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映画分析ノック㉑『羊たちの沈黙』(1991)

映画『羊たちの沈黙』ログライン

第1幕「優秀なFBI・クラリス/捜査中の連続殺人事件/レクター博士との接見」(状況設定)

①:バージニア州の森林。スウェットで走る女性・クラリス。障害物を超えていく訓練のようだ。そこへ同僚がきて、クロフォード(主任捜査官)が呼んでいると伝言。同僚のキャップには「FBI」の文字。
②:FBI訓練所。行動科学課に赴く女性・クラリス。施設、エレベーターの中は男ばかり。クラリス、クロフォードの研究室に到着。そこには女性の生皮を剥ぐ連続殺人犯バッファロー・ビルの新聞記事の切り抜きが多数。【Hook】
③:そこへクロフォード。クラリスは成績優秀な研修生。元々クロフォードのゼミの生徒で評価はA-。研修後はクロフォードの行動科学課で働きたいと語られる。クロフォードはクラリスに、収監されている連続殺人犯・ハンニバルレクターへのインタビューを命じられる。連続殺人犯の心理を研究することで、今の連続殺人事件(バッファロー・ビル)の解決の手がかりにしたいのだ。
④:ボルティモアの州立精神病棟(牢獄)。院長・チルトンに会うクラリス(美人のクラリスを誘う担当医、断るクラリス)。チルトンはレクターが異常者の危険人物であることを語る。舌を噛み切られた人がいる、など。面会案内にも、ガラスに近づくなと念押しされる。
⑤:レクターとの面会。クラリスの利口さを買い協力する気になったレクター、鋭い嗅覚と洞察力でクラリスの家庭のことを言い当てる。レクターから、自分の元患者であるミス・モフェットを捜せと言われたクラリス、牢獄を後にする。【Triger】
⑥:車に戻ったクラリスは泣いていた。レクターから家族のことを言われ、トラウマがフラッシュバック(幼少期のクラリスと父の幸福な日常)。
⑦:FBI訓練所。レクターについて調べるクラリス。そこにクロフォードから電話が。クラリス、レクターが言っていた「へスター・モフェット」について調査したところ、貸し倉庫を見つけたと話す。
⑧:貸し倉庫。「へスター・モフェット」が10年間、前払いで借りたまま手付かずになっている倉庫だという。中に入るクラリス、瓶に入った首を見つける。
⑨:精神病棟(牢獄)。綴りのトリックで倉庫はレクターが借りていたと分かる。レクターはこの牢獄を出て自然豊かな場所に行きたいと希望を語る。院長・チルトンからも離れたいと。クラリスはレクターに生首の正体を尋ねると、元患者で別の誰かに殺された人だと話す。彼は変身願望のある犯人の実験台にされたのだ、と。その犯人には女装癖がある?答えないレクター。しかし、バッファロー・ビルのことを心理学の面から分析可能だと言い、捜査に協力すると言う。「すでにビルは次の獲物を狙っている…」。
⑩:若い女性が運転する車。その車がアパートに到着するのを暗視ゴーグルで見ている男。降車した女を騙し、頭を殴ってトラックに積み込み、誘拐。服のサイズが14だと知り、喜んで服を剥ぎ肌を触る。【PP/TP①】

第2幕「新たな犯行/レクター脱走/真相究明」(葛藤・対立)

⑪:FBI訓練所。訓練中のクラリスに「新たな女性の遺体が見つかった」という一報が。ビルの仕業だ。現場に向かうヘリの中、クロフォードからビルの手口を聞かされるクラリス。監禁後、3日間生かして射殺。その後、皮を剥いで川に捨てる。
⑫:被害者の家。女性だという理由で込み入った捜査に入れないクラリス。奥の部屋では葬儀が行われている。その葬儀を見てフラッシュバック(幼少期のクラリスと父の死)。
⑬:遺体の検死。酷い有様。女性の背中に二つの大きな切り傷があり、爪が剥がされ、喉には虫の繭が詰められていた(瓶に入れて持ち帰る)。手首に紐の後、足首にはなし…など遺体の状況を報告するクラリス。
⑭:昆虫学者の研究室。学者2人組に虫の繭を調べてもらうクラリス。遺体の背中の傷と同じように解剖してゆく学者。蛾の一種であることが判明。アジアの蛾であることから、輸入して卵から育てたと推測される。暖かいところで……
⑮:ビルの家。昆虫を飼育している。女装のための服がある部屋。全裸で何かを縫っているビルの背中。家の奥には井戸があり、その底から女性の「助けて!」という声。
⑯:FBI訓練所。TVで上院議員の娘が行方不明だというニュースがやっている。どうやらビルに誘拐された彼女は政治家の娘のようだ。上院議員である彼女の母親が犯人に呼びかける映像。それを見たクラリス。
⑰:精神病棟(牢獄)。クラリスはレクターに捜査協力に応じてくれた場合、被害者の母親の上院議員の権限で、レクターを森の見える別の病棟に移送させることが可能だと知らせる。レクターは協力する代わりに君の情報を教えろと言う。クラリスに過去のトラウマについて質問するレクター。クラリスが答えると、レクターも犯人の心理分析について語る。それが交互に続く。
クラリス
・クラリスのトラウマは警官だった父の死。母は幼い頃に亡くなっていたため、父だけが家族だったこと。
・孤児となったクラリスは母の従兄弟の家に引き取られたが、2週間で逃げ出してしまったこと。
レクター
・蛾の繭は変身の象徴であり、ビルには変身願望があるのではないか。
・幼少期に虐待を受け自分を好きになれず、性転換手術を希望したが病院から断られたのではないか。
⑱:盗聴していた精神病棟の院長・チルトンは、レクターにクラリスからの病棟移送の話は嘘だと言う。代わりに自分が上院議員の母親とコンタクトをとって、もしレクターが彼女に”ビルの本名”を話せば、田舎の病棟に移送させてやると言う。レクターはペンを見つめている。【Mid Point】
⑲:移送されるレクター。上院議員と面会。レクターはビルについて語り出す。彼は昔の患者であり、本名は「ルイス・フレンド」。彼は同性愛者。ルイスと付き合っていたラスペールという男は、ルイスが人を殺して人の皮で何かしているのを見て恐ろしくなったようだ。ルイスの特徴(身長・体重・年齢)も話すレクター。教えた代わりに上院議員に嫌な質問をする「娘さんが死んだらどこで痛みを感じる?」。
⑳:囲み取材を受ける院長・チルトン。レクターを上院議員に合わせて捜査協力させたのは、自分の功績だと語る。その横をクラリスが通り、検閲を通過し、レクターが置かれている場所まで向かう。
㉑:広い部屋の真ん中に鉄檻。その中に入れられたレクターとの接見。クラリスは移送の嘘を認める。「ルイス・フレンド」は綴りを変えると「まがいもの」。再び、交互に質問し合うレクターとクラリス。
クラリス
・母の従兄弟の牧場を逃げ出したのは、早朝に子羊の鳴き声を聞いたから
・子羊が小屋で屠殺されていた現場を目撃して、逃げ出した
レクター
・ビルの資料を見て深層心理を考えれば、自ずと答えは出てくる
・ビルの本名は言わず終い(チルトンだ、とふざけてみせる=チルトンを恨んでいる)
クラリスはレクターから資料を返却される。その時、一瞬だけ指と指が触れる。
㉒:鉄檻。レクターに晩飯を運んでくる警官2名。レクターは口の中に仕込んだかぎ針で手錠を解除し、警官2人を殺して脱走(一人は顔を無惨に噛みちぎる)。
㉓:エレベーターの階数で異常を察知したロビーの警官たち。上から銃声が聞こえ、レクターの鉄檻に向かうと、警官1名の遺体が鉄檻に飾られており、床で警官1名が倒れていた。床の警官は血まみれだが微かに息があり、救急隊を呼ぶことに。
㉔:エレベーター。瀕死の警官1名を担架で運ぶ警官たち。と、天井のハッチから血がポタポタと垂れてくる。担架を運び終えたあと、ハッチを調べるとレクターらしき人物が倒れている。ハッチを開けると、死体がぶらり。
㉕:救急車。瀕死の警官1名を運んでいる。と、それは覆面を被ったレクターだった。気づけば救急隊員の背後に立っているレクター。【Low Point】
㉖:クラリス、女性警官からレクター脱走の経緯を聞かされる。レクターの言った「資料の中に答えがある」という言葉に悩むクラリス。/(インサート)ビルの家。人の皮をミシンで縫い付けているビル。/クラリスと女性警官、資料の中にレクターからの助言を見つける。遺体発見現場の地図には何か規則があるらしい。最初に殺されたが、重りのせいで川に流されず3番目の発見となった被害者女性に着目。
㉗:オハイオ州。女性の自宅・部屋を捜索するクラリス。と、オルゴールの中に裸の被害者の写真。クローゼットに羽型の縫い目を見つける。被害者女性は裁縫が趣味なのだ。それを見たクラリスは、ビルは女性の皮膚でドレスを作ろうとしているのだと気付く。太った女性を飢えさせ、皮膚の余ったところを使うのだ。
㉘:クラリスは電話でクロフォードに報告。その時、クロフォードは犯人を突き止め、ヘリでシカゴ郊外の犯人宅に向かっていた(医療センターでカルテを調べ、税関で蛾の幼虫の検疫記録から「ジェミー・ガム」と特定)。クラリスも現場へ向かおうとするが、誘拐ではなく殺人で逮捕できるよう、そこで証拠を探せと命じられる。【PP/TP②】

第3幕「事件解決へ/犯人との直接対決」(結末)

㉙:ビルの家。爆音で化粧をして踊っているビル。井戸では犬を誘き寄せようと企てる若い女性。上手くいかず……。踊るビル、その狂気。
㉚:オハイオの街。被害者女性の友人に聞き込みをするクラリス。彼女は裁縫に夢中で「リップマン夫人」という人の直しを手伝っていたと語る。クラリス、「リップマン夫人」の住所を聞き出す。
㉛:ビルの家(=「リップマン夫人」を匂わせる)。飼育している繭を掴むと、蛾になりつつある。と、そこに犬の鳴き声。誘拐された若い女性が犬を井戸の下に誘き寄せ、人質に取っていた。怒り狂うビル、銃を手にしたその時、家の呼び鈴が鳴る。/家の呼び鈴を鳴らすクロフォードたち。/ビルが扉を開けると、そこにいたのはクラリス。/クロフォード、突入するが誰もいない。(カットバック)【Lowest Point】
㉜:ビルの家。クラリスは男(ビル)に聞き込み。家の中に招かれる。会話中に裁縫の糸に蛾が止まり、男がビルだと確信。クラリスは拳銃に手を掛ける。男の台所にも拳銃が。
㉝:クラリス、隙をついて拳銃を突きつける!と、ビルも拳銃を手に取り、地下に逃げる。追いかけて地下室へと行くクラリス。遠くから助けを呼ぶ女性の声。裁縫のマネキン。ビルを追って昆虫飼育の暗い部屋に辿り着くクラリス。と、停電で真っ暗に。相手は暗視ゴーグル。クラリスは恐怖で震えるが、ビルが銃口を構えた音に反応して、銃を打つ。ビルを射殺する。【High Point】
※カタルシス

㉞:FBI表彰式。ビル事件解決の手柄を表彰されているクラリス。そのパーティーの最中、電話がかかってくる。相手はレクターだった。「子羊の鳴き声は止んだかい?」と。
㉟:レクターは飛行場にいた。飛行機を降りてきた院長・チルトンを遠くから見ている。「これから古い友人を夕食に…」と言い残して電話を切る。レクター、そのままチルトンの背後をゆっくり追いかける。


映画『羊たちの沈黙』分析


■主人公は誰で、どこから登場しているか

主人公は、FBI実習生のクラリス・スターリング(女性)。

冒頭、クラリスが森の中をランニングするシーンから登場。
タフな身のこなしで障害物を越えてゆく。
そこへ同僚から伝言、彼のキャップから「FBI」だと分かる。
(※ランニングシーンには、作品全編を象徴するかのような不気味な音楽が重なる)

■二番目の人物は誰で、どこで登場しているか

レクター博士(ハンニバル・レクター)。
第1幕⑤(12分地点)、精神病棟(監獄)でクラリスとレクターが初めて接見するシーンで登場。

レクターと面会する前に、主人公・クラリスは上司や病棟職員からレクターがどれほど異常者・危険人物か聞かされている。
その情報がある上で牢獄の一番奥まで進んでいく。レクターの前にヤバそうな囚人を3人通過。これ以上にヤバいのか!?
と、そこに静かに佇んでいるレクター博士、不気味さが際立つ!

他にもキャラが分かる描写
・隣の牢獄の多重人格者を、精神的に詰めて自殺に追い込む。
・クラリスが怪我をしていることを「血の匂い」で嗅ぎつける。

■主人公の物語が本格的に始まるのはどこか。それはどんな物語か

物語が本格的に始まるのは……
第1幕⑩(32分地点):連続殺人犯・ビルが新たに若い女性を誘拐するシーン。

どんな物語か……
【FBI実習生のクラリスが、猟奇殺人犯の囚人・レクター博士に助言を貰いながら、連続殺人犯・ビルを追跡する物語】


■物語が大きく転換しているのはどこか

物語の転換点は、レクター博士の脱走/犯人の手がかりが判明した一連のシーン。
(第2幕㉒〜㉗、レクター脱走のパニックの後、クラリスは助言を元に真相に辿り着く)

■クライマックスはどこか

クライマックスは、ビルの家でクラリスとビルの銃撃戦が繰り広げられるシーン(第3幕㉜㉝)。

・今まで手がかりとして追ってきたヒントの数々(裁縫、ドレス、肌、蛾)が、ビルの家から見つかる。
・ビルが若い女性を連れ去る時に装着していた暗視ゴーグルが最終兵器として登場する。
👉クライマックスには、物語の総ざらいとしての役割がある!
(今まで出てきたものをクライマックスでもう一度出すと、伏線回収のような気持ち良さがある)

■主人公が困ること、苦しむことはどこでどんなふうに起こっているか

・FBIの中で女性は珍しく、仕事の文脈であるはずなのに男性から誘われたりする
・異常者である猟奇殺人犯レクター博士への接見を命じられる
・レクターから助言を引き出すためには、交換条件として自分のトラウマを語らなくてはならない
・レクターについた嘘が本人にバレてしまう
・レクターの助言の意味を理解できない
・真っ暗な部屋で、犯人と一騎討ちになってしまう

■逆にホッとするようなことや主人公が喜ぶことはどこで起こっているか

・FBIの中で成績が優秀だと評価されている
・レクターが自分に助言を出すことを認めてくれる
・犯人の居場所を突き止めることに成功
・犯人を無事に射殺し、人質を保護することができる
・FBIに表彰される

■起承転結に分けるならどこまでが起でどこまでが承か

起「優秀なFBI・クラリス/捜査中の連続殺人事件/レクター博士との接見」(状況設定)
①:バージニア州の森林。スウェットで走る女性・クラリス。障害物を超えていく訓練のようだ。そこへ同僚がきて、クロフォード(主任捜査官)が呼んでいると伝言。同僚のキャップには「FBI」の文字。
②:FBI訓練所。行動科学課に赴く女性・クラリス。施設、エレベーターの中は男ばかり。クラリス、クロフォードの研究室に到着。そこには女性の生皮を剥ぐ連続殺人犯バッファロー・ビルの新聞記事の切り抜きが多数。【Hook】

⑨:精神病棟(牢獄)。綴りのトリックで倉庫はレクターが借りていたと分かる。クラリスはレクターに生首の正体を尋ねると、元患者で別の誰かに殺された人だと話す。彼は変身願望のある犯人の実験台にされたのだ、と。その犯人には女装癖がある?答えないレクター。しかし、バッファロー・ビルのことを心理学の面から分析可能だと言い、捜査に協力すると言う。「すでにビルは次の獲物を狙っている…」。
⑩:若い女性が運転する車。その車がアパートに到着するのを暗視ゴーグルで見ている男。降車した女を騙し、頭を殴ってトラックに積み込み、誘拐。服のサイズが14だと知り、喜んで服を剥ぎ肌を触る。【PP/TP①】

承「新たな犯行/レクター脱走」(葛藤・対立)
⑪:FBI訓練所。訓練中のクラリスに「新たな女性の遺体が見つかった」という一報が。ビルの仕業だ。現場に向かうヘリの中、クロフォードからビルの手口を聞かされるクラリス。監禁後、3日間生かして射殺。その後、皮を剥いで川に捨てる。

㉑:広い部屋の真ん中に鉄檻。その中に入れられたレクターとの接見。クラリスは移送の嘘を認める。「ルイス・フレンド」は綴りを変えると「まがいもの」。再び、交互に質問し合うレクターとクラリス。
クラリス
・母の従兄弟の牧場を逃げ出したのは、早朝に子羊の鳴き声を聞いたから
・子羊が小屋で屠殺されていた現場を目撃して、逃げ出した
レクター
・ビルの資料を見て深層心理を考えれば、自ずと答えは出てくる
・ビルの本名は言わず終い(チルトンだ、とふざけてみせる=チルトンを恨んでいる)
クラリスはレクターから資料を返却される。その時、一瞬だけ指と指が触れる。

転「レクター脱走/事件の真相へ急接近」
㉒:鉄檻。レクターに晩飯を運んでくる警官2名。レクターは口の中に仕込んだかぎ針で手錠を解除し、警官2人を殺して脱走(一人は顔を無惨に噛みちぎる)。

㉘:クラリスは電話でクロフォードに報告。その時、クロフォードは犯人を突き止め、ヘリでシカゴ郊外の犯人宅に向かっていた(医療センターでカルテを調べ、税関で蛾の幼虫の検疫記録から「ジェミー・ガム」と特定)。クラリスも現場へ向かおうとするが、誘拐ではなく殺人で逮捕できるよう、そこで証拠を探せと命じられる。【PP/TP②】

結「犯人との直接対決/事件解決」(結末)
㉙:ビルの家。爆音で化粧をして踊っているビル。井戸では犬を誘き寄せようと企てる若い女性。上手くいかず……。踊るビル、その狂気。
㉚:オハイオの街。被害者女性の友人に聞き込みをするクラリス。彼女は裁縫に夢中で「リップマン夫人」という人の直しを手伝っていたと語る。クラリス、「リップマン夫人」の住所を聞き出す。

㉟:レクターは飛行場にいた。飛行機を降りてきた院長・チルトンを遠くから見ている。「これから古い友人を夕食に…」と言い残して電話を切る。レクター、そのままチルトンの背後をゆっくり追いかける。

■三幕だとするとどこが分かれ目か

第1幕「優秀なFBI・クラリス/捜査中の連続殺人事件/レクター博士との接見」(状況設定)
①:バージニア州の森林。スウェットで走る女性・クラリス。障害物を超えていく訓練のようだ。そこへ同僚がきて、クロフォード(主任捜査官)が呼んでいると伝言。同僚のキャップには「FBI」の文字。
②:FBI訓練所。行動科学課に赴く女性・クラリス。施設、エレベーターの中は男ばかり。クラリス、クロフォードの研究室に到着。そこには女性の生皮を剥ぐ連続殺人犯バッファロー・ビルの新聞記事の切り抜きが多数。【Hook】

⑨:精神病棟(牢獄)。綴りのトリックで倉庫はレクターが借りていたと分かる。クラリスはレクターに生首の正体を尋ねると、元患者で別の誰かに殺された人だと話す。彼は変身願望のある犯人の実験台にされたのだ、と。その犯人には女装癖がある?答えないレクター。しかし、バッファロー・ビルのことを心理学の面から分析可能だと言い、捜査に協力すると言う。「すでにビルは次の獲物を狙っている…」。
⑩:若い女性が運転する車。その車がアパートに到着するのを暗視ゴーグルで見ている男。降車した女を騙し、頭を殴ってトラックに積み込み、誘拐。服のサイズが14だと知り、喜んで服を剥ぎ肌を触る。【PP/TP①】

第2幕「新たな犯行/レクター脱走/真相究明」(葛藤・対立)

⑪:FBI訓練所。訓練中のクラリスに「新たな女性の遺体が見つかった」という一報が。ビルの仕業だ。現場に向かうヘリの中、クロフォードからビルの手口を聞かされるクラリス。監禁後、3日間生かして射殺。その後、皮を剥いで川に捨てる。

㉗:オハイオ州。女性の自宅・部屋を捜索するクラリス。と、オルゴールの中に裸の被害者の写真。クローゼットに羽型の縫い目を見つける。被害者女性は裁縫が趣味なのだ。それを見たクラリスは、ビルは女性の皮膚でドレスを作ろうとしているのだと気付く。太った女性を飢えさせ、皮膚の余ったところを使うのだ。
㉘:クラリスは電話でクロフォードに報告。その時、クロフォードは犯人を突き止め、ヘリでシカゴ郊外の犯人宅に向かっていた(医療センターでカルテを調べ、税関で蛾の幼虫の検疫記録から「ジェミー・ガム」と特定)。クラリスも現場へ向かおうとするが、誘拐ではなく殺人で逮捕できるよう、そこで証拠を探せと命じられる。【PP/TP②】

第3幕「事件解決へ/犯人との直接対決」(結末)
㉙:ビルの家。爆音で化粧をして踊っているビル。井戸では犬を誘き寄せようと企てる若い女性。上手くいかず……。踊るビル、その狂気。
㉚:オハイオの街。被害者女性の友人に聞き込みをするクラリス。彼女は裁縫に夢中で「リップマン夫人」という人の直しを手伝っていたと語る。クラリス、「リップマン夫人」の住所を聞き出す。

㉞:FBI表彰式。ビル事件解決の手柄を表彰されているクラリス。そのパーティーの最中、電話がかかってくる。相手はレクターだった。「子羊の鳴き声は止んだかい?」と。
㉟:レクターは飛行場にいた。飛行機を降りてきた院長・チルトンを遠くから見ている。「これから古い友人を夕食に…」と言い残して電話を切る。レクター、そのままチルトンの背後をゆっくり追いかける。

■このストーリーを3行で言うとどうなるか

FBI実習生・クラリスは、猟奇殺人犯・レクター博士から連続殺人事件の犯人を逮捕するための助言を聞き出す任務を任される。
自分の過去のトラウマを話す代わりに、レクターから殺人犯の心理を学び、真相に近づいていくクラリス。
レクターの助言から連続殺人事件を解決することができたクラリスは、過去のトラウマから解放された(のだろうか)。

■このストーリーを15項目くらいの箇条書きにするとどうなるか



映画『羊たちの沈黙』学びポイント


■構成/ストーリー


連続殺人犯・ビルの家の場所

まず、犯人の家は基本的に地下室のみを映し、それがどこにあるか分からないまま、物語が進んでいく。
それが終盤に、意外と登場人物たちのすぐ近くにあったことが分かる。
💡地下室や蔵などを「どこにあるか分からない状態」で進めておき、あとで種明かし(近くにあった)とすると面白い!
(NHK大河『鎌倉殿の13人』第1話、源頼朝(大泉洋)がいる謎の部屋は、中盤で北条義時(小栗旬)の住む家の蔵だと分かる!)


犯人に繋がるフェイント

クロフォードらFBIのベテランたちが目をつけた家は、実はもぬけの空。
クラリスが聞き込み調査で辿り着いた家が、ビルの家だった。
💡犯人逮捕の本筋を匂わせておいて、実は別筋(さりげないこと)が犯人に繋がる!
 (これは前述の地下室がどこにあるか分からない構成だから出来るフェイント)


誰かが逃げ出す時の「なりすまし」トリック

レクターは自分が殺した警官になりすまし、警官服を着て血を浴び倒れる。
それを瀕死の警官だと思った救護隊は、彼を担架で運び出す。
が、エレベーターの天井にレクターの服を着せられた警官が死んでいた。
レクターは救急車の中で、自由に身になった。
💡加害者が被害者(負傷者)になりすまして逃げるというトリックのお手本
(映画「デーヴ」でも、大統領と入れ替わったソックリさんが元に戻る時に、倒れた大統領を運ぶ救急隊員に変装して脱出に成功)


この物語の企画は「レクターの助言とクラリスのトラウマが交換条件になる」という部分。

接見のシーンは4回、うち、企画となるシーンは2.5回。
第1幕⑤:レクター、クラリスの両親(父)について推察する。クラリスのトラウマがフラッシュバック。(0.5)
第1幕⑨:レクター、犯人を資料から精神分析できると話す(0)
第2幕⑰:レクター、交換条件を提示。クラリスのトラウマを語らせる。父が死んで母の従兄弟の牧場に住んだが逃げ出した(1)
第2幕㉑:レクター、移送先の鉄檻。クラリス、牧場から逃げたのは仔羊を屠殺している現場を目撃したからだと話す(1)
💡平均的に物語の「企画」の部分はメイン3回ほどあれば良い。
 たっぷりと3回描けば、その話の中核をなす要素となりうる。


クラリスの過去の描写方法

→物語が進むに連れて、随所で出会う人・物を起点にフラッシュバックする構成
①レクターに父の話を推察され、帰り道に車を見てフラッシュバック(車から降りる幸せそうな父と娘)
②犠牲者の葬式で棺桶を見てフラッシュバック(棺桶に入る父、悲しむ娘)
③レクターとの会話の中で回想(父の死と牧場に引き取られたが逃げ出したこと)
④レクターとの会話の中で回想(仔羊の屠殺現場を見て逃げ出したが捕まったこと)
💡過去を細切れに伝えていく方が奥行きが出る→連ドラも基本このやり方
(≠一度に回想で説明する/一度に語りで過去をベラベラと話す)


連続殺人事件を題材にする場合…

第1幕(セットアップ)で、既に起きてる事件を観客に周知しておき、
第2幕(本編の始まり)は、そんな殺人犯の「新たな犯行」もしくは「新たな遺体発見」で幕開けする!
💡初めてリアルタイムで犯行に遭遇することで、物語の始まり感を演出/臨場感が増す。
 本作では「新たな犯行(誘拐)」「新たな遺体発見」両方を第2幕の始めでやっている。


言葉のアナグラム的なトリック

序盤でレクターが会いにいけと言った「へスター・モフェット」
  →これは綴りを並び替えると「ザ・レスト・オブ・ミー(私の残り)」
  →つまり倉庫を借りていたのは、レクター本人だと分かる。
中盤でレクターが議員に伝えた犯人の名前「ルイス・フレンド」
  →これも綴りを並び替えると「まがいもの」の意味になる。
💡最初にどうでも良いタイミングでアナグラムを出しておいて、それを後半の重要なシーンでも再利用することで面白くなる。



■シーン


異常者・レクターの登場シーン
レクターと面会する前に、主人公・クラリスは上司や病棟職員からレクターがどれほど異常者・危険人物か聞かされている。
その情報がある上で牢獄の一番奥まで進んでいく。レクターの前にヤバそうな囚人を3人通過。これ以上にヤバいのか!?
と、そこに静かに佇んでいるレクター博士、不気味さが際立つ!


エレベーターの数字

鉄檻から脱走したレクター。
ロビーで待機している警官たちは、エレベーターが停まるはずのない階に停まったことで異変に気付く。
上の階から大きな銃声。その後、エレベーターが下に降りてくる「5F・4F・3F・2F……」、
→エレベーターの階数の表示だけで、緊迫感・脅威の接近が伝わる。


カットバックの呼び鈴フェイント

・ビルの家で人質とビルの緊迫した駆け引き
・ビルの家に向かうクロフォードたち
・リップマン夫人の家に向かうクラリス
・ビルの家と思しき家の呼び鈴を鳴らすクロフォードたち
・ビルの家の呼び鈴が鳴る、ビルうるさいなと出ようとする
・ビルが開けるとクラリス(ここでビル=リップマン夫人だと判明)
・クロフォードたちが突入した家は空き家(フェイント)
💡呼び鈴を鳴らしたら、出るはずの人とは別の人が出る(違う家だった、違う部屋だった)フェイントのお手本
 カットバックで順当な構成に見せることで、よりフェイントが出来る


■キャラクター

ー主要人物ー
クラリス(主人公):FBI実習生
レクター(副主人公):猟奇的殺人犯・元精神科医
クロフォード    :FBI行動科学課のリーダー、クラリスの上司
バッファロー・ビル :巷を騒がせている連続殺人犯
チルトン      :精神病棟の院長
キャサリン     :ビルに誘拐される上院議員の娘

ーサブキャラー
アーディリア    :クラリスのクラスメイト
バーニー      :精神病棟のレクターの担当看護師
被害者の女性たち
警官たち
クラリスの父


■小道具

ペン
序盤で院長から「ペン」も渡してはならない、と忠告される。
中盤でチルトンか誰かの「ペン」を見つめているレクター。
終盤でその「ペン」を使って手錠を開けて脱走するレクター。

暗視ゴーグル
序盤、ビルが犯行時(誘拐時)に使用していた暗視ゴーグルを、
終盤、ビルは一騎討ちでも部屋を暗くして暗視ゴーグルを使う。

FBIのキャップ
冒頭、クラリスに話しかけた同僚のキャップに「FBI」の文字
→クラリスはFBIの人間で、今のはトレーニングだと分かる。

繭・蛾
「繭から蛾へ」=変身の象徴であり、変身願望が歪んだ形。
犯人の犯行動機を象徴するアイテムとなっている。


■セリフ

未記入


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