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【鞄の中身】健やかな鞄生活のために

 鞄が重い。肩が外れそうに重い。
 えっ、何でこんなに重い?必要最低限のものしか入れていない筈なのに。高倉はメイクをサボっているし、小説はKindleで買って携帯に入れているし、パソコンを持ち歩くことだってしないから、「必要最低限のもの」自体が他人より少ない筈なのに?
 ということで、鞄の中身を確認してみることにする。不要なものがあれば除こう。

高倉の鞄とその中身

 ね?少なくないですか?
 赤い長財布は今年の初めに買ったもので、ゴーストレザーの蝋が少しづつ取れて綺麗な色になってきた。決済のほぼ全てをスマホで済ませるようになったので、財布の中には最低限以下の現金とカード類、身分証くらいしか入っていない。
 赤いキーケースにはなんか必要な鍵が数個と、鮫のキーホルダーをつけている。キーホルダーは前の職場の餞別に頂いたもので、高倉の鮫好きを知ってのチョイスだったそう。嬉しい。ずっと大切にする。
 AirPodsは赤いケースに入れている。お察しの通り高倉は赤色が好きだ。放っておくと何でもかんでも赤を選んでしまうからいけない。還暦を待たずに赤いちゃんちゃんこを着はじめかねない。
 「流石に持ち物赤すぎでは?」と思った頃に手帳を新調したので、手帳は落ち着いた焦茶色。ペンホルダーには相棒の万年筆を入れている。
 鞄の中からはみ出ている水筒二本は、一つに珈琲、一つにお茶を入れている。基本的な水分摂取は珈琲で済ませてしまうのだけれど(恋人は「珈琲は水分じゃないよ!」と言うけれどそんなことないと思う)、食事の時はお茶が欲しいので別途お茶ボトルを携行している。
 水筒の横に見えている白とグレーは折り畳み傘。夏は特にゲリラ豪雨が怖いので携帯しているのだけれど、この夏は使う機会に恵まれなかった。
 そして動物柄のポーチは高倉の手作りです!いえーい。実は高倉、ちょっとだけ手芸をします。ポーチにはハンカチと香水とアルコールスプレーなんかをぽぽいと入れてある。そう重いものではない。

 総括、不要なものは特に入っていない。強いて言えば、使う機会に恵まれない折りたたみ傘か、二本もある水筒か……。しかしいずれも無いとちょっと困る。それに、この程度は社会人なら誰でも携行しているのではないだろうか。

 ということはもしや、鞄そのものが重いのか……?

高倉の鞄

 高倉の鞄は、東京は日本橋の鞄ブランド「YOUTA」さんの横型ダレスバッグ。購入したのは十年ほど前だっただろうか、ブランドものだけあって十年ほぼ毎日使い倒した今も綺麗でかっこいい。自立してくれるし、口ががばりと開くので中のものを取り出しやすいし、何より形状が好き。重量は1kg弱で、平均的なビジネスバッグ相当だと思う。
 因みに、鞄の右上からぶら下がっているキーホルダーはかの珍妙なミュージシャン兼詩人兼映画監督兼俳優兼作家兼今最も気持ち悪い男、松永天馬のファングッズです。結構深刻に好きですが、別にファンではないです。ほんとです。広島のソロライブ最高でした。

 鞄の中身をひっくり返して分かったこととしては、高倉の鞄には必要なものしか入っておらず、社会人の携行品としては決して重くないということだ。となれば問題なのは、社会人必須携行品ごときを「重い重い」と言う高倉の貧弱な筋力ということになる。事実、最近の高倉は運動不足だし、そうでなくても筋力は無い。長距離走のつもりで走っても二分と保たないし、ちょっとスクワットしただけで筋肉痛になるし、懸垂なんか一回もできない。
 やはり筋トレしかないのか……。電話口の恋人もなんかめっちゃストレッチとか腹筋とかプランクとかしてるし、高倉も頑張らないといけないのかもしれない。健やかな精神は健やかな身体に宿るし、その先に健やかな生活がきっとある。

 とはいえ、ビジネス鞄を携行しなくてもよくなれば万事解決するわけで、やっぱり仕事なんぞ碌でもない。はやく隠居してぇなぁ、とため息をつきながら、プランクの構えに入る。

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