孤独な執筆活動を互いに励まし合う仲間たち
三三歳の春、都内にある作家の養成学校に入学した。いわゆる小説教室というものだ。地方に暮らしているので、普段は現地の教室へ通うことはない。オンライン会議用のツールを使い、リモートで、リアルタイムに授業を受けることができる。
それでもたまに教室へ足を運ぶこともあり、その機会で唯一クラスメイトとの交流があった。一年目のクラスは皆、人見知りの傾向が強かったのか、解散間際になって初めて仲間同士で食事をすることに。私も参加した。今ではバラバラの講師につき執筆をしているが、時折集まって近況を話し合う仲だ。
小説の執筆というのは孤独の作業である。自分の頭の中の世界を、自分で文章にしていく。基本的にひとりの力で完結していかなければならない。そんな表現世界に同じ道を志す「仲間」が必要か。個人的には「あってよかった」と思っている。
いくら締め切りのある公募に向けて作品を書いているとはいえ、自分の意思決定だけで行う作業だ。そんな締め切りは絶対でないし、先延ばしし放題。私のような怠惰な人間は、サボろうと思えばいくらでもサボることができる。
が、傍に同じ夢を追いかける仲間の存在がいればどうだろう。おちおちしていたら先に結果を出されてしまうと焦りもするし、彼らが自分とは違う感性、文体、視点を持っていると知れば知るほど、むしろ自分自身の感覚も刺激されていく。そんな気がしている。
取り組んでいる作品のことに限らない。日頃は誰もがそれぞれの場で生活している。同じ職場でもなく、まったく別の家庭環境にあり、学んできたことも違う。そこで各々見て来たものを共有するのも意味がある。
自分の経験だけでは得られないものを、たくさん見せてくれる、本当に貴重な存在、関係となった。
大人になってから新しく親しい人間関係を築くこと自体、自ら一歩を踏み出さない限り、もう滅多にないことだろう。三〇歳を過ぎて、一度は諦めた作家への道を、再び歩み出そうと思わなければ、この出会いはなかったのだ。
たまたま同じタイミングで、新たに学びや気づきを得ようとした者同士の縁。互いを励ましつつ、自分の原稿に真摯に向き合い続けていければいい。
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