シェア
「良いですよ、僕は。……ですが残念ですね、昔から見てきた貴女がこんなふしだらな女性になっ…
もうすでに日付が変わっていた。いつもなら、すでに寝ているであろう時間だ。 私は申し訳…
ルカ王子に抱きしめられてひとしきり泣いた私は、ルカ王子を見送った後、厨房へと向かった。…
シグルドに思われているどこかの馬鹿について考えていると、時間は驚くほど早く過ぎていった…
眠りに着くと、初めてこの世界に来た日の夜と同じことが起こった。 〈姫香、姫香……〉 …
「こちらです」 そう言ってシグルドが立ち止ったのは、廊下の端っこ――角部屋の前だった。…
「なっ……!」 艶のある言い方と言葉にうろたえて、顔に熱が集中した。しかし、まったくそんないかがわしい覚えはない。 私は王子様の顔を見ようと横を向く。すると、思っていたよりもずっと近くに王子様のきれいな顔があって、透明感のある瞳をいたずらに細めていた。その顔は記憶の中の誰かとダブる。 そしてすぐに、思い当たる人物を記憶の引き出しから発見した。結構最近の出来事だったから、探し当てるのは非常に容易だった。 ――安らぎ草をくれた怪しい兵士。 あの時は夜だったこともあ
「ヒメカ様のようになりたかったからです」 「えっ?」 想像していなかった展開に、驚きの…
そこに立っていたのは王子様だけではなかった。いや、この表現は適切じゃなくて、立っていた…
三日後。 足の怪我はだいぶ良くなっていた。腫れは引き、普通にしていれば痛みも感じない…
お城の医務室で怪我の手当てを受けた後、自室に戻りドレスに着替えた。 魔法使いさんにお…
薬品の匂いが充満した部屋には誰もいなかった。 「お医者さんは……?」 「あぁ、そう言え…
日が高くなるころにはお城が見えてきた。行きは半日かかったというのに……。馬だと、悔しい…
ゆら、ゆら、ゆら、と心地よく揺れる感覚。夢なのか現実なのか、はっきりしない。 重いまぶたを開くと目の端で動く茶色のなにか。なんだろう、と手を伸ばしたら、短くてやわらかい毛だった。それになんだか温かい。 不規則な動きを感じ取って、ようやくそれが生き物なのだと理解できた。 「気がつきましたか?」 突如として降ってきた声にびっくりして、振り向こうとすると、 「わ、わ、わ……」 バランスを崩してひっくり返りそうになる。 「……っと、暴れないで下さい。落ちますよ」