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紀藤正樹弁護士と、監禁教唆の宮村峻氏との関係を示唆する資料5点
本記事では、タイトルの通り、紀藤正樹弁護士と、監禁教唆をしたとされる宮村峻氏との関係を示唆する資料を5点紹介したい。なお、資料内の太文字、赤線、マーカーは全て筆者TKMTによるものである。
本題に入る前に、宮村峻氏が関与した事件について簡潔に説明しておく。
1995年9月から2008年2月にかけて、統一教会信者の後藤徹さんが脱会説得のために家族らによって、逮捕(拉致)されマンションの一室に監禁される事件があった。この12年5ヶ月に及ぶ監禁は、後藤徹さんが原告となった民事訴訟において最高裁で事実として認定されている。裁判の結果は、被告となった家族、宮村峻氏らの全面的な敗訴であった。宮村峻氏は、この裁判で、一連の監禁行為等を教唆したとして、損害賠償金の支払いが命じられている。裁判の資料は、以下のサイトから閲覧することが可能である。
その他にも、「国境なき人権」のレポートや、米本和広『我らの不快な隣人』をはじめとする数々の資料において、宮村峻氏による暴力的な「脱会カウンセリング」が報告されている。信者、元信者である被害者の中にはいまもPTSD等に苦しんでいる人達がいる。
日本における新宗教信者に対する逮捕監禁が伴う脱会説得については、1999年から2022年の23年のあいだに、毎年発行される米国務省「信仰の自由に関する国際報告書」で16度もその実態が言及され、2014年には国連・自由権規約人権委員会が日本政府に懸念を表明するに至っている。その背景要因の一つに、宮村峻氏らの事件があったことは明白である。
本稿では、紀藤正樹氏と、このような非情な犯罪的行為を教唆した宮村峻氏との関係を示唆する文献、裁判での証言を提示したい。
1.宮村峻氏を絶賛している紀藤正樹『決定版 マインドコントロール』第4章
紀藤正樹氏は、2017年出版の『決定版 マインド・コントロール』(アスコム)で、飯星景子さんが統一教会を脱会する際に、脱会説得を担当した、ある脱会カウンセラーのことを「日本にはこの人をおいて他にいないという人」と絶賛している。飯星さんの父親である飯干晃一さんは、このカウンセラーに「頭を下げて」、脱会説得を頼んだという。このカウンセラーなる人物が、宮村峻氏であることはほぼ間違いない。
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というのは、『週刊文春』元記者で、『文藝春秋』等の編集長も歴任した松井清人氏の著書(『異端者たちが時代をつくる』(プレジデント社))で、飯星景子さんの脱会騒動の顛末が書かれており、そこに「脱会カウンセラー」として登場するのが宮村峻氏だからだ。飯干晃一さんが改心して「頭を下げて」、脱会説得を頼んだというエピソードもぴったり符合する。
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紀藤氏は、2015年に信者12年監禁事件裁判の決着がついてからも、認識を改めることなく、監禁を教唆したとされる宮村峻氏を「脱会カウンセラー」として「日本にはこの人をおいて他にいないという人」と評したことになる。
2.宮村峻氏らの編著を挙げている紀藤正樹『決定版 マインドコントロール』の推薦図書リスト
上述した紀藤正樹『決定版 マインドコントロール』の巻末には、推薦図書リストが掲載されている。その中には、マインドコントロール研究所編『親は何を知るべきか』(いのちのことば社)が挙げられている。
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本書のタイトルにもなっている、第8章の「親は何を知るべきか」の執筆者が宮村峻氏である。内容は、信者家族に対して、「失敗は許されない」とし、脱会説得の専門家に頼るしかないと不安を煽るようないわゆる脱会屋の「営業文」に近いものになっている。さらには、信者12年監禁事件のもう一人の教唆者である松永堡智牧師が本書の冒頭に「推薦のことば」を書いている。
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暴力的な「脱会カウンセリング」に関与してきた宮村氏と松永牧師が、執筆に名を連ねた公刊物は本書の他にないはずだ。その内容が、まさに「脱会カウンセリング」に関わるものであるから深刻である。紀藤氏は、信者12年監禁という大事件の加害者側の人物2人が執筆陣に加わっている、このような文献をわざわざ選び、推薦しているということになる。
ちなみに、「推薦のことば」を含めて本書の執筆者には、他にも、有田芳生氏、郷路征記氏、多田文明氏の妹(大倉富貴子さん)、西田公昭氏らがいる。
3.小出浩久医師による証言
統一教会の現役信者の小出浩久医師は、1992年6月から1994年4月までの期間に監禁脱会説得を受けた。小出さんは著書において、再度の監禁を恐れたために、争いたくもないのに、踏み絵のように統一教会と監禁前に勤めていた統一教会系の病院に対して調停を起こさざるを得なかったと述べている。その時に、宮村峻氏に紹介されたのが紀藤正樹弁護士と山口広弁護士であった。
一心病院や統一教会と「裁判」によって一戦交えなければ、事の決着は着かないと思っているらしかった。もちろん、私には弁護士を依頼したいという意思も、裁判をしたいという気持ちもなかったし、ましてや弁護士に頼む理由などは何もなかったが……。
十月二十三日(土)、宮村氏の依頼で、山口広弁護士と紀藤正樹弁護士が、東京から新潟までやってきた。
(中略)
改宗請負人といわれる宮村氏と被害弁連の弁護士とはかなり親密なようすだった。
(中略)
私としては統一教会と一心病院と縁を切りたいと全く思っていなかったが、その意見に同意したふりをしなければならなかった。両親のいるところで言われたとおり、弁護士の委任状に署名し、捺印した。
小出さんが親の目を逃れて、統一教会に戻った際に、この2人に対して弁護士解任通知を送ったそうだ。この弁護士解任までの書類は、小出医師の手元にあるはずなので、証拠は揃っているだろう。
さらに小出さんによれば、紀藤氏らは小出さんがどのような状況下で生活をしていのかを把握していたという。
山口、紀藤の両弁護士は、こういう打ち合わせの時点で、私が両親の監視下で生活をしているのをよく知っていた。また、宮村氏の役割も十分にわきまえていたようだ。
両弁護士は、毎回「もう、そろそろ自由に行動させてあげても大丈夫じゃないかな。まあ、そのあたりのことは宮村さんに聞いたほうがいいけどね」と言い、宮村氏は決まって「あいつら(統一教会)は何するか、おれも分からないからな。向こうがつかまえにくることがまだないとは言えない」と返答していた。
紀藤氏は、X(旧ツイッター)において、統一教会問題で「ご本人の希望を聞きながら弁護活動をするのは当然のことです」と述べているが、小出さんの希望を正しく聞けていたのだろうか。仮に正しく聞けていたとして、なぜ小出さんは紀藤氏らに弁護士解任通知を送ったのだろうか。
私も、統一教会問題で過去一度も、被害者に裁判を勧めたことがありません。ご本人の希望を聞きながら弁護活動をするのは当然のことです。現に統一教会被害対策弁護団も最初は裁判外での交渉、その後の調停においても話し合いでの早期解決を求めています。これを拒否しているのは、統一教会です> https://t.co/lJIf2edagg
— 紀藤正樹 MasakiKito (@masaki_kito) October 3, 2023
以上のことから、紀藤氏が、弁護士登録をして間もない90年代前半から、宮村峻氏から「元信者」らを紹介されていたことがわかる。その中には、自らの意に反して、統一教会や関連組織に対して調停を提起せざるを得なくなった小出さんもいた。
4.宮村峻氏に紀藤氏を紹介されたという裁判での証言
宮村峻氏が被告となった統一教会信者12年監禁事件の裁判では、原告の後藤徹さん以外にも、監禁脱会説得経験者が陳述をしている。そのうちの一人であるMKさんは、宮村峻氏の知り合いである紀藤氏に訴訟代理人を委任することにしたと証言している。以下の引用は、その陳述書からの抜粋である。
(2)婚姻無効裁判の提起
ある時,宮村が部屋に来て私に対し,「祝福どうする?」と聞いてきました。既に入籍した韓国人の夫との関係をどう処理するかということでした。宮村が,離婚と婚姻無効裁判を提起する方法との2つの選択肢があると言うので,私は「離婚します」とだけ答えました。離婚の方が手続が簡単だと思ったからです。ところが,スタッフがやってきて,「本当にそれでいいの?もう少し考えた方がいい」と言われ続けました。このため私は,婚姻無効裁判を起こさない限り,リハビリ生活からは解放されないのだと気付きました。そこで私は意に反して婚姻無効裁判を提起することに同意しました。裁判は,宮村の知り合いの紀藤正樹弁護士に委任することとなりました。紀藤弁護士と会うときは,両親の付き添いで紀尾井町にある紀藤弁護士の事務所に行きました。
監禁脱会説得によって、合同結婚式による婚姻を破壊した側が、反対に、統一教会に対して婚姻の自由を侵害しているとして婚姻無効裁判を提起するようにけしかける奇天烈な状況となっている。陳述によれば、MKさんは、婚姻無効裁判の判決が出てやっと監禁場所から解放されたという。
宮村氏らによる様々な圧迫を受けながら、提起したMKさんの婚姻無効裁判で訴訟代理人を務めたのは紀藤氏である。紀藤氏は、宮村氏のやってきたことをどれほど認識していただろうか。
5.全国弁連に所属していた伊藤芳朗弁護士による内部告発的証言
上述の信者12年監禁事件裁判では、当時、全国霊感商法対策弁護士連絡会(略称、全国弁連)に所属していた伊藤芳朗弁護士が、内部告発的な証言をしている。陳述書は、伊藤氏が、ジャーナリストの米本和広氏からインタビューを受けるという形式で書かれている。
宮村氏は緊密な関係にあった紀藤正樹弁護士(被告代理人山口貴士弁護士が所属するリンク法律事務所所長)を紹介していました。
例えば、現役の統一教会信者を車のバンで後ろから尾行し、スキを見て捕まえて、無理矢理車に連れ込んで、そのまま事前に用意したマンション等の一室に連行して監禁し、信仰を失うまで外に出さない、という方法です。
これは、法的には明らかに逮捕監禁罪にあたる違法行為です。
拉致し監禁するバリュエーションはそれぞれですが、拉致され、マンションに監禁され、脱会するまで解放されないという点で、元信者の話はいずれも同じでした。
しかも、こういう逮捕監禁をするときには、宮村氏や、宮村氏の意を酌んだ元信者の家族(子どもの脱会に成功した親たち)が現役信者の親族らに事細かく指示してやらせるけれども、宮村氏は直接には関わらないようにしていました。
筆者は、この証言の内容は、全国弁連の内輪もめの側面もあると考え、当初は中身を差し引いて読んでいた。だが、これまでに述べた4点の情報等から、幾分、真実味のある内容だと判断するようになった。その詳細については、以下のリンクから確認してほしい。紀藤正樹氏といわゆる脱会屋の宮村峻氏との蜜月の関係が赤裸々に告発されている。
まとめ
これまでに紹介した資料5点から、紀藤正樹氏と、監禁を教唆した「脱会屋」の宮村峻氏が持ちつ持たれつの関係であったことがうかがわれるだろう。紀藤氏は、90年代前半から宮村氏と懇意にし続け、2017年に出版した書籍でも(名前は明示していないものの)「脱会カウンセラー」としての宮村氏を絶賛している。
ここで思い出すのは、主の羊クリスチャン教会の中川晴久牧師が、度々述べている「『半分の真実』は『半分は偽り』である」という言葉だ(元々は、神学者ハンス・キュングの言葉らしい)。「カルト対反カルト」という対立構図の中で、いくら「カルト」視される側に問題があったとしても、それを批判する反カルト側が常に正しいことを行っているとは限らない。
そろそろ「半分の真実」の裏側にある「半分の偽り」、「半分の偽り」の裏側にある「半分の真実」に目を向けてもいい頃ではないだろうか。偽りに満ちたように見えていた『我らの不快な隣人』にも、もう「半分の真実」があるはずなのだから。
書籍紹介文
カルトと反カルトの間で何が起きているのか? 統一教会信者に対する拉致監禁の実態を暴く
診断名はPTSD(心的外傷後ストレス障害)。飲んでいる薬は導眠剤、睡眠薬、安定剤、抗鬱剤など一〇種類に及ぶ。彼女たちの共通点は三つある。かつて統一教会の信者であったこと、信者時代に「ある日突然、実の親に拉致され、アパートやマンションに監禁されていた」こと、そして、その監禁場所で統一教会からの脱会説得を受け、最後には脱会したことである。(本文より)
これまでカルト視される宗教団体を批判してきた著者だが、一方で“反カルト陣営”側の問題点に気づく。忘れられがちな元・信者のその後を取材すると、そこには脱会をめぐる、知られざる攻防戦があった……。カルトにまつわる問題の根深さを描いた衝撃のノンフィクション。