させること.その目的には,育て親も同然の臣下ラグナルが邪魔であったため,クヌートに隠れてラグナルを暗殺する.

クヌート王子はラグナルの死により,自分を愛してくれる者を失った,といったとき,旅に同行していた神父は問いかける.
「ラグナル殿のあなたへの思いは愛ですか?それは愛ではないのではないですか?」
「あなたひとりのために62人の村人を見殺しにした」
※敗走のおり,アシェラッドたちは村を襲い,食料を得ていた.クヌートとラグナルは反対するも必要な物資の調達に黙認していた.
「ラグナル殿にとって王子殿下の存在は他の誰よりも大切な人だったのです」
そして,クヌートも問う「親が子を・・・夫婦が互いを・・・ラグナルが私を大切に思う気持ちは一体なんだ?」

「それは 差別 です」
「王にへつらい奴隷に鞭打つことと大して変わりはありません」

神父は戦死した遺体を指していう
「彼は死んでどんな生者よりも美しくなった.愛そのものと言っていい.彼はもはや,憎むことも殺すことも奪うこともしません.」
「死は人間を完成させるのです」

そして,クヌートは手に取った雪を見て思う
これが愛なのだと.あの空が あの太陽が 吹きゆく風が 木々が 山々が.
世界がこんなに美しいのに人間の心には愛がないのか

※上記はセリフを入れ替えたり,省略しています.


人が何かを大切だと思う心は愛ではなく,差別.この言葉はかなり刺さる.
人が人を大切に思うことは,その人以外を差別することと同義である.なるほど,そのようなものを愛と呼ばないのならば,愛とは何か.一つの回答として死を上げている.愛は死そのものであると.身もふたもないが納得できる.
人為の中に愛がないとするなら,自然化していく過程は愛を獲得する過程なのかもしれない.
モノが寂びた結果,人為を失い,詫びて,この気持ちはこの愛を感じる心なのだろうか.人が作ったものや人そのものが,自然の中で変化するとき,金属柵なら錆びて,岩石なら風化して欠けて、さざれ石に苔が蒸す.
人の面影を表現するものや古いものをエモく感じるのは,ここでいう愛を美しいと感じる感性と似ていると思う.

#毎日note #ヴィンランドサガ #アニメ #漫画 #詫 #寂

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