デイダミーア

二期会のオペラ「デイダミーア」をめぐろパーシモンホールで。
ニューウェーブオペラ劇場と名うっての公演。二期会メンバーの出演で、タイトルロールは七澤 結。演出は中村 蓉。

新国立劇場や東京芸術劇場、東京文化会館に比べれば明らかに箱が小さいわけだし、海外からの招聘出演者とかもいない、まあ端的に言えば、こじんまりしたオペラ公演ということになるんだろう。

東京以外でオペラを観たことがないが、そうした場所での公演もやはり、こういうこじんまり系にならざるを得ないだろうなと思う。

それはさておき、こじんまりということで、私がオペラ鑑賞で最も大事にしている舞台美術と言えるほどのものはない。そもそも「舞台美術」というスタッフが存在しない。
学園祭+アルファ程度の印象で、直方体をうまく使い回しながら、さまざまに見せていた。

では、見る価値はないかというと、そんなことはなく、舞台美術などに予算をかけられないぶん、ダンスを効果的な背景として利用していて興味深い。出演者も俳優(歌手)としては6人だけ、ダンサーも6人ぐらいだろうか。それでも面白く作っていた。

また、そうした限られた人数や美術のためなのか、俳優(歌手)が、とにかくよく踊る。

また、こうした多様な限定によって、「場の抽象化」という舞台芸術に期待される部分が図らずもさまざまに実現されていることも、想像力を触発された。

ギリシャ劇をモチーフとするストーリーでは、デイダミーアは戦争で死ぬ恋人に取り残された悲しい人物として描かれているようだが、中村の演出では、ラストでとても力強い姿を見せる。恋人との間に生まれた新しい生命を象徴するのだろう球を持ち、戦争で死ぬ恋人をむしろ拒んで生をはぐくむ存在として立っているように見えた。

これを母性として解釈するのでは、ステロタイプだろうが、新たな生命は、より広範な新たな希望、自立していくための力として描かれているようにも思われた。

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