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日曜日にタクシーでブリオン墓地へ向かう方法

 カルロ・スカルパの名作であるブリオン墓地へは、Castelfranco Veneto駅からバスで向かうのが一般的だ。同じバスでさらに40分ほど乗れば、同じくスカルパ設計のカノーヴァ彫塑館へも行くことができる。
 しかしながらこのバスは日曜日は終日運転しておらず、そのため別の交通手段を探さなければならない。旅程上この日以外は無理だったので、いざとなったら2時間半歩く覚悟を決めつつ、今回はタクシーを利用することにした。

 結論から言うと、Castelfranco Venetoの駅前にはタクシープールがあり、ブリオン墓地にはFAI(Fondo Ambiente Italiano、イタリアのナショナルトラスト)のスタッフが数人いるので、行きは普通に駅でタクシーを拾い、電話番号の書かれた名刺をもらったうえで、帰りは墓地のスタッフにタクシーを呼んでもらえばなんとかなりそうである。料金は2024年9月時点で片道38ユーロだった。

 とはいえタクシーは英語が通じない可能性もあるし、墓地にスタッフがどれほどいるのか事前にわからなかったので、まず観光案内所に向かい、そこで往復のタクシーを手配してもらうことにした。ちなみにFREENOWなどの配車アプリも試してみたが、多分田舎すぎて使えない。

Castello di Castelfranco Veneto

 カステルフランコ・ヴェネト自体もちょっとした観光地で、市の中心部には中世の城壁と塔がよく遺っている。このすぐ近くにあるのがUfficio IAT Castelfranco Venetoという観光案内所で、駅からは徒歩12分ほどで着く。

 案内所の中には若いスタッフが数人いた。英語はペラペラだったので(こちらの英語力を措けば)特に意思疎通には問題ないだろう。ブリオン墓地へ行きたいという人はよくいるらしく、軽く説明したらすぐに理解してもらえた。

 しばらく待つと脇の駐車場にタクシーがやってきた。運転手の男性もまた英語が堪能で(おそらくそのような人を手配してくれたのだろう)、道中何の問題もなく運んでくれた。墓地に着くと電話番号の書かれた名刺を渡され、墓地のスタッフに事情を説明してくれた。

ブリオン墓地

 墓地には常に数人のスタッフが待機しており、無料で自由に入ることができる。10時半に着いた時はほかに数組しかいなかったが、ガイド付きツアーの時間帯になると非常に混雑していた。子供が縦横無尽に駆け回る様子も面白かったが、田園に囲まれた静謐な環境で、近くの教会の鐘の音が響くサウンドスケープも美しいので、やはりなるべく人の少ない時間に訪れることをお勧めしたい。

 2時間ほど滞在した後、墓地のスタッフに名刺を渡して帰りのタクシーを手配してもらった。名刺に書かれた番号はおそらく会社ではなく運転手個人宛のものだったが、手が空いていなかったらしく別の人を向かわせてくれた。
 今度はあまり英語が得意な人ではなかったので、ここぞとばかりに第二外国語で学んだなけなしのイタリア語を使ったけれど、おそらく駅に向かいたいということぐらいは英語でも伝わるだろう。彼はイタリア人らしい地元愛にあふれた陽気な人でいろいろと話をした。ブリオン墓地のこともよく知っていて、誇らしそうにしていたのが印象的だった。巨大で壮麗なこの建築は貴族趣味的と批判されたこともあったとどこかで読んだ記憶があるが、決して一部の特権階級のためだけのものではないことは明らかだろう。

Torre Civica

 帰りの電車まで時間があったので、Castelfranco Veneto市街も少し観光してみた。観光地とはいってもあくまで一地方都市で、路駐された大量の車などにイタリアの平凡な日常を感じられて面白い。バスが無いことに直前になって気づいた時はどうなるかと思ったが、振り返ってみればそのおかげで地元の人と話すことができた。カノーヴァ彫塑館に行けなかったのは心残りだけれど。

駅へ向かう道中にあったコミック書店


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