スタートアップの心得
スタートアップなるものを創業してもうすぐ4年が経ちます。
ナンダカンダ、こんな生活を続けてるとわかってくることがあります。今日はこれからスタートアップする方たちへ、僕がここまでに得た教訓をまとめておこうと思います。
スタートアップの心得
心得⑴ エンジニアは絶対必要
バーンレートって知ってます?
毎月出て行くお金のことです。給与・経費・家賃やマーケティングコストなど色々ありますが、プラットフォーム型のスタートアップのバーンレートは初期で大体200万円くらいで抑えたいとこです。
でもエンジニアを外注に出すと、平気で毎月150万円はかかります。
でもエンジニアが1名いれば30~50万円で済みます。かつスピード感も全然変わります。とにかく対応が早くなる。だってそのサービスしか担当しないし、当事者意識もありますから。もちろん質もありますが、だからこそ投資家はエンジニアがいるかどうかを気にします。
心得⑵ 小さく始める
スタートアップするととにかくいい物を作りたいので、アレコレ機能を積み込みたくなります。でもそれをやってるとどんどん開発が長引きコストがかかるだけでなく、マーケティングのテストができなくなります。
このマーケティングができないのが問題です。何って売上が立ちません。売上はユーザーニーズのバロメーターです。売上と利益が出るパターンをいち早く見つけることが、サービスの価値証明に繋がります。またユーザーからの反応というのは、本当に多くの学びと改善点を教えてくれます。だから1日でも早く市場テストを行うべきなのです。
大事なのは間違わないことではなく、早く試して『立てた仮説が正しいかどうか?』を白黒付けてくことです。ダメだとわかれば、1つの不確定要素を潰せるので。それは間違いなく進化です。
心得⑶ アイデア段階でVCに話を持ち込む
これは特に重要です。
VCの人たちは様々なスタートアップに触れ合いながら、その身にノウハウを蓄えてます。彼らがアドバイスしてくれることで、無駄なことに取り組まなくて済む確率が高まります。
また彼らは懸命に次の出資元を探してきてくれます。これがとにかく大きい。はじめに言ったとおり、僕は半年身体の7割を資金調達に持ってかれてますが、彼らがいたら、僕はこの時間をサービス開発やマーケティングという『価値を生み出すこと』に割くことができたわけです。
やり直しがきくなら僕は間違いなく、VCに交渉して、シードでの出資を受けた上で事業に取り掛かると思います。
心得⑷ 儲からないビジネスに出資する人なし
どんなに社会のためになっても
どんなに美しいコンセプトでも
実際に儲けられなければ継続できません
継続できなきゃ、世の中変えられません
だから稼ぐことができると証明すること
これをしない限り、大きな資金調達はできない
地味だけどお金をしっかり稼げてるとか
むっちゃ営業できるとか
とにかく稼ぐことへの意識が高いとか
そういう姿勢を持ってるタフなチームを、理屈抜きでVCの人たちは好みます。だって彼らは人様のお金を預かって間違いなく利益を出さなきゃならないから。結果が出ればより大きなファンドを組成でき、自分の収入も大きくなっていきます。でもしくじったら誰もお金を預けてくれなくなります。だからそこにシビアになるし、そういうシビアさって事業を行う上でとても重要なことなのだと今なら心底思います。
逆に事業会社の社長さんなどは、コンセプトや機能だけでも張ってくれたりします。細かいことは言いませんが、その代わりシナジーを期待されたり、先行きグループ会社化したいと考えます。
組むかどうかは、自分たちの事業にどこまでシナジーがあるのか?例えば毎月○万件の送客してくれるとか。そういう双方にとって良いパートナーならばがっつり組むのもあり。その代わり色が付くので、競合とは組めなくなったりします。
心得⑸ 資本政策は後戻りできない
僕らは創業初期、チーム力と事業コンセプトを評価され、モックの状態で2億円以上の企業価値で数千万円の調達を実現できました。これは奇跡に近いです。
しかし大きな問題が出ました。合流予定のエンジニアが嫁ブロックでジョインできなくなり、外注を頼るほかなくなったのです。
そのため計画より、月ベースで150万円以上のコスト増になり開発スピードも下がりました。その結果、実績が出せる前の段階で資金が足りなくなったのです。
これは本当にきつかった。
株価は一度上げると下げられません。示せない実績、結果。その状態で投資家から繋ぎの資金を集めなきゃならなかった。沢山のVCさんに『高いよねー。その株価じゃ出せないよ。』と言われ続ける毎日でした。だから余計に時間がかかりました。
すべてはエンジニア脱落という大問題に対して、そこをすぐに補填できなかった自分の経験不足が原因ですが、こうやって1つの選択ミスが、先に大きな負荷を生み出したりします。
こういう事態に対しても、VCがついていたなら早い段階で手当てできたりします。最終決定は自分ですが、相談役としてVCさんが付いてるのと付いてないのとでは、本当に違うと思います。
心得⑹ マーケティングはアナログで試せ
例えばチラシ作ってまいてみてもいい。wordpressとか使って簡単なページ作ってユーザーニーズを確かめてみてもいい。システムで試す前に、電話でもメールででもとにかく売ってみることを試すのもいい。
とりかくどうやったら売れるか?
どこの、どんな人が、買ってくれるのか?
どうしたらその人がリピートしてくれるのか?
それがわかってるのとわかってないのとでは、出資交渉する上で全然違います。
マーケティングって、実は全部アナログで試せちゃうんです。だってシステムはそれを簡便化させるだけのものだから。だからどんどんアナログで試すべき。そこで得た知見を開発に活かすべきです。それが絶対近道だし、少ない資金で結果が出せて有利な調達をかけることができます。
心得⑺ VCってどうやって会うの?
VCさんに出逢うには、ピッチイベントに参加するのが手っ取り早いです。IVSとかB-dush CampとかSLPとか。
もしくはリードVCとして有名なところに駆込むのもいいです。イーストベンチャーズ、インキュベートファンド、DeNA、GREE、サイバーエージェントベンチャーズなどは、チーム力だけでも張ってくれます。チーム力があって真っ白な状態なら、彼らの知見を十分に活かしつつやれる。しかも少額でしっかりと持株も得られる。それはつまり彼らにとって『リスク』を抑えることに繫がるからです。
補足:創業メンバー探しと、サービスの創り方・育て方
とにかくこれは見ておいた方がいい。有名なシリコンバレーのVC、Yコンビネーターのポールグレアム氏がまとめた、下記の2つの記事。はじめにこれを読んでから事業を始められた幸運に感謝しない日はないです。それくらい重要だし、事実こういう事が起きます。
ただこういう話は、自分で経験し失敗を経て腹に落ちる話なので、それまでは「そういうこともあるのだな」と頭の隅に置いておくだけでも良いです。
⑴スタートアップ創業経営者の見つけ方、付き合い方、別れ方
⑵マーケティングを捨てよ、サポートへでよう
補足:資金調達時に求められる説明って?
⑴事業概要
資金調達時に何を求められるかは、下記の要素です。
要は「自分がお金出す側だったら、これは知りたい」という情報ですね。
1、誰のどんな悩みを解決するものか?
2、どうやってその悩みを解決するか?
3、事業の成長性
4、事業の競合優位性(特許・真似しづらいなど)
5、考えられる事業上のリスクと対象方法
6、目指すビジョン
7、競合他社一覧
8、収益試算(向こう3年間分は必要)
9、事業ローンチに必要となる資金
10、創業メンバーのプロフィール一覧
参考までに、ICCでプレゼンした僕の動画を掲載します。
8分間でしたが、1〜6まではしっかり伝えられてるなと。これに7〜10を加えると、資金調達時の株主向け資料になります。
◼︎参考動画(ICC Huber.プレゼン)
https://industry-co-creation.com/catapult/15895
⑵最低限テスマしてから、VCには会いに行こう
本気で、人からお金を集めて起業しようと思っている人であれば、当然タラレバではなく、すでに何かしらの実践をし「やれる!」という実感と自信を持ってると思います。
つまり「テストマーケティング」はしているはずです。してなかった時点で「あ、この人は口だけの人だな」と思われて終わります。この結果をしっかりまとめて、端的に収益性をまとめましょう。テスマ結果について、投資家が知りたいのは…
どんな仮説を、どのように検証したのか?
いくらの経費で、いくらの利益が出たか?
市場規模はどの程度あり、それは伸びているのか?
考えうるリスクと対処方法は?
規模拡大に耐えうる、タフなチーム力があるか?
競合優位性はあるのか?(どう作るのか?)
くらいでしょうか。
この辺がまとまっていれば、シードラウンドフェーズでの調達はスムーズにできるのではないかと思います。
◼︎参考図書:リーンスタートアップ
https://www.amazon.co.jp/dp/4822248976/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_xZzmCbN8VMSPP
⑶3〜5カ年のP/L
事業を真剣に実現したいなら、徹底的にシミュレーションしておくべきです。そうすればいつ、何をするからいくら必要になる、という見通しを立てられますし、不慮の事態にも備えられます。
逆にこれができてない人は、起業は時期尚早だと思います。「いくら集めて、何に使うの?」という質問に明確に答えられない時点で、僕が投資家なら出資は見送ります。
最後に一番重要なのが「志」です。
このメッセージの真意は、いくら言葉を尽くしても「経営者になり、その責任を背負った者」でしか、理解はできないと思うので多くは語りません。ただ1つだけ「利潤の追求と、社会貢献を両立しうる道はある」ということだけ、心に留めておいてください。
志が高ければ高いほど、この矛盾に悩むと思いますが、必ず突破口はあります。その事実だけは知っていて損はないと思います。
ここに書いたことは、散々本やwebで見かけてた話ばかりでした。見ている当時は、それでわかってるつもりだった。けれど、いざやってみてようやくその本質を理解できたと思えます。
このエントリーが、誰かの助けになってくれることを祈って。お互い頑張りましょう!