シン・国公立大学入試分析① 鹿児島大学2021(今後の更新方法についてもお知らせ)
こんんちは。
気づけば、一年近く放置していた「国公立大学入試分析」なのですが、いよいよ再開します。
再開にあたって(今後の更新の方針)
今後のこちらの更新については、下記の通りとします。
① 2021年度以降、最新年度の過去問についてのレビュー(解答あり)
② それ以前は傾向分析を更新
③ 出講にて過去問演習講座を担当している大学については除外
①・②については、本当は過去10年分ぐらい解いたものをアップしたいのですが、さすがに無償公開ということもあり作業には限界があり、とりあえず最新年度についてひたすら更新する道を選びました。
それでも、地方国公立大学って大学側の解答のクオリティもまちまちだし、予備校解答もあったりなかったりなので、一年分だけでも解答を更新することには意味があるかなあ、と思っております。
複数年度について解答解説を望まれる場合は個別に対応しようと思っております。
有償ですが、格安にします。(1年度あたり500円ぐらい?添削もつけて1,000円ぐらい??)
代わりにnote記事に載せさせていただく感じですかね。ここら辺はどこかで詳細を発表しますかね。(構想段階)
で、昨日の記事では南からはじめようかと思ったのですが、手元に琉球大学の問題が確認できるものが無かったので、とりあえず鹿児島大学からはじめることにします。
鹿児島は昨年度まで北九州予備校にて出講していた思い出の地。いいところです。鹿児島校には感謝しかありません。鹿児島校には。
さて、問題は大学のHPよりご確認ください。
問題の意図が書かれていますが、正直あまりやる気を感じない。
では、解説していきましょう。(相変わらず前置きが長い)
① 2021 鹿児島大学現代文解答解説
<文章>
永井均『倫理とは何か 猫のアインジヒトの挑戦』
出典の本のカバーがかわいい。素晴らしい。今度読んでみよう。(Amazonポチ)
内容の分類は「哲学」。
「正義」という人為的な美徳の成立を人間の本性に求めるところまでの論証を問題提起を繰り返し行うことで深めていく文章。
読みやすいと思うが、「問題提起」の繰り返しに少々疲れを感じるのも事実なので、受験生からするとやや厄介かも。
<設問>
問1 漢字
① 肥 ② ていけつ(締結) ③ かへい(貨幣) ④ 動機 ⑤ほうが(萌芽)
→ 間違えたら、ただの実力不足。というよりも勉強不足。
問2 理由説明
【傍線部分析】
「正義規範があくまでも人為的に作られた制度である」
→ 主語と述語(述部)との間に因果関係の不足が見られるパターン。
➡ 「正義規範」がどういう点で「人為的に作られた制度」なのかを説明する。
【解答へのアプローチ】
・正義の概念は人為的であるとはどういうこと?
→直前の②段落に注目する。そこで、正義とは「社会的な規範」として「作られたもの」と書かれている。
つまり、人間の本性として「自然に備わっているものではなく、理性による洞察に基づいて構築されたもの」なのだ。
太字の要素をまとめていきたい。
【因果関係が成立しているかの確認】
→ 基本的に理由問題は「作った解答」+「傍線部(または設問の要求)」という文章を作って、意味が通っているかを確認すると良い。
<解答案>
正義とは人間の本性として自然に備わっているのではなく、社会に必要なものとして人間の理性に基づき構築されたものだから。
これに傍線部を加えて文章を作ると、
正義とは人間の本性として自然に備わっているのではなく、社会に必要なものとして人間の理性に基づき構築されたものだから、
正義規範があくまでも人為的に作られた制度である
文章としては十分通じる。
<字数調整>
解答案では58字。さすがに少なすぎるので、少し要素を加えたい。
「社会に必要な」とは「多くの人にとって共通して必要なものである」というニュアンスなので、それも加えておこう。
【ちなみに、大学公表の設問の意図】
筆者の考える「正義規範」について、論理構造を踏まえ、わかりやすく説明できるかどうかを問う。
実質的に何も説明していないに等しい…。
<解答>
正義の規範とは社会において必要と考えられるものであり、人間の本性として自然に備わっているのではなく、理性による洞察を通じて作られたものにすぎないから。(75字)
欲しい要素は以下の三つ。
⑴ 正義の規範 = 社会において必要とされるもの/規則
⑵ 人間の本性ではない
⑶ 理性によって作られたもの
⑵と⑶が挙げられないならば、OUT 。
問三 理由説明
【傍線部分析】
「約束は約束によって成立するのではありません」
☛傍線部がやや比喩めいている。二つの「約束」は同じ意味内容ではない。両者を区別して考える必要がありそうだ。
→ 主語と述語(述部)との間に因果関係の不足が見られるパターン。
➡ 「約束」はどうして「約束によって成立しないのか」を説明する。
【解答へのアプローチ】
⑴ 二つの約束をちゃんと区別する
最初の「約束」は「起源」としての約束である。
後者の「約束」は「人為的になされるもの」(=人間の本性ではないもの)である。
⑵ その上で傍線部を解釈する
この傍線部を解釈すると以下の通りになる。
起源としての約束は人為的なものではない。
⑶ 因果関係を構築する
「起源としての約束は人為的な制度として行われているのではない」のだとしたら、何なのかを探る。
⑥~⑦段落に「暗黙のうちになされた」約束とある。それを⑪段落では「共感」と呼んでいる。そして共感は「人間の本性」として起こるものなのである。
太字の要素をまとめていきたい。
【因果関係が成立しているかの確認】
上記を踏まえた解答案を作ってみる
<解答案>
約束も起源を辿れば人為的な制度として存在しているのではなく、共感という人間の本性に基づいて成立するものだから。
これに傍線部を加えて文章を作ると、
約束も起源を辿れば人為的な制度として存在しているのではなく、共感という人間の本性に基づいて成立するものだから。
約束は約束によって成立するのではありません。
文章としては十分通じる。55字だし、字数もいい感じだ。
【ちなみに、大学公表の設問の意図】
筆者がヒュームについて述べた「約束」の内容について、論理構造を踏まえ、わかりやすく説明できるかどうかを問う。
ヒュームのところから取るんだ…ぐらいしかわからない。
<解答>
約束も起源を辿れば人為的な制度として存在しているのではなく、共感という人間の本性に基づいて成立するものだから。(55字)
欲しい要素は以下の三つ。
⑴ 約束という「人為的な制度」
⑵ そもそもは「人為的ではない」
⑶ そもそもは「人間の本性」であること
実は難問ではないかと。情報の整理が煩雑。
問4 指示語換言
【傍線部分析】
「共感を通じてそういう一般的視点に立てること」
→ 「そういう」の指示範囲を確定させる。
➡ 指示語が「共感」によるものであること、「一般的視点に立てること」につながることにも留意する。
【解答へのアプローチ】
⑴ 指示範囲の確定
→ 指示語は「一般性」についての話なので、⑭段落が指示範囲となる。
➡ 「社会そのものの観点に立てること」がとりあえずの換言内容となる。
⑵ 「共感」とはなにか
→ ⑪段落から⑬段落にあるヒュームの解釈をもとにまとめていく。
➡ 共感とは「他者の言動の結果からその人の抱える情念を推測する行為である」。そしてそれは「自分自身の利害を離れて他者のことを考える行為」であり、「一般化への萌芽」を持つも野なのである。
太字の要素をまとめていきたい。
<解答案>
共感とは他者の言動の結果からその人の情念を推測するという、自分自身の利害を離れて他者のことを考えるという社会そのものの視点に立つことを含み持つ行為であること。
79字。ほぼ完ぺき。
【ちなみに、大学公表の設問の意図】
筆者がヒュームについて述べた「共感」と「一般的観点」の関係について、わかりやすく説明できるかどうかを問う。
これまでよりは解説風に仕上がっている、、かな。気のせいかな。
<解答>
共感とは他者の言動の結果からその人の情念を推測するという、自分自身の利害を離れて他者のことを考えるという社会そのものの視点に立つことを含み持つ行為であること。(79字)
欲しい要素は以下の三つ。
⑴ 共感の説明
⑵ 自分自身の利害を離れるものである
⑶ 社会そのものの視点に立つ可能性をもっていること
⑶までたどり着けるかがポイント。問二ほど簡単ではないが問三よりは取りやすい、かな。
問5 指示語換言
【傍線部分析】
「ヒュームにおいては、人為もまた結局は自然に基づく」
→ 「人為が自然に基づく」という逆説めいた言葉を換言する。
➡ 文章全体から要素を拾う必要がある。150字以内の指定が不安。
【解答へのアプローチ】
⑴ 人為とは何か
→ ②段落にある通りで「人間の本性ではないもの」を指す。人間の本性とは「情念と理性」である。
➡ 人為とは「人間の理性によって構築されたもの/規範」(=②段落)である。それを社会的なもの、すなわち、「多くの人々が共有できるもの」とするためには「他人も自分と同じように行為するという前提が成立することを想像できる」(=⑥段落)、「他人の言動からその情念を推測する」(=⑪~⑫段落)という能力が必要となる
⑵ 「自然」とはなにか
→ ⑴の能力が自然であることを解釈する
➡ 他者のことを推測し、一般化できるという能力は社会的に構築されたもの(=人為)ではない。それは「人間の本性」と言えないだろうか、という内容が⑮段落にある。
太字の要素をまとめていきたい。
<解答案>
人間の理性による洞察に基づいて作られた規範や美徳は、他者も自分と同じようにそれを守るという前提によって成立する。そのためには他者の言動からその情念を推測し、それを一般化した観点で捉えなおすということが必要であり、この観点を持つことは人為的に構築できるものではなく人間の本性に基づく能力である。
146字。ほぼ完ぺき。
【ちなみに、大学公表の設問の意図】
筆者がヒュームの意見を受けて述べた「人為」と「自然」の関係について、本文全体の論理展開を踏まえ、わかりやすく説明できるか
どうかを問う。
この難問をさらっとこれだけで済ますのは酷い話。それだけでもこの記事を上げた意味を感じる。
<解答>
人間の理性による洞察に基づいて作られた規範や美徳は、他者も自分と同じようにそれを守るという前提によって成立する。そのためには他者の言動からその情念を推測し、それを一般化した観点で捉えなおすということが必要であり、この観点を持つことは人為的に構築できるものではなく人間の本性に基づく能力である。(146字)
欲しい要素は以下の三つ。
⑴ 人為についての説明(一文目)
⑵ 人為の成立の前提としての「一般化」
⑶ ⑵は人間の本性であること。
手が出なかった受験生もいるのでは?神戸大学の問題に近い。それより簡単ではあるが。
② 過去問から見た傾向分析
⑴ 文章レベルも設問も難関大学レベル
⑵ 過去問を解くよりも上位国立大学向けの講座などで鍛える方がいい
⑶ 大学のレベルに比して難しい
というわけで初回終了。次は来週9/28(火)更新予定。それでは。