2022入試 問題研究① 名古屋大学の現代文
◇はじめに
入試問題研究シリーズは、諸々の事情で中途半端な感じになっているが、とりあえずゆるりと続けていく。今年こそ全国の国公立の問題の分析を載せようと思っているが、すでに4か月半経過している。やれるだけやってみるよ〜♪(by セロリ)の精神で頑張る。
基本的には個人的「研究日」における活動のまとめ的なものとしてnoteで共有していこうとおもう。ほぼ週刊ぐらいのペースで。
◇名古屋大学の国語
名古屋大学は旧帝大では東大・京大に並んで理系の一部の学部に国語が課されている大学である。
文系が数学を解くのがスタンダードな旧帝大において、理系も国語を課すべきだろうと個人的には考えているので、非常に好感の持てる大学である。
◇2022年の出典
〇 著者と作品
村上康彦 『交わらないリズム』
〇 文章の論理展開
引用を除き、文章は16の形式段落に分かれている。
論のまとまりで考えると3つに分けられる。論のまとまりを考えることは特に国公立の現代文においては最重要な作業であると言える。
◇ 設問の解答解説ならびに所感
問一 漢字問題
【所感】
名古屋大学恒例、読みは「カタカナ」指定。
正直、子供だまし感はあるが、こういうくだらない問題条件に受験生が引っかかるのもまた事実。だから、意味はあると思っている。
「g 形骸」だけやや難?他は取れなきゃダメ。
問二 接続語問題
【所感】
接続語ではあるが接続詞ではなく副詞についての空欄補充。
この形式は2018年以来の出題。まだ出るのか。
標準的。全部取りましょう。
問三 換言問題(50字×2)
【解説】
<設問分析>
居場所がクローズアップされる「背景」を答えるので、「居場所がどのように作られたか」を答えるのではない。
予備校解答速報のいくつかはそこを取り違えている気がする。そして、これは受験生もやりがちなので要注意。
<根拠の取り方>
先述の論のまとまり⑴の②段落と③段落をそれぞれまとめる。
②段落は「困難」なので、どのような困難(=弱い立場の人の生きていく上での困難)がなぜ生じたか(=競争社会における排除の正当化)、をまとめればよい。
③段落は「自発性」である。ややまとめにくいが、「社会的弱者が地域社会で生きていけるようにする」ための運動が自発的に起こったのだ。
<解答要素の確認>
<大学側の意見>
問四 換言問題(抜き出し+100字)
【解説】
<設問分析>
⑴の無為と遊びの繋がりを考える問題。答えの中に「繋がり」を示す言葉を入れることが必要となる。
<根拠の取り方>
先述の「繋がり」については、⑫段落で「遊びは居場所という社会からの退却を前提とする」とあるので、これを採用した。
つまり、「居場所の存在が前提となって遊びが出来るようになる」という文を作ればよいのである。
根拠は論のまとまり⑵の⑤〜⑫から考える。論のまとまりが分かっていると解答根拠を探す範囲が確定するというこの上ないメリットがある。
まずは居場所。こちらは⑤〜⑧段落の内容から「無為であることを許してくれる空間である」ことが挙げられる。つまり、なにか目的を持つことをしなくてもそこに居ることを許してくれる、のだ。
ついで遊び。先述のように、居場所があって遊びがある。では遊びとはどういうものか。
これは、⑪段落に「遊びは社会の中に目的を持たない。遊び自体が遊びの目的である」とあり、ここが使える。
あとは、字数に合わせて要素を組み合わせるのである。
<要素の確認>
問五 換言問題(100字)
<設問分析>
居場所の時間の特徴の換言問題。これを傍線部の「二つの時間」を踏まえて考えるもの。
よって、二つの時間を考えて、居場所の時間が何なのか、そして二つの時間の関係性はどのようなものかを考えるというのが大まかな方針。
<根拠の取り方>
ここは、論のまとまりの⑶から考える。
そもそも二つの時間とは「内に織り込まれる時間」と「外に繰り広げられる時間」である。
それぞれの内容も大事だが、まずは「居場所の時間」について考える。こちらは⑬〜⑭段落にある通り、「円環時間」つまり、「内に織り込まれる時間」である。よって、居場所の時間の説明は「内に織り込まれる時間」の特徴となる。
そして、これと「外に繰り広げられる時間」との関係だが、これは⑭段落の傍線部直後の「つまり」において「居場所が繰り広げる連続性」とある。これだけだと何のことかはわからないが、⑯段落を押さえよう。
「外に繰り広げられる時間」があり、そこでの忙殺ぶりや緊張感から解放されるものとして「内に織り込まれる時間」、つまり、居場所の時間があるのだ。これで大まかな方向性は出来た。
あとはそれぞれの時間の内容を考える
これらの要素をまとめると模範解答になる。
<解答要素の確認>
問六 換言問題(選択肢)
【所感】
2020年以来の選択肢問題。基本的に名古屋大学の選択肢問題はそこまで難しくない。今回は全体のまとめであるが、上記論理展開の⑵に相当するのがアである。
◇全体的な感想
〇 分量について
例年並み。昨年よりは記述分量は少ないが、毎年だいたい300字程度。
理系諸君も記述練習は必須。しかるべきタイミングで過去問を解こう。
〇 出題傾向について
単年だけでは読みづらい。接続語問題なのか、適語補充なのか、選択肢はあるのか……など、複数年単位で過去問を解いてその中で何が出ても問題ないように準備することが大事。
つまり、「隔年傾向」などというテキトーな分析に騙されないで、何が出ても対処可能な自分を作るようにすること。
全体的には良い問題ばかりだと思う。試験の弁別性に優れていますね。
それでは。
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