壽 初春大歌舞伎
新年らしく曾我ものでと思い出かける。
とはいえ、白眉は、出色の壱太郎「京鹿子娘道成寺」。全体も見えて、三階席がかえってよかったとも。
曲線を中心とした柔らかい舞は目に艶やか。艶やかといえば衣装の素晴らしさもある。二度の引き抜き早替りの手際が、三階席からはよく見えて楽しい。
先に曲線を中心とした柔らかさと述べたが、もちろん要所々々での直線的スピード感も十分。
また、囃子連中の小鼓、大鼓、太鼓、笛にくわえて、能にはない三味線が、壱太郎が衣装替えに引っ込んでいる間も、見事な演奏、聴きどころで、客席を浮き立たせる。
美しさに目を奪われるが、その裏には燃える大蛇となって鐘の中で安珍を焼き殺した清姫が、さらに妄執をもって鐘楼を訪れるという物語があり、そう考えれば、壱太郎が鐘を見る目が恐ろしくもある。
道成寺は最近、能でも観劇していて、その方向性の違いはもとよりながら、学びになる。鐘が吊られている位置からも、鐘の持つ意義の大小、違いが明らかだろう。能における「切迫」は前面には出ていない。
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