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子どもたちのために、大人は対立をやめるしかない。

さて、衆議院選挙が近いので、それに絡んだお話をしたいと思います。
ここで興味を失った方、
是非、騙されたと思って、もう少しお付き合いください。

きっと「興味深い」話になると思います。

総理大臣になりたてのホヤホヤだった岸田文雄さんが、
自民党の総裁選のときに言っていた言葉は、
「新自由主義からの脱却」でした。

新自由主義というのは、なんでも市場競争の原理にさらして
勝敗を争う考え方。勝者が全てを持っていく考え方です。
人と分配するなんて、とんでもない。
勝ったものだけが生き残るのだ、という考え方です。

ここ30年あまりの人類は、新自由主義の横暴な振る舞いによって
大きな分断と地球環境の破壊を生んでしまいました。

それが、今です。
ここまでの認識に、同意できるでしょうか?

だから、岸田さんは、もうそういうやり方は変えよう、と言ったわけです。
なるほど。そうなのね。

で、彼は新自由主義をやめて、何にすればいいと言ったか。
それが「新しい資本主義」という言葉でした。

ん? なんじゃそりゃ。わかるようなわからないような・・・

新自由主義というのは、資本主義の特徴のある部分を
ものすごく異常発達させたものだと考えればいいでしょう。
それは「競争」と「対立」です。

で、あまりにも「競争」と「対立」がいきすぎたので、
別のやり方に変えよう、という提案ですね。
それが岸田氏の言葉を借りれば「新しい資本主義」なわけですが、
これは、もう国際社会の中ではちゃんと名前が決まっています。

「ステークホルダー資本主義」といいます。

どういうことか?
まぁ、ググって貰えばすぐ出てきますが、簡単に説明します。

今までの資本主義は「株主第一主義」だったよね?
これが「短期利益のみの追求」につながって、「競争」と「対立」を生み、
結果として地球環境も破壊している。

だから「株主第一主義」を終わらせて、
すべてのステークホルダーが
みんな幸せになる資本主義に変えようね、ということです。

重要なのは「すべてのステークホルダーって誰?」ってことです。
これは株主はもちろん、顧客、社員、社会、地球環境、ぜんぶです。
そういう資本主義のことです。

今までの資本主義が「株主第一」だった。
それを株主だけでなく、みんなで分配するということになる。
となると、限られた財をいちばん手放さなければいけないのは、
当然「株主」とか「資本家」「経営層」と呼ばれる人々です。

その辺りの人が、独り占めするのはもうダメだよ、ということです。

このように「ステークホルダー資本主義」は
「株主第一を終わらせて・・・」という上の句のワンセットのものなので、
普通に考えると投資家や経営層の気分を害しやすい。

日本で言えば、経団連などの組織にとって、
いちばん「嫌だなぁ」と思う類の内容なので、
おそらく岸田氏ははっきりとその言葉を言わず、
「新しい」というあやふやな言い方をすることになったのだと思います。
(経団連も、スケークホルダー資本主義には同意しているはずですけどね)

さて、私は最近よく「気候正義」の話をしています。
とくに「世代間の気候正義」ですね。

これは、年配の人ほど経済の恩恵を受け、
CO2を大量に排出してきたのに対し、
若者、あるいはこれから生まれてくる世代ほど、
自分でCO2を出していないのに、上の世代の出したCO2の犠牲となって、
これから厳しい気候条件の中で生きていくという不正義のことを言います。

よく赤字国債のことを孫子に負担を押し付ける、なんて言いますが、
気候危機の方がよっぽど酷い孫子への押し付けです。
しかも赤字国債は実際は借金ではないので、
本当は負債は何も残りませんが、
気候危機は確実に彼らの世代が背負うことになる命に関わる問題です。

今を生きる「大人世代」である我々が本当にやらなければならないことは、
一体なんでしょうか?

先ほどの「ステークホルダー資本主義」で例えていうなら、
この資本主義は「全方位への融和の資本主義」ということです。

今までの「競争」と「対立」、その結果の「分断」を生む資本主義とは
正反対の考え方に則ったものだということですね。

今まで対立関係にあった労使や、開発と環境が、
融和していかなければいけないということです。

対立しているのって、誰ですか?
大人ですね。我々、大人たちです。

いま、我々、大人たちは、子どもたちや次世代のために、
「対立をやめろ」と言われているのです。
そんなことをしている場合ではないからです。

もし、地球環境をなんとかするために
支障になるのがお金なのであれば、国がすべて出せばいいのです。
それができない理由が労使の対立、イデオロギーの対立なのであれば、
それを引っ込めればいいだけの話なのです。

脱炭素はひとつの企業の努力でなんとかなる問題ではありません。
企業はいま、全員が手を組まなければいけません。
ん〜、どうすりゃいいんだ・・・
そんなとき、ふと顔を上げると、そこには経団連があるではないですか。

日本の大企業の経営層のトップの集まりです。
経済同友会もある。

労働者の集まりとしては連合とか全労連がある。
大勢の人間がつながっている枠組みは他にもたくさんあるのです。
ただ、それらは自分たちの利害のために手を組んだグループなので、
互いに「対立」のために存在しているわけですね。

このように、「今までの世代」というのは、
対立するしか方法を知らないのです。
まったくかっこ悪い話で次世代の子どもたちに申し訳ないのですが・・・

ごめんね、みんな・・・。バカな大人たちで・・・。

しかし、そうなるとこんな考えが見えてきませんか?

私は、今の野党に、
単純に経団連や特定の広告代理店を批判して欲しくない。
なぜなら、それらはことを前に進める「力」を持っているからです。
問題は、その力をどのように行使するか、ということ。
力の向き。方向性。
そこを変えてもらうには、味方になってもらうしかない。

発想を変えるとは、そういうことなのです。

だって、ゼロからそんなに力のある存在を作るのを待っていたら、
地球の温度はあっという間にデッドラインを超えてしまう。
だったら、今ある力を正しく使う方向に向かわせればいい。
対立をやめて、共通の目的のために力を合わせたい。
その目的とは、地球温暖化の抑止であり、脱炭素です。

世の中の仕組みそのものが変化しなければ問題を解決できない時、
その仕組みの中枢にある存在を味方につけないかぎり、
ハードランディングしかあり得ない。

けれど、争いによって出した結果というのは、
常に、次の争いの火種にしかならないということは、
人類が歴史で証明してきましたよね?

融和や共創の実現にためになすべき第一歩は、
お互いを深く知ることだと思っています。

いま、地球環境にとってマイナスな方向に力を発揮している存在に
消えてもらうのではなく、
プラス側の力を発揮する存在に変わってもらうこと。
そのためには、対立構造の中でそれを行うのではなく、
みんなが問題の核心を共有し、主体的に「今まで」を終わらせ、
新しい方向に手を組んで進むしかないのです。

そのために企業がやるべきことはとても多い。
そう思うんですね。

Z世代と呼ばれる若者たちは、
恐らく「対立を放棄する」準備ができています。

問題は、大人なのです。

大人が勝手に争っていて、その被害をすべて次の世代が被るのです。

我々は争っている場合ではない。
なぜ、それを訴える政治家はいないのか?

それは日本の政治そのものが「対立構造」だけにのっかっているからです。
少なくとも野党は「対立をしたがる人」と、
「対立をやめさせる人」の対立という構造に持ち込むべきでしょう。

でないと、例え政権を交代しても、
またすぐに新しい争いが始まるだけです。

「大人は対立をやめろ!」

それが、次の世代たちの叫びなのです。
対立はシステムではなく、人の気持ちから湧き出ています。
だからこそ、我々自身が変わらなくちゃいけない。

それがテーマの本質なのです。
(だから難しいのですが)

我々の気持ちの根っこが変化すれば、
脱炭素なんて簡単にできるでしょう。
価値観が変わるのですから、当たり前です。

今までの考え、今までの常識は、決して当たり前のものではないし、
人類にデフォルトのものでもありません。
そう思い込まされてきただけです。

対立をやめよう。子どもたちのために。
これから生まれてくる世代のために。

対立しないことは、可能なのです。
それに気づくことを恐れてはいけない。
そのために戦うべき相手は、自分自身です。

これが、事実です。

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