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開成高校 国語入試分析完全版① 大問1編

 みなさんこんにちは。

 先日、予告した通りに高校入試を担当してたその証、卒業制作として最難関高校の過去問について、自分なりの分析を示していきたいと思います。

  初回は開成高校です。開成高校の2020年の分析についてはこちらをご覧ください。

  ・開成高校 国語入試問題の概略

  〇大問 3題 
   → 評論 or 随筆 + 小説 + 古文 という構成

       〇試験時間/形式
   → 50分 ほぼすべて記述問題(だいたい7-9問)

      〇受験者・合格者平均点
   → 2020年 受験者平均点 52.8  合格者平均点 59.8点
       ⇒ 毎年受験者平均点と合格者平均点の乖離は6-10点前後。
         詳細は下記をご参照ください。


 まずは2020年から遡って問題の分析を行います。結構長くなったので今回は大問1についての分析を行います。

・大問1の10年間の出題分析

開成 大問1

 開成高校の10年分の大問1の図表です。小さくなっているので元データのPDFもつけておきます。


・開成の大問1 東京大学を意識した作問


 文章ジャンルはほとんど評論でたまに随筆、となっています。そもそも開成高校は2003年入試以降に記述問題を全面に押し出した入試問題を作り始めましたが、形式的にも内容的にも「東京大学」の入試問題を強く意識していることが分かります。
   東京大学が2000年以降に大問を4題にし、大問1は評論(文理共通)、大問2は随筆や韻文との融合文(文系のみ)という設問パターンにしたのちにそれに追随するような作問を始めたといえます。特に2000年代中盤は大問4の随筆を意識したような出題が多くみられました。

 東京大学の大問1は「現代社会」における様々な問題点を扱っている出典がしばしばみられます。2020年は教育が「階層」を再生産するという小坂井敏晶の『神の亡霊』であり、過去を遡っても「反知性主義」や「科学技術と現代社会」などがテーマの文章が出題されています。
   この傾向を踏まえて上記の表を見ると、開成高校でもほとんどの年で「現代社会」についての問題を提起するような内容が出題されていることが分かります。
   また、形式も2行の解答欄(たまに1行半や2行半)と、東京大学とかなり近いものとなっています。

・形式から見られる開成高校からのメッセージ

 上記の表のとおり、文字数は1,500~5,000、ここ数年は2,000前後と文章量は難関高校の中でも少ない部類に入ります。これは、筑波大駒場と共通する特徴です。さらには設問数が2-3題、前項の通り1問ごとの記述量も2行程度と量的負荷はほとんどないといっても過言ではありません。(反対に筑波大駒場は問題数がかなり多い上に試験時間が短いので、作業力も大きく問われます。)
   ここからわかることは、開成高校は試験時間の中でしっかりと考えて自分で論理を組み立てられる人間が欲しい、というメッセージを入試問題を通して発信しているように思われます。表面的なテクニックを排し、文章の本質的な理解に基づいて解答を組み立てるという能力をしっかりと鍛えていかなくてはならないのです。

・開成大問1の対策①~「ヨコ」のつながり

 <形式>
  慶應義塾女子高校 
  → 特に大問3。2行記述の問題はいい練習になる。
 <内容>
    東大寺学園高校
  →内容の重さ、全体バランスも含めて力をつけるには最適。
 <その他>
  国公立大学(特に東北大や名古屋大など)の過去問
  →高校入試では破格のレベルの問題なので大学入試の問題も扱うべき。

 この項目は主に指導者向けです。私がたまたま横断的に受験対策を担当していたからかもしれませんが、「進学校(高校)」に「入れる」だけではなく、「その先の大学受験」に向けてのことも多少は触れるべきであると思います。その意味では、日比谷や横浜翠嵐など各地域のトップ校を目指す受験生を指導する場合も同様であると思われます。

・開成大問1の対策②~「タテ」のつながり

 開成高校の問題は前述のとおり現代社会について深く掘り下げる文章が多いので、それらを理解するためにこれまでの社会がどのような来歴をたどったかを知っておくことが非常に大事になります。
 実際私が昨年まで担当していた開成高校の対策講座のテキストは前近代からポストモダンへの思想の流れにそって文章の選定がなされており、そこから現代社会をとらえる、というカリキュラムでした。
 よって、指導者としてこれらのことを理解したうえで国語の授業に臨むことが求められます。その意味では、開成の対策をするためには世間一般で求められる国語講師としての力とも、また、早慶附属高校の対策をする講師に求められる力とも全く異なるレベルのものであると思っております
 では、何を使ってそれらを勉強すればいいのか。受験生でも手に入るもの(つまり、指導者が生徒にも勧められるもの)として以下の2つを挙げさせていただきます。

  ① 高校の倫理の教科書(又は参考書)

  ② 小論文を学ぶ

 この参考書の内容が頭の中に入っていることが最低限ですね、指導者としては。

 開成高校の大問1は東大を意識しているがゆえに、指導する人間も大学受験のことも意識しつつ対策を練らなくてはならないのです。

 ご購入ありがとうございました。次回は大問2を予定しております。

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武川 晋也
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