見出し画像

社会人ダイアログ No.3 青池隆明さん

今回は銀座でイタリアンレストランを経営されている青池隆明さん

元リクルート出身で、株式会社フェリーチェを設立。現在は銀座でイタリアンレストラン、ラ・ボッテガイアを経営されている。

青池さんは以前お話していただいた塚越さんのご紹介で、

・企業でバリバリ働いていた(もしくは働いている)

・自分のやりたいことを形にしている方

・人を勇気づけるようなコミュニケーションの取り方をしている方

・自分と同じ地方出身であること

以上のような条件を持った方として、青池さんをご紹介していただいた。

当日(2021/7/17)青池さんが経営されているお店を訪れると現在緊急事態宣言が出されているため、お店は休業中とのこと。

お店の営業ができない中でも料理の配送サービスやYouTubeでの料理レシピの発信などお店のファンを増やすための活動を精力的に行われている。現在YouTubeの登録者数は7万人で順調に伸びてきているとのこと。

今回は青池さんの生い立ち、学生時代の経験、イタリアンレストランを経営するようになった経緯など、青池さんのストリーを伺った。


生い立ち ~幼少期からリクルート時代~

青池さんは富山県の出身。父方の実家が料亭を母方の実家が農家をされていたそう。父方の料亭で働く職人さんの姿や、農家を経営されている祖父母の姿を見て漠然と職人の仕事に憧れがあったそう。

青池さんが中学生の時、家に合ったオレンジページ(料理雑誌)で見つけたイタリアンのトマトパスタを作った所、これが家族に大好評。この時の家族の喜んでくれた表情が原風景となり、イタリア料理を志すようになったそう。

高校卒業後、青池さんは料理の勉強をしにイタリアへ行きたいと考えていたが、料理を始めるのは大学に進学してからでも遅くないのではないかと言う親御さんの助言から、早稲田大学へ進学。

しかし、大学進学後は料理のことはすっかり忘れてしまっていたのだとか。就職で会社を決める際には、祖父母が料亭や農家を経営していたことから自分も将来起業をしたいと思い、リクルートに入社。会社員として3つの部署を経験された。

仕事も順調に進み、やりがいを感じていた青池さんだったが、入社6年目の時に青池さんの母親ががんを患っていることが発覚。いろいろな治療法を試すも、進行が進んでいたがんは治すことが出来ず、がんの発見から半年後に亡くなってしまったのだそう。

身近な人を失ってことで青池さんは自分が生きている意味や、自分の人生の中で何に命を賭すべきなのかを考えたという。その時、これから自分が何に時間を費やすべきなのか人生の棚卸をして出てきたのが、イタリア料理を志していた頃の想いだった。

当時の想いを思い出した青池さんは、すぐに会社を辞め、イタリアへの渡航の準備を開始。1年間という修行の期間を設け、イタリア語も料理のことも分からない状態で、単身イタリアへ乗り込んだ。

言語も料理も分からない中でいきなりイタリアに飛び込んで行くことは相当チャレンジングで厳しい道の選択にも思えるが、青池さんはイタリアでの修行の期間も充実していたとおっしゃっていた。最初は現地レストランの雑用から始め、現地のシェフが自分の仕事に対してなんで怒っているのかも分からない。初めはそんな状態だったそう。

そんな中でも青池さんが頑張れていたのは、1年間と言う期間を自分の中で決めていたこと、もう1つは、料理が自分の志した好きなことだったから。言語の壁に苦しみながらも、現地で同じように料理修行に来ていた日本人の人と意気投合し、帰国後その仲間と一緒にイタリアンレストランを開くことになった。


コロナ禍でのレストラン経営

日本に帰国後、順調に店舗を拡大し銀座で3店舗を経営していた青池さんだったが、やはり今回のコロナで大きな影響を受けたのだそう。

2020年5月に緊急事態宣言が発令されてから、青池さんのお店も営業を休止。それまでの蓄えで何とか繋ぎながら緊急事態宣言が解除されてからの売り上げが少しでも回復することに望みをかけていたが、オフィス街である銀座はリモートワークの企業が増加したことで、客足は回復せず。従業員の雇用を守るために踏ん張り続けていたが、客足が戻らない中では、固定費が支出として出ていくばかり。当時の青池さんは今後の不安ばかりが頭をよぎり、精神的にも非常に苦しい状況だったそう。このままでは会社全体として経営が立ち行かなくなってしまうと判断した青池さんは、店舗の縮小を決意。去年7月に3店舗から1店舗に縮小した。

店舗の経営が苦しい中で、お店の売り上げだけでは収益を上げれないと考えた青池さんは、テリーヌショコラの通信販売を開始。さらに、YouTubeでイタリア料理のレシピを紹介する料理チャンネルを開設するなど、店舗と言う箱にこだわらず、お客さんに価値を提供する形にシフト。この店舗にこだわらない考えが功を奏して、現在はYouTubeを通してファンも増えているそう。

コロナ禍での経営については詳細を青池さんご自身がnoteに綴られているので、こちらをご覧いただきたい。


青池さん曰く、今は風の時代で何か箱に固執してそれを所有し続けようとするのではなく、箱を持たずとも、自らが持っている知識や考えを発信していく事でそれが成果に繋がっているのだという。毎月大きな固定費を払っていた以前よりも、所有しているものが少なく、身軽で発信できる今の方が楽しく活動ができているともおっしゃっていた。

緊急事態宣言が出されてばかりの去年は非常に苦しい状況に合ったと思うが、そんな中でも今のような形で活動を上向きに出来てきたのには、青池さんのどんな考えがあったからなのだろうか?


ご自身に聞いてみると、やはり以前勤めていたリクルートで得た考え方がとても大きかったとのこと。リクルートでは、自分がどうしたいのかを常に問われる。大きな新規事業を提案する際も、小さな日常的な仕事に関しても、自分がどうしたいのか、なぜそうしたいのかを問われる。そして、上司のゴーサインが出た後は自分が中心となってすべての仕事を進めていく。そんな会社員時代に培われた考え方が今も生きているのだという。

さらに、失敗を恐れるのではなく、とりあえず物事を小さく始めてみること。小さく始めてみて失敗したらしょうがないし、いろいろ試してみる中で、どれかが当たればいいという考え方。それに加えて、青池さんがもともと持っている楽観性。

そんな土台となる考えがあった上で、試行錯誤して生まれたのが今の箱を持たずにネットや物流などのインフラを使ってお客さんに価値を提供していく形。

青池さんもご自身の経験を振り返ってリクルートで働けて本当に良かったとおっしゃっていた。仕事をする上で、whyを問い続けられたおかげでその考えが自分の土台となった。僕自身も地方出身で、自分がどの環境に身を置くのか考えながら過ごしてきたが、どんな人と一緒に働くか、働く環境は大切なのだと改めて感じた。


青池さんの意思決定

現在は一店舗のみの経営だが、コロナが流行する前には銀座で3つの店舗を経営。順調に売り上げを増やして店舗を拡大していったように思えるが、青池さんの意思決定はほとんどが成り行きなのだそう。2店舗目に関してはは、1店舗目で副料理長をしていたシェフがもっと経験と積みたいと店を辞める相談をされた際に、その人が店長を出来るようにその人のためだけに2店舗目を開店。3店舗目は、店の向かいのテナントが空きができたため、競合の店が入るよりは自分たちの店を出店した方が良いという判断で3店舗目を開店。

青池さん自身、もともと野心があったり、勝ち負けにこだわるタイプではなく、目の前に転がってきたチャンスや、人との関わりの中で意思決定をしてきたのだそう。

そもそも青池さんが経営されている株式会社”フェリーチェ”は、イタリア語で「幸せ」の意味。お店に来てくれるお客さんに幸せない時間や空間を提供したいとの思いで起業をされており、それは今も変わっていないのだとか。

イタリアでの修行を経て日本で1店舗目を開店した時も、コロナ禍で経営が苦しくなった時も一緒に店を経営する仲間や、お店に足を運んでくれるお客さんを一番に考えて大切にしてきたからこそ、その人柄に多くの人が集まってきたのではないかと思う。青池さんと話していると、経営をされている今も料理を出して喜んでくれた家族の顔が原風景にあるのかなと感じた。家族と同じように自分が提供した価値によって人が喜んでくれる顔を見るために今も活動されているのではないか。そんな風に感じた。


青池さんのこれから

現在は、YouTubeでの料理レシピの配信とテリーヌショコラの通信販売に主に力を入れられているが、近いうちにオンラインでの料理教室も計画されているのだとか。

また以前青池さんがnoteで発信した記事が拡散され、マンションの理事長からの依頼で、今年1月からマンション内の住人専用のレストランをオープンされたのだそう。YouTubeにしてもnoteにしても、直接顔を知らない人に自分の活動を発信し続けたことで、自分にファンがついたり、新たな仕事が舞い込んだり、自分の活動を発信していく事で自分の思いもよらない縁が生まれていく。

青池さんに今後の展望を伺ってみたところ、今後も店舗を持った形での経営にこだわらずYouTubeやnoteなどで料理や自分自身の経験を発信していきたいとのこと。これまで青池さんがされてきたように、周りにいる人や応援してくれる人、人との縁を大切にしながら、発信と言う形でファンを増やして、目の前の流れに一生懸命にこれからも進んでいかれるんだろうなと感じた。

青池さんとお会いして感じたこと

青池さんは、とても自然体で自分の横にスッと入ってお話をして下さるような方だった。オープンな雰囲気で「何でも聞いていいよ」と自分に対して言葉をかけてくれて、良い意味であまり緊張せずにお話させて頂いた。

話の途中ではお互いに高校野球を経験していたことが分かり、しばらく本題から脱線してプロ野球やメジャーリーグの話をさせてもらって、とても楽しかった。

これはうまく表現するのが難しいのだが、何となく青池さんはとても中立な視点から物事を見ている人なのだと感じた。初めて会った自分に対しても、これまでのご自身の経験に対しても、良い悪いとか、この人はたぶんこういうタイプだとか、何かに対して自分の中であまり評価を持たず、中立な視点から物事を見ている。だから話していてそのままの自分を見てもらえているような安心感がある。そんな青池さんの自然体な姿がたくさんの人を引き付けているのではないかと感じた。

今回自分と同じ地方から関東に出て、自分の好きなものを形にされている方として青池さんとお話させて頂いた。こうやって文章を書いているとあんなことも聞いてみたかったとか、この時はどんなことを感じていたのだろうとか聞いてみたいことがたくさん出てきてしまったが、青池さんがこれまでもされてきたように自分も社会人になる中で、新しい環境で会った人やそこで生まれたご縁を大切にしていきたいと思った。

今は緊急事態宣言でお店は営業されていないとのことだったが、イタリアには漠然と憧れを持っていたので、自分が社会人になった時にはいつか青池さんのお店で青池さんおすすめのワインや料理を食べてまたぜひお話させてもらいたい。

青池さん、お忙しい中お話させていただく時間を頂き本当にありがとうございました!


青池さんが経営されている株式会社フェリーチェのホームページはこちら↓↓↓





いいなと思ったら応援しよう!