俺のCD棚 第36回
今回は、Kanye West 「GRADUATION」
Kanye Westは、元々はJAY-Zのインハウス・プロデューサーとして音楽キャリアをスタートさせた異色のラッパーだが、今ではその言動ひとつで世間を混乱させるほどの影響力を持つようになった人物。
このCDは彼の3枚目のアルバムにあたり、50CENTと同日のリリースを発表した後、焚きつけられた50CENTが引退(?)を賭けてセールスを競ったのがこのアルバムなのである。
※結果は、Kanye Westの圧勝。
このCDとの出会い
デビュー当時からKanye Westの人気は凄まじく、最早聴いてない音楽好きはいないんじゃないかってくらいで、新曲が出るたびにFM802でも必ずかかる状態だった。
今思い返せば、US-HIPHOPに対する日本に於ける扱いとしては、異例の歓迎ぶりだったように思う。
そんな最中にリリースされた当時、作品自体も話題となったが、ジャケットを村上隆(今や押しも押される現代芸術科)が手掛ける、というニュースがセンセーショナルで、村上作品を一番安価に手にできるチャンスだと思って購入したような…浅はかやな。
楽曲について
魅力的なトラックやサンプリングネタを駆使するあたりは、いわゆるHIOHOP然としながらも、原曲が判別できる程度の加工に抑えることで、前作よりも格段にPOPに変換された楽曲が並んでいる印象を受ける。
例を挙げるならば、3曲目「Stronger」が顕著だろう。
あのDAFT PUNKの楽曲「Harder Better Faster 」がサンプリングに使われている事が明白であるが故に、原曲を知っている人ならばイントロを聴いただけでニヤニヤしてしまうだろうし、そうでない人にとっては、原曲を知るキッカケとなり得る程よいミックス加減で、とても聴きやすい。
こういった作風が、日本でも受け入れられた要因の一つと言えるだろう。
また、ラップに関して言及するならば、HIPHOPにありがちなハングリーな精神性を全く感じない、という点にある。
これに関しては、彼自身が「特別な境遇」を持ちあわせた「ギャングスタ」ではないところに起因しており、頻出しがちなNGワードもかなり少ないとあって、HIPHOPの攻撃的な側面に苦手意識を持っていた人からすれば、単純に楽曲自体を楽しめる、数少ないアーティストだったのではないだろうか。
※今では政治的発言が多くなったので、メディアにとってはちょっと扱いにくくなってしまったのだろうけど…。
一曲挙げるなら
15曲目「Bittersweet Poetry」
この曲は、日本語版にのみ収録されたボーナストラックで、元ネタのセレクトも秀逸ながらその良さを殺さないアレンジは見事という他ない。
元々は2作目のアルバム以前にリリースされたものの、収録されなかった不遇の曲だが、アルバムのトーンにそぐわないという理由で未収録となるにはあまりにも勿体ない名曲である。
※ちなみに、あのJohn Mayerとのコレボレーション曲でもあるのだが、そんな情報を知らなくても大丈夫、聴けば最高ってわかるから。
ジャケットについて
前述した通り、村上隆がアートワークを手掛けているとあって、POPさと毒っ気が程よくミックスされた、グッドデザイン。
あの熊がこんなに可愛く生まれ変わるとは!
(元は着ぐるみやったのに!)
それにしても、紙ジャケの風合いは堪らないものがある。しかもダブルスリーブ仕様で見開き部分もきっちりデザインされている抜かりのなさ。
完璧である。
以上、第36回でした。
次回は、みんな大好きPOPスター、Pharrell Williamのキャリアの中から1枚、紹介していく予定です。
それでは、また。