俺のCD棚 第31回
今回は、JJJ「HIKARI」。
JJJは、東京のラッパーであり、kid FresinoとFebb as young masonの3人で組んだユニット「FA$HBACKS」のリーダー的存在。どちらかというと、楽曲提供やプロデュース等、裏方のイメージが強い彼だが、ソロワークでもしっかりと2枚のフルアルバムをリリースしている。
このCDは、そんな彼が2017年にリリースした2枚目のアルバムで、ASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマン、後藤正文が2018年に立ち上げた新進気鋭のミュージシャンが発表したアルバムに贈られる作品賞「APPLE VINEGAR -Music Award- 」の栄えある第1回の受賞作である。
このCDとの出会い
全ては、STUTSのアルバム「Pushi'n」から始まった。
それまであまり聴いてこなかった邦楽HIPHOPの、いいところだけを絶妙に抽出したような楽曲の数々を聴く内に、客演のラッパー達の作品が気になりだし、加速度的にディグるようになった。
このアルバムも、そうした数珠繋ぎの先で出会った一枚である。
楽曲について
前半はギターの鳴りがとにかくインパクト大で、HIPHOPのトラックというよりは、ロックっぽい雰囲気さえ漂っている。
一方、後半はピアノの旋律が効果的に使われており、曲のムードによって楽器を使い分ける、というHIPHOP的ではない、実験的な要素を随所に感じられる。
とは言え、あくまでも1フレーズをループする、という展開は全曲一貫しており、元々は楽器を持っていなかった若者が親のレコードを駆使して編み出した、古き良きHIPHOPの文脈の上で成立していると思わされるから不思議なものだ。
…と、小難しい説明を長々としてしまったが、簡単に言うと、これを聴いとけば間違いないってことです。
因みに、そんな難解とも言えるトラックに乗せるラップは決して奇抜な印象を与える事無く、自身のスキルもさることながら客演勢も見事に乗りこなしているため、実はとても聴きやすい。
晩酌のお供に、日常のBGMに、あえてサラッと聞いてみるのがおススメ。
一曲挙げるなら
12曲目「MIDNIGHT BLUE」が最高。
何はともあれ、客演ラッパーの仙人掌がとてつもなくいいアジを出してくれていて、曲名通り夜中にゆったりと聴きたい、都会的なムードを持ったメロウな名曲。
極めて個人的な意見だが、この曲に限らず、仙人掌は客演の楽曲全てで爪痕を残していく稀有なラッパーである。※むしろ、客演でのパフォーマンスにこそ真価が発揮されてるんじゃないだろうか。
ジャケットについて
街中で写された自身のポートレイトがレイアウトされた、極々シンプルな紙ジャケ。光の入り方やJJJの表情が何とも言えないクールな感じ。
決して多作な方ではないが、この一枚に彼の魅力が全て詰まっていて、いつまでも色褪せない名盤であることは間違いないだろう。
以上、第31回でした。
次回は、言わずと知れたJJJの盟友、Kid Fresinoのアルバムを紹介します。
それでは、また。