鵺@国立能楽堂

国立能楽堂の普及公演として金春流の能「鵺」
鵺とは何か。頭は猿・尾は蛇・足手は虎で鳴く声は鵺。キメラである。
このキメラが天皇を襲う。天皇制が成立していくなかで滅ぼされた、多くのもの。蝦夷、熊襲、吉備の人々、蘇我氏…そうしたものの合体が天皇を襲う。

対するのは、源平の武者からの選りすぐりである源頼政。猪野早太ひとりを共に鵺に向かう。
手には二本の矢。鵺を一本めで仕留められなかったら時には、自らを窮地に置いた貴族のいずれかを(あるいは主上を?)射るための矢である。

頼政は鵺を射落とすことに成功し、獅子王という刀を下賜される。
が、後年、この頼政は以仁王を担いで、平家打倒に立ち、惨敗して死ぬ。
この時の様子は同じく能である「頼政」に描かれる。

そして、この鵺でも、シテは果たして鵺なのか、頼政なのかが不分明だ。時に頼政になり、時に鵺となって舞台は進む。

普及公演ということで冒頭に解説があったのだが、そのタイトルは「敗者が語る勝者」というものだった。しかし、頼政は果たして勝者だったのか、一瞬の勝者であったのかもしれないが、結局は歴史の敗者として名を残している

鵺は空穂舟に閉じ込められ淀川に流されるが、成仏できないまま、流れ着いた土地に留まる。
そして、ここでも亡霊として現れる。が、果たして土地の人々は直接の危害を受けていたのだろうか。
むしろ、その土地に何らかの刻印を与える存在としてあったようにも考えられる。

ワキの僧侶によって鵺は成仏するわけでもない。
空穂舟という殻のなかで、鵺は再び覚醒する時を待つ。そしてその時、頼政は鵺と混じり合い、敗者として歴史を語る

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