関与を深めるデザイナーの目標とキャリア設計
デザインチームのマネジメントをこれまで何度か経験してきました。自分自身の未熟さもあって何度も壁にぶつかり、これまでもたくさんの方に迷惑をかけてしまったな…、と振り返っています。現在は株式会社 Da Vinci Studio でデザインチームでマネジメントの役割を担ったり、デザインチームのマネジメント支援を通して日々学びを得ています。今回は現在取り組んでいるデザインチームの目標、デザイナーの目標そして目標設定について書いてみます。
大切なのはチームの目標
大切だと考えているのは、チームの明確な目標です。チームの目標は組織の目標達成につながっていなければならないので、組織全体や他のチームとも合意形成を行います。組織の中でデザインチームが存在する意義 (Mission) を明確にして組織と合意がとれていなければ、メンバーがおもいきって活躍できないからです。チームの目標はマネジメントの役割を持っている自分自身の目標でもあります。なのでチームメンバーにも「ともに目指せるゴールなのか」といった視点でレビューしてもらっています。
私は自分自身がキャップ (上限) になるチームを作っても意味がないし、マネジメントも役割のひとつでしかないと考えています。メンバーそれぞれの強みは私自身が持っていないものばかりです。その強みを活かして活躍してほしいので、私は目標をとても大切にしています。
デザイナーの目標とは
目標とは Tobe (こうありたい) と Asis (現状) の差分 (解決すべきこと) を明確にするためのものです。私はデザイナーの目標はどう役割を広げたり、深めたりするか (組織やチーム、プロジェクトに対しどう関与を深めるか) を設計するものだと考えています。なので私のチームでは、メンバーの目標に「プロジェクトの完了・成功」といった特定のプロジェクトの結果に特化した内容はありません。たとえばプロジェクトが中止になったりすると目標自体を喪失してしまうからです。
私を含めメンバーの目標には、組織やチーム、プロジェクトに対しどのように関与を深めるのかを次のような軸で整理しています。
Tobe、こうありたい、あるべき姿 (目的、ゴール)
Tobe と Asis の差分、解決すべきこと (課題)
課題を解決するために作る状態、そのために取り組むこと (目標)
私を含めメンバーは、解像度はまちまちながら、組織やチームといった枠組みにとらわれない自分自身の Will を持っています。なのでメンバーとは目標設定を通してメンバー個々の Will の実現 (または明確化) と、チームの目標を達成できるように役割の合意形成ができる状態を目指しています。
目標設定は役割の合意形成
チームの目標を明確にしたうえでメンバーと合意形成する役割は大きく2 点あります。それぞれ期待と合意のやりとりです。
組織やチーム、プロジェクトにどう関与するかの期待と合意
支援 (サインアップ、情報共有、権限移譲、介入、サポートなど) の期待と合意
私からは、チームの目標とメンバーの Will、Can、Must をふまえて組織やチーム、プロジェクトへの関与の期待を伝えます。メンバーからもどのように関与を深めたいか、そのためにどんな支援の期待があるかを伝えてもらい、対話を通して合意形成を目指します。
たとえばプロジェクトにメンバーをサインアップをするとき、メンバーの目標を確認しながらその目標の達成につながるように、クライアントやプロジェクトチームでの期待値を揃えるコミュニケーションをとっています。メンバーが自分自身で期待値をコントロールする事例も出てきました。とても頼もしいです。
メンバーとの 1on1 は、メンバーが自分の目標達成に向けた行動を促進する関わりのほか、この合意の状態を確認する時間としても活用しています。期待と合意のやりとりがうまくいっていないと「モヤリ」が発生してしまいます。気付かず放置してしまうと、うまくいかなくなってしまうので合意の状態 (主に不足) を確認するのをとても大切にしています。
関与を深めるデザイナーのキャリア設計
メンバーが組織やチーム、プロジェクトへの関与をどう深めるかは、キャリア設計シート参考にして個々人で設計できるようにしています (もちろん設計の支援もしています)。
私はチームでの活動を通して、メンバーが自分の Will を明確にできるといいな、と考えています。チームのスキルバランスも確認しながら、メンバーそれぞれがどんな技術スキルやソフトスキルを高めたいのか設計しやすい環境を目指しています。
関与の深め方にはいくつかの軸を用意しています。たとえば「状況対応型リーダーシップモデル」のような軸では、指示をもらってタスクを完了させるところから、支援を受けつつ自分自身で意思決定する。自分だけでは実現できない大きなゴールを描いて、必要なメンバーに支援を求める (リーダシップの発生)。プロダクト、チームのオーナーシップをもつといった段階を設けています。ほかにもデザイナーにはおなじみ?の「UX デザインにおける 5 段階モデル (デザインの高度)」を参考にした軸、デザイン (技術) スキル、ソフトスキルといった軸を組み合わせて設計できるようにしています。
どんな変化が起きているか
実際に 1 年半の間に多くのメンバーが目標設定を重ねて自身の Will を明確にできたと感じます。現在の仕組みでの目標設定をはじめたころは言語化するのもやっとだったのに、直近の目標設定では具体的な行動まで捉えられるようになってきていると感じます。私もメンバーから示される目標を見てとても刺激を受けているし、チームの目標に対してのフィードバックも具体的になりました。メンバー同士でもお互いの目標理解と支援の実績も、振り返りの場でよく聞くようになり、チームの強さを感じる機会が増えています。
クライアントからメンバーの指名があったり、社内でもデザイナーの発言が目立つようになり期待値も高まっていると感じます。ビジネスにデザインが大切なんてポジショントークをするのではなく、実績で示していきたいです。よい状態を作って継続するためには、状況の観察と継続的な変化が必要なので今後も仕組みの改善を続けます。
現在の仕組みでの評価についても、また機会を作って書いてみようと思います。
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