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国公立大学分析⑥ 岩手大学(2016~2019)

 こんにちは

 今回は東北シリーズ第二弾、岩手大学です。

 第一弾は弘前大学


 後述しますが、岩手大学は図表読み取りの小論文に近い問題を「国語」の入試問題でいち早く導入した大学のひとつです。

 では、さっそく分析していきましょう。

〇2016年の分析

①文章の分析
 【出典】『目の見えない人は世界をどう見ているのか』 伊藤亜紗
 → 同年の大阪府立大学、高崎経済大学で同一出典の文章から出題。
 【字数】3,300字
   → 国立大学としては標準的な字数。
 【文章テーマ】哲学(美学)
   → 美学としての身体論。タイトルに近い内容を論じている。
 【文章難易度】★★☆☆☆
   → 抽象具体の往還、論理展開ともに明確。読みやすい。

②設問の分析
 【設問数】 4問
 【記述量】 35+α(100字程度)
 【難易度】 ★★★☆☆
 【総評】  記述問題の質が高い。端的にまとめ切ることが求められる。

 <各設問分析>
   問1 抜き出し(換言)
 【難易度】 ★★☆☆☆
 【コメント】 ()が答えに含まれる問題もあることを理解していれば平易

   問2   換言記述(35字)
  【根拠探索】★★★★☆
  【字数調整】★★★☆☆
  【難易度】 ★★★★☆(3.5ぐらい)

  【コメント】 
    良問。根拠がずれる可能性がある。
    根拠さえ見つかれば字数は自ずと調整される。 

   問3 換言記述(おそらく30-40字×2)
  【根拠探索】★★★☆☆
  【字数調整】★★★★☆
  【難易度】 ★★★★☆(3.5ぐらい)

  【コメント】 
    単純な比喩換言問題だったら相当難しいが、具体化の指示でマイルドに。
    椅子の例にたどりついて、それをもとに抽象化。やはりやや難しいのか?

 問4 漢字 
   【難易度】 ★☆☆☆☆
   【コメント】特に難しいものはない。

③大問4について
   岩手大学の大問4は「図表」の読み取り問題。ほぼ小論文。
   知る限り、かなり早い段階からこのタイプの問題を出題していましたね。

  【テーマ】 日本の文化政策の問題点
 
【難易度】 ★★★☆☆

〇2017年の分析

①文章の分析
 【出典】<近代>の入口と出口のあいだ―異なる回路へ』吉見俊哉
 【字数】3,800字
   → 国立大学としては標準的な字数。昨年比+500字
 【文章テーマ】現代社会論(情報社会)
   → インターネットの知を近代の印刷術により広がった知と対比している
 【文章難易度】★★☆☆☆
   → 昨年に引き続き具体と抽象の往還や論理構成の明快な文章。

②設問の分析
 【設問数】 4問
 【記述量】 75+α(150字程度) 昨年よりも記述量大幅増加
 【難易度】 ★★★★☆
 【総評】  記述問題の質が高い。相変わらず問題設定が秀逸。

 <各設問分析>
   問1 換言記述(75字)
  【根拠探索】★★★★☆
  【字数調整】★★★★☆
  【難易度】 ★★★★☆

  【コメント】 
 ・ 二か所の根拠を押さえることができるかがポイント
 ・ 一箇所目の根拠をだらだらとまとめる答えが生まれそう
 ・ それを75字にまとめることはなかなか厳しい
 ・ 根拠探索、字数まとめともに良問

    問2   換言記述(おそらく一行程度と思われる)
  【根拠探索】★★★☆☆
  【字数調整】★★☆☆☆
  【難易度】 ★★★☆☆(2.5ぐらい)

  【コメント】 
    ・ 論理展開を押さえて2箇所の根拠を押さえることが求められる
 ・ 後者の「交通網」「情報網」が書けるかがポイント
 ・ 訓練にはいい問題。テキストに入れたい。

   問3 換言記述(おそらく二行程度と思われる)
  【根拠探索】★★★★★
  【字数調整】★★★☆☆
  【難易度】 ★★★★☆

  【コメント】 
    ・ 結論部をまとめる問題。国公立大学頻出の型
 ・ 一箇所は見つかる(11段落)
 ・ 最終段落の「植民地主義の否定」の要素もまとめる必要あり。
 ・ 部分点は確実に取れるが、満点は難しい。学校側の要求値次第か。

 問4 漢字 
   【難易度】 ★☆☆☆☆
   【コメント】特に難しいものはない。

③大問4について
  【テーマ】 待機児童の解消における問題点
 
【難易度】 ★★★☆☆

〇2018年の分析

①文章の分析
 【出典】平野啓一郎『私とは何か―「個人」から「分人」へ』
 →   2017年明治大学政治経済学部・2016年静岡大学にて同一出典
 【字数】3,300字
   → 国立大学としてはやや少なめな字数。昨年比マイナス500字
 【文章テーマ】
   → 「個人」概念が日本で根付かなかった要因と「分人」概念の導入
 【文章難易度】★★★☆☆
   → 哲学めいた文章は2016年以来。昨年よりは読みにくいか。

②設問の分析
 【設問数】 4問
 【記述量】 120字 例年並みからやや少なめ(前年の反動?)
 【難易度】 ★★☆☆☆
 【総評】  今年は簡単すぎるかなあ。落とせない。

 <各設問分析>
   問1 抜き出し
  【難易度】 ★★☆☆☆

  【コメント】字数設定が明確なので探しやすい。

    問2   換言記述(70字)
  【根拠探索】★★☆☆☆
  【字数調整】★★☆☆☆
  【難易度】 ★★☆☆☆

  【コメント】 
    ・ 矛盾する二項目の抽出ができればよい
 ・ 根拠も見つけやすく、字数もやや多めなのでまとめやすい。
 ・ 模範解答を見ても、変な凝り方をしていない。

   問3 換言記述(50字)
  【根拠探索】★☆☆☆☆
  【字数調整】★★☆☆☆
  【難易度】 ★★☆☆☆(1.5ぐらい)

  【コメント】 
    ・ 拍子抜けするほど簡単である。
 ・ この年は記述問題は落とせない。そんなレベル。 

 問4 漢字 
   【難易度】 ★★☆☆☆
   【コメント】「哺乳」は意外と書けない?

③大問4について
  【テーマ】 図書館の利用状況
 
【難易度】 ★★★☆☆

〇2019年の分析

①文章の分析
 【出典】檜垣立哉『食べることの哲学』
 →   同年の北海道大学、神戸大学にて同一出典から出題
 【字数】3,100字
   → 国立大学としては少なめなの数。昨年比マイナス200字
 【文章テーマ】
   → アンパンマンとはカニバリズムなのかから身体論につなげている。
 【文章難易度】★★★☆☆
   → 食文化と哲学。アンパンマンの話をしているが実はやや読みにくい。

②設問の分析
 【設問数】 4問
 【記述量】 95字+α(130字程度?) 例年並み
 【難易度】 ★★★☆☆
 【総評】  昨年に比べると難しいが、標準的。

 <各設問分析>
   問1 換言記述(20字×2)
  【根拠探索】★☆☆☆☆
  【字数調整】★☆☆☆☆
  【難易度】 ★☆☆☆☆

  【コメント】 
    ・ サービスが過ぎる問題
 ・ 根拠は押さえやすいし、まとめやすい。

    問2   換言記述(40字)
  【根拠探索】★★☆☆☆
  【字数調整】★★★☆☆
  【難易度】 ★★☆☆☆(2.5ぐらい)

  【コメント】 
    ・ 設問分析で「具体的に」とあるのでまとめ方に注意。
 ・ 模範解答を見るかぎり、具体例を列挙すればOKの模様。

   問3 換言記述(50字)
  【根拠探索】★★★☆☆
  【字数調整】★★★☆☆
  【難易度】 ★★★☆☆

  【コメント】 
    ・ 模範解答はほぼ抜き出しレベルで提示されている。
 ・ もう一歩踏み込んでいい気もするが…
 ・ 「回路」の比喩表現は換言すべきだと思うのだが…。

 問4 漢字 
   【難易度】 ★☆☆☆☆
   【コメント】難しくない

③大問4について
  【テーマ】 ジェンダーギャップに関する問題
 
【難易度】 ★★★☆☆

〇分析結果~見えてくるもの

 ・ 文章量は少ない。大問数は多いが、時間は気にならない
 ・ 文章テーマは哲学、現代社会論が多い。
 ・ 記述問題は模範解答から考えると抜き出し的にまとめればよい模様。
 ・ 漢字は簡単。
 ・ 東大、旧帝大レベルを狙う非受験学年にも演習としておすすめ。

以上になります。次回は秋田大学を予定しております。」

それでは。


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武川 晋也
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