20241008 はりねずみ/ヒーロー
10/08
スタジオ練習。窓を開けているだけで涼しかった部屋から一歩外に出たら、地元の冬を思い出すような冷気が袖の隙間から滑り込んできて、カレンダーがしっかり十月になっていることを体感する。めずらしく霧雨が降っていて、風情があるなあ、いつもこういう雨なら許せるのにな、なんて思いながら傘をひらく。
傘立てのなかでも自分のものを間違えないように、青地にはりねずみのイラストがあしらわれているマスキングテープを持ち手に貼っている。たしか母がくれたマスキングテープで、もらってからあまりのキュートさにしばらく持て余していたけれどせっかくだから、と貼った。傘を手に取る日にだけ会えるはりねずみ。貼ってからなんだか傘とか雨とか、濡れるのは嫌だけど、でもなんとなく嫌なだけではなくなった。
会うことはおまじないみたいに、心に絆創膏を貼ってくれる。だから約束をすると心が浮き足立つし、ときには濡れてでも愛しいだれかを迎えに行く。自分で貼るんじゃなくて、貼ってもらう。きっとそれが大事なんだと思う。
10/09
たのしみにしていたMO MOMAの自主企画を観に、仕事を終えたあと下北沢へ向かう。昨日にまして寒く、思わずコートを羽織る。はじめての下北沢Three、そういえばはじめてMO MOMAを観たのは奇しくもとなりのベースメントバーだった。たしかbutohesの企画で、サーキットイベントが被っているせいかかなり空いていたのを覚えている。今日はそんなこともなく、人は結構入っているけど静かで穏やかな雰囲気があって心地いい。仕事終わりが遅かったせいで着いたらちょうどGhost like girlfriendが終わるところだった。本当に心惜しい……またの機会に観たい。
Cwondoはもうそりゃあそうだよね、という感じで良かった。音源でも聴くけど、やっぱりエレクトロってこういう再現性のない、ツマミを回して出たとこ勝負のステージが最高だよね、と思える内容だった。あと、かなり人を選びそうな雰囲気から徐々に(俺が好きな感じの)流麗なメロディへフォーカスが当たる曲になっていったのがアガった。ここから既に隣の隣くらいにいた外国人のグループがみんな身体揺らしており、それも最高だった。
転換挟んでいよいよMO MOMA。ゲストを交えての新曲やカバーもさることながら、長尺を活かしたアレンジが既存曲にも入っていて油断ならないセットリストだった。
中盤は高橋さんが前に出てステージに3人が横一線、バチバチにキマっているTurkey Inなんかを見せられ曲自体の印象が塗り替えられる瞬間が多く、痺れた。3人で鳴らすバンドのハードであるところのフィジカルとソフトであるところの曲が馴染みあっていて、もう完全に、他に誰も辿り着いていないスリーピースの形をあらわしていた。
Rollをやってくれたのも嬉しかった、アウトロ爆音のギターで通奏音を鳴らし続ける土器さんの姿がとてもヒロイックだった。シンプルな上手さよりもセンスに惹かれがちな自分にとって、その時々でプレイヤー・ソングライター、アレンジャーと役割を変えて主役にも脇役にもなれる土器さんの横断的な仕事っぷりは個人的な理想だ。そう思えば、自分にとって数少ない(敢えてそう呼べる)ギターヒーローといっていいのかもしれない。
Pointはずっと特別な曲で、学校の校舎のような白さを連想させる無機質なギターリフから始まって、だんだんと熱を帯びていく過程がたまらなく好きだ。
ずっとふわふわした夢心地みたいな音の重なりから、ラストでベースが低くなって地に足が着き始める。その瞬間に、校舎って思ってるよりそんな真っ白でもなかったよな、とか、もうそれは記憶になって戻ってこないよ、と言われるような。湿っぽすぎず、でも乾きすぎず、音と言葉で心をフラットな状態にチューニングしてくれる。過去にも未来にもフォーカスしたあとで、「いま・ここにいるんだ」という感覚が得られる歌詞も手伝って、初めて聴いたときから自分にとって大事な曲だ。
終演後、熟慮につぐ熟慮の末、白ロンTを買って帰宅(ちなみにうきうきで翌日の自分のライブに着ていった)。
秋の空気ってどうしてこんなに愛しいんだろう。好きな季節が、好きな音楽とともに身体を包んでくれるうれしさを噛み締めた数日間だった。
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