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お供達(オトモダチ) 【短編小説】


 2人の女子があまりにも奇怪な問答を繰り広げていた頃、美咲はあくまでも平然とした顔つきでいた。


 他人との関わりが得意では無い美咲にも、辛うじて友人と呼べる存在が2人いた。名前は、楓と彩花。同じ高校に通う同級生だ。美咲は楓に、感情の機微とか物事の捉え方とか、そういう価値観の類似を感じ取っていた。もともと、そういった折り合いが苦手な美咲にとって、楓のような存在が傍に居ることは非常に有難いことだった。ただ、楓とは好きな文学や音楽などの趣味が全くと言っていい程合わなかった。そのせいもあってか、楓はいつも傍にいるのに、直接的に絡んだ思い出や実感が美咲にはあまりなかった。唯一気の合う趣味といえば、これは趣味と呼べるのか、口にするもの位だった。


 一方の彩花とも、趣味の合致はしていなかった。どちらかと言えば彩花の趣味のセンスは楓のそれに近かったし、価値観も彩花とはズレを感じていた。もちろん、彩花は自分とは違う人間であることくらい理解していたし、むしろ、彩花のような価値観の似つかない友人がいる事に美咲自身疑問を抱いていた。美咲はそれに関して少し思いを巡らせてみた。それでもやっぱり楓や彩花と仲良くなったきっかけもあまり思い出せないし、美咲の感じた違和感は増すばかりだった。そんな事を考えながら下校道を歩いていると、美咲は後ろから誰かが近づいてくる気配に気が付いた。


 「美咲!」

その背中に彩花が呼びかけた。楓が振り返った。


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