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10/5:しっくりくる「仕事」と「生活」の距離 平野建設内覧会
起-きっかけ
・丁度静岡に行く用事があったので、後藤周平建築設計事務所設計の平野建
設の内覧会に参加。
・内部の写真は公開できないので外観を住宅のようにも、事務所の様にも見
えるような建物にしたという点について考察。
承-事務所という建物の成り立ち
・設計した建物は建設会社の本社屋なので目立つ建物にしがちであるがそう
でなくむしろ周辺の建物と似たような外観にしている部分について事務所
という建物がどのように成り立ってきたかをざっくり考察。
・オフィスビルという建物の形式はざっくり言うと、産業革命以降の工場労
働に代表されるような、集約型産業に適して形式として主に20世紀に鉄骨
造やRC造の技術革新と連動して生まれてた。
・この結果、それまで朝起きて、食事をして、仕事をして、仕事を終えて、
食事をして、睡眠をとる。という1つの場所で成り立ってきた「生活」か
ら「仕事」が、切り離された。
・そして、建物としてそれまで手工業に従事する者であれば、そのための設
備はそれぞれの「家」の中にあったが、「仕事」を行う場所が、物理的に
も機能的にも「家」から分離し別の1つの建物にまとめられ工場という建
物が成立した。これと同じように、「オフィス」も「家」からは分離した
別の建物の形式になった。
転-働くことが日常に取り込まれていく(と思ったけどそうばかりでもなかった現状)
・オフィスという形式は、モダン、ポストモダン、そして現代に至るまで鉄
骨、RCの技革新の披露の場であったり頂部に記号を付けてみる時期があっ
たり環境に配慮するために外装や木造高層化に技術が集中する等の動きは
あったがオフィスという形式自体が変化する状態には至らなかった。
・その形式自体に対する疑問がコロナとリモート業務環境の急速な普及で多
くの職種で在宅で業務を行う状態となり、まさに「労働」が再度「生活」
に取り込まれていくように見えた。
・しかし、コロナも落ち着いて現在に至ると集約しているからこそ社員間の
直接の対話が生まれ業務上有益であるよねという考え方により、週5日の
勤務を再度必須とする動きをしている会社もある。
・ここで言えるのは、20世紀に生まれたオフィスという形式がやっぱりまち
がっていたということではなく、現代に至るまでのさらなる技術の革新に
より、仕事の形式を選択することができる状態になったと考えた方が適切
だと思われる。
結-「仕事」と「生活」のしっくりくる距離感
・では、磐田市という地方都市の中の建設会社という点で、どのような働き
方がより適しているのかを考えてみる。
・施工現場は常に判断の連続であるのでその判断の速度感を出すには本社或
いは現場に人を集約するという方が効率が良いのは明らかと思われる。
・一方で、従業員を1万人規模で抱える巨大なゼネコンではないので予想の
範囲だが毎日1時間や2時間かけて出勤してくる職員はいない可能性
が高い。(つまり社屋からそんなに遠くない場所に住んでいる)
・つまり、距離感としては最初から「生活」と「仕事」の距離は近い関係に
ありつつ、仕事の内容としては1つの場所に集約して行うことが求められ
る職種と言える。
・この点から建物の外観について考えると、まず、既存建物(写真奥の白い
RCの建物)の様に巨大で大量に人間を収容する必要があった「オフィス」という形式の建物であることを強く主張する必要は最初からなかったと言える。
そして、「生活」の場所である「住宅」の延長の様な建物が「事務所」の形式(プラン)をとっているという新社屋(手前の建物)は「仕事」と「生活」がお互いの延長線上に見える位置にありつつ、近づきすぎないしっくりくる距離感を作っている。そのしっくりくる関係が建物の外観と周辺建物との関係の中にも表れていると思われる。
(補足:外観でオフィスであることを主張することにあまり意味がなくなっているとも言えそう)