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【和訳転載】「蔑みと辱めがともなうアジアでの性的加害行為」|新嘉坡ストレーツタイムズ (2017.11.26)

Violated and shamed: Sexual misconduct in Asia

蔑みと辱めがともなうアジアでの性的加害行為

2017.11.26

ストレーツタイムズ

Violated and shamed: Sexual misconduct in Asia | The Straits Times


米国や欧州でセクハラを訴える声が相次ぐなか、本紙『Sunday Times』のアジア地域各局は、この滅多に公に話されることのない問題について地域がどう受け止めているかを取材した。

国際部副編集長
Tan Dawn Wei

それは、『ワインシュタイン効果("Weinstein Effect」)』といわれてきた。ひと月ほど前、映画界の大物 Harvey Weinstein 氏をめぐるスキャンダルが暴露されてからというものの、次から次へと女性が名乗り出て、同氏を性的不正行為のかどで訴えてきた。現在その数は100名にものぼる。この訴えの嵐は、一部西側の地域だけでなくアジアの地域でもその猛威を振るいはじめた。

先週そのあおりを受けたのは、フィリピンの芸能界だった。二人のアーティストと、人気バンドのメンバーが性的加害行為のかどで訴えられた。

フィリピン大学の学生で活動家の Adrienne Onday さん(19)は、フィリピン音楽界の「醜い暗部("disgusting underbelly")」(彼女談)を暴露するツイッターのスレッドを投稿しはじめた。

オンデイさんは、インディーズバンド『Jensen And The Flips』のボーカル、Jensen Gomez氏(26)から「性的な意味あい」の(sexually suggestiveな)絵文字を送られたという。すると若い女性ユーザーたちから即座に反応があり、似たような訴えが相次いだ。そのほとんどは匿名を希望している。

訴えのなかには、『Flips』のギタリストである Sammy Valenia 氏(20代と思われる)に、タクシーで強引迫られたことがあるというものがあった。

「私は押しのけ続けているのに、彼はとにかくキスしようとしつこかった。でも彼は大柄で、私はすごく小さかったから」

Valenia 氏は潔く事実を認め、「本当にすまなかった」とツイッターに投稿した。

別の2つのバンド(『Sud』と『MilesExperience』)のメンバーも、あからさまに卑猥(sexually explicit)」な絵文字を送りつけたり、未成年者にしつこくヌード画像を送るように迫ったり、ミソジニスト(女性嫌悪的)な発言を行ったりしたとして訴えられた。

コンサートの企画を行う各社は、『Jensen And The Flips』も『Sud』も年末の音楽祭や大学でのコンサートの日程から外した。

芸術界でも同様の事態が起きている。

パリで活動するフィリピン人彫刻家の Gaston Damag 氏(57)は、22歳の女性芸術家に痴漢行為を働いたとされており、デジタル・アーティストの Justin Remalante 氏(29)は、少なくとも11人の女性からあからさまに卑猥なテキストメッセージを送りつけたとされている。


Dos and Don'ts: How to deal with sexual harassment in Asia

アジアでセクハラに対処するための処方箋

In Japan

日本の場合

DO

声を上げること。
2014年に行われた内閣府の世論調査によると、性暴力被害に遭った女性が事件を報告した割合はわずか4.3%だった。

できるかぎり証拠を集める。

日本の警察は「言った・言わない」というような双方の意見を聞かなければならないように案件に関わることを避ける傾向がある。確固たる証拠を持って訴えを起こせば、捜査でも司法のプロセスでもだいぶ先まで辿りつくとができる。

DON’T

職場や社会の因習にひるまないこと。

日本は伝統的に、父権的、階層的、同質的な社会であった。これらは、多くの女性が、加害者の疑いがある人物に対して声を上げにくい要因となっている。


In the Philippines

フィリピンの場合

DO

車のウィンドウにをスモークを入れること。フィリピンでは合法であり、女性はこれを行うことが推奨される。攻撃対象として路上で特定されないための工夫だ。

女性に対する暴力が行われているのを目撃したら、なるべくいつでも、そしてできるかぎり密かにスマホで録音・録画する。オンラインで晒すことは効果的といわれている。

DON’T

クラブなどで飲物を奢られた時には、確実に信頼できる人物からのものでないかぎりは断ること。マニラのクラブはいわゆる「パーティードラッグ」の天国として悪名高い。


In China

中国の場合

DO

職場でのセクハラの証拠を収集して労働組合や人事に報告すること。

地下鉄でセクハラ [痴漢] があったららただちに鉄道警備員に通報すること。


In India

インドの場合

DO

デリーの地下鉄では「女性専用車両」を利用すること。

インドのチケット売場や鉄道の駅などには「女性専用席」や「女性専用列」なるもものも多く用意されている。

インドは概して保守的な社会なので、保守的な服装を心がけること。大都市部では比較的自由な服装を選んでもよいが、小さな町や村を出歩くときは肌の露出は控えたほうがよい。

DON’T

夜遅くにバスなどの公共機関を利用すること。

インドの多くの都市でUberやOlaなどの旅行シェアアプリが使用できる。アプリには、家族や友人に旅程をシェアすることから、SOSボタンに至るまで、さまざまな安全機能が備わっている。


In Indonesia

インドネシアの場合

DO

周囲に気を配ること。
公営バスや電車を利用するときはとくに周囲に気を配ること。インドネシアにおける性虐待行為 [痴漢行為] は一般的に過小に報告される傾向があるが、ソーシャルメディア上では、混雑した場所で女性が痴漢されたり、性的虐待を受けたストーリーが多く流されている。

DO

自分の権利を把握すること。
『Better Work Indonesia』という労働団体では、女性に何がセクハラを構成するかを把握するよう呼びかけている。たとえば、同僚や上司、あるいは顧客に、雇用の過程や雇用条件、その他雇用者又は被雇用者の利益になるとして、性的行為などによる見返りを求められるような場合、「これのかわりにこれを」というような状況が生じる場合は、インドネシアでは『セクハラ』と見なされる。

DO

職場で起きた場合は人事部へ、その他の場合は警察に通報すること。
トムソン・ロイター財団等のインドネシアの研究者らによれば、こうした性暴力事案に対する「圧倒的な沈黙(deafening silence)」により、包括的なデータが得られず、結果として性暴力に関する啓蒙や予防が行き届かないことで、犯罪の蔓延状況が把握できないことに繋がっている。


In Malaysia

マレーシアの場合

DO

声に出し前に出ること。
マレーシアにはとくにセクハラに対処する法律は存在しないが、職場では被害者は加害者について人事部、人事院または警察に報告できる。また、刑法509条の規定(「個人の慎み深さを侮辱したり、聞かれることを意図して音を立てる、身振りをする、物体で示すなどして、そのような身振りや物体を当該個人に見せることを意図する行為、又は当該個人のプライバシーを侵害する行為は5年までの懲役もしくは相応の罰金(あるいはその両方)に処せられる」)に基づき措置がとられる。

DO

基本的な護身術を身に着けること。
性的暴行をいなす最も効果的な方法は反撃することであるという研究結果が表れている。

DON’T

恥と思い何事もなかったかのように振る舞うこと。

一歩踏み出して声を上げることで、自らを守るために勇気を出せないでいる他の被害者を勇気づけることができる。同時に、加害者に対するイネーブラであることをやめることができる。


UNDER-REPORTING

過小報告の問題

[フィリピンの場合]

欧米諸国で被害者たちがハラスメント被害を訴えるムーヴメントが広り、それがこのアジア地域にも伝搬しようとしていることは心強いが、性的加害行為(レイプを含む)の大半は依然として過小に報告されている。

地域の女性人権活動家はこう主張する。

「多くの女性は、何が自分に起きたのかを再確認させられることよりも沈黙を保つことを選びます。またどのような関係性の中でもDV(ドメスティック・バイオレンス)は常に伴う問題だと捉えているので、報告しようとしません」

マニラを拠点に活動する人権団体『Gabriela』のJoms Salvador事務局長

Joms氏によると、[フィリピンでは] 配偶者による虐待、レイプ、インセスト(近親相姦)、あるいはセクハラについて通報する女性は三人に一人で、ほとんどの事件は不起訴処分にされるという。

これは、警察の管区内に『女性用ヘルプデスク』があっても変わらない事実と、一部都市では公然と野次をとばすことを処罰する条例すら存在するのに、強制が不十分であるということによって生じている。

最新の国勢調査及び国民健康調査(2013年)によると、フィリピンでは女性が16分ごとにDV被害に遭い、53分ごとにレイプの犠牲になっている。

警察記録によると、レイプの件数は2010年の5,132件から2014年には9,875件と、ほぼ倍増している。

共和国法9262号により禁じられている配偶者の虐待、児童買春、脅迫や蓄妾化は、2010年に10,000件だったもんごあ2014年には31,900件に急増している。


#METOO

[マレーシアの場合]

現実を直視するという欧米のモメンタムはアジアでも一部市民権を得たが、杜撰な法制と強制力の欠如、社会的評価の失墜や職の喪失、そして責めを負うことの恐怖が、被害者たちを沈黙させている。

クアラルンプールのAngeline Tan Siew Mayさん(28)は、有望企業の担当者に「事前面接」と称してお茶に誘われたとき、即座に「イエス」と答えた。

大学を卒業して2か月間、いまだ就職先に恵まれなかったTanさん(当時22歳)は、この「事前面接」が成功すれば大手紙出版会社の広報部に務める機会が拓けるかもしれないとあって、その部署のトップ気に入られようと努めた。

「少し話した後、彼はこう言ったんです。『この後で私のところに来てくれれば、面接そのものをすっとばして君を雇用できるだが』と。彼の手は私の右太ももに置かれていました」

Tanさんはカフェでの経験を振り返った。

「呆気にとられ、何をしていいのかわかりませんでした。仕事はほしかったけど、断念するしかありませんでした。だから、そう。私も #MeToo ですね」

アメリカの女優アリッサ・ミラノが女性に対してセクハラをもっと声高に訴え、問題の重大さを知らしめるべきだと訴えてからというものの、 #MeToo のハッシュタグはまたたくまにあらゆるソーシャルメディア上に拡散された。

多くのマレーシア人(男女双方)が運動に参画し、FacebookやTwitterで卑猥なヤジをとばされたり、性的にいたずらをされたり、そしてレイプされたことも含めて、自らの被害経験を語るようになった。

侮辱的な経験から6年後のいまも、忌まわしい記憶に苛まれるとTanさんは話す。

「私の人生にとてつもなく大きな影響を及ぼしました。いまでもトラウマを感じています。友人に話そうとしましたが、プロフェッショナル・ライクでない環境でその男性に会おうとしたことがいけなかったと、一部私のせいにされました」

マレーシアには、セクハラを禁止する固有の法律は存在しない。女性人権活動家のIvy Josiah 氏は、「被害者を咎める文化」が、加害者と対峙する気力を被害者から奪っていると語る。

「人びとはなぜ加害者らがそのようなことを行ったのかを疑問視するよりもまず先に、被害者を咎め、辱めるのです。女性の被害者は―男性もそうですが―、加害者が有名人であったり、社会的に尊敬を集める人物である場合、仕事を失うわけにいかず、誰も信じるわけがないと思い込んでしまうため、自らを恥じ、不名誉であるとすら思ってしまうのです」



POLITICAL CONNECTIONS

政治的な繋がり

[日本の場合]

日本のフリーランス・ジャーナリスト、伊藤詩織さん(28)の場合がそうだった。伊藤さんは今年 [2017年] 5月、日本の報道機関TBSニュースの元ワシントン支局長によりレイプされたと被害を告発した。

伊藤さんは山口敬之氏(51)が東京都内のホテルで彼女を襲ったと訴えた。山口氏は安倍晋三首相に近しい人物で、[社の]スピードダイアルに首相の番号を登録していたといわれる。

伊藤さんが刑事被害を訴えた1年後の2015年、警察 [検察] は「証拠不十分」だとして事件を不起訴とした。

伊藤さんは不服申立てを行ったがこれも棄却され、山口氏は警察上層部の介入により不問とされたのではないかとの疑惑が囁かれた。

東京の駒沢大学で社会学を教える片岡栄美教授は、この注目を集めた事件は、レイプやセクハラの被害者がほとんど声を上げることのない日本ではさざ波を起こすかもしれないが、大きな社会変化をもたらすにはいたらないだろうと見る。

24日に発表された日本の最新の犯罪白書によると、警察は1億2700万人の人口を誇る国において、2016年度にレイプと分類された犯罪の発生件数を989件と報告している。前年に比べ15.3%減少しており、2004年以降この減少傾向は続いているという。

一方、16年度に性的暴行(sexual assault)と分類された犯罪の件数は6,188件で、前年に比べ8.4%減少していた。 会見で過小報告の可能性について質問されると、法務省の関係者は「過小報告とされている件については、本会見の趣旨ではない」と述べるにとどまった。

前出の片岡教授は、被害者が通報をためらうのは、日本が男性優位の社会であり、均質に周囲との同調を求められる社会であるためだと指摘する。

「一般的に、女性は男性に従属するものであり、家族や周囲の人びとに合わせることが求められると考えられています。女性がセクハラやレイプの被害を公表することは、『不都合な真実』を明かすことになり、家族や周囲に偏見を持たれることに繋がるのです」

片岡教授は、「明白証拠」がないかぎり警察は申し立てを受け入れようとしないため、当局に事件性を認めさせるのも困難だとしている。

事件を公表してからというもの、伊藤さんは「売名行為」だとか「売春婦」といった類の嫌がらせや誹謗中傷の的になったと言う。

日本では、スカートの中の盗撮や電車内での痴漢などがより目に見える形のセクハラとして認識されている。後者は2001年、鉄道会社に女性専用車両の導入を促すことに繋がった。


WHERE DOES IT GO FROM HERE?”

ここからどう発展するのか

インドも、日本のように父権的で保守的な規範に支配されている。女性はセクハラや、時にはレイプにまで耐え忍ぶことを求められる。「被害者いじめ(victim-shaming)」は現実に広く存在する問題であると、社会活動家らは言う。

#MeToo 運動に勇気づけられ、加害者を名指しにはしないものの、ボリウッド女優たちも声を上げはじめた。『ムンバイ・ミラー』紙のインタビューに応えたボリウッド女優のSwara Bhaskaraさん(29)は、デビュー間もない頃に映画監督によりハラスメント受けたと告発した。

「愛やセックスについて語るようになったかと思えば、ある夜、酔っぱらいながら私の部屋に入ってきて、抱きしめてほしい、と私に迫ったんです。とても怖かった」

彼女がエグゼクティブ・プロデューサーに抗議すると、ハラスメント行為は止まった。

ミシガン州立大学が首都ニューデリの男女1,400人を対象に行った昨年 [2015年] の調査によると、昨年バスの車内や公園などの公共の場でハラスメントを受けたと答えた女性は40%にのぼり、ほとんどの犯行は日中に行われていた。回答した女性の33%が公共の場に出ることを控え、17%がハラスメントに遭うくらいならと仕事を辞めていた。

インドにおける性暴力犯罪は、物理療法を学ぶ女子学生が首都を運行するバスの車内で集団レイプされた2012年の殺人事件を機に急激に注目されるようになった。被害者の女性はその時の傷が原因でシンガポールの病院で死亡した。

この蛮行により路上には抗議の声が溢れ、政府は法改正を余儀なくされた。改正された法律の中には、猟奇的な強姦犯に死刑を適用することも含まれた。

しかし活動家らは、法の運用は依然として甘く、声を上げようとする女性をタブー視する社会の締め付けが依然存在すると主張する。

「運動 [ #MeToo ] は少しは影響はあったのだろうし、セクハラについて議論が行われるようになっているのは、よいことだとは思う。でもそうした議論は散発的です。問題は、“ここかからどう発展するか”です」

全印進歩的女性協会(All India Progressive Women’s Association)の書記長、Kavita Krishnan氏はこう語った。

社会学者で女性人権活動家でもあるRanjana Kumari氏は、「グローバルに起きているようには、インドではまだ沈黙は破られていないと思います」と言う。しかしそれでも、2012年以後、レイプの報告事例が増え続けていることには留意した。

同国の国家犯罪記録局の統計によると、強姦の被害報告は2012年の24,923件から2015年には34,651件に急増したという。2015年には、強姦、強姦未遂、女性への性的暴行を含む130,195件の性的犯行が報告された。

女性にとってより安全で住みやすい町にするという取組みも始まっている。つい先週、連邦内務省はデリー、コルカタ、チェンナイ、アフマダバード、ベンガルール、ラックナウ、ハイデラバードの8か所で運行する地下鉄業者に対し女性の安全対策に関する計画を策定するよう求めた。


GETTING LAW PASSED

法案制定を目指す動き


[インドネシアの場合]

インドネシアの課題は、さらに初歩的だ。まずセクハラ対策法案を成立させることから始まる。法案は昨年 [2015年] に提出されたが、議会での議論はこう着している。

「セクハラ対策法案を審議、成立させ、立法化するという議会の強いコミットメントはほとんど感じられません。なめくじのような遅い歩みです」

と話すのは、インドネシア女性連合の事務局長であるDian Kartikasariさん。

これまでセクハラ被害者にはほとんど庇護が与えられなかった。セクハラに特化した法律が存在しなかったからだ。

Dianさんは政府の「女性に対する性暴力対策国家委員会」が実施した16年度の調査を参考に、インドネシアでは2時間ごとに3人の女性がセクハラ被害に遭っていることを明かした。だからこそ、法案をすみやかに成立させる必要があるのだと言う。

「われわれが提案したごくわずかな条文案は法案から削除されてしまいました。その中には、性的意味合い(sexual overtone)を含む示威行為や中傷行為に対処するものが含まれました。たとえば、”選挙で○○候補を支持する女を輪姦そう”というような投稿をフェイスブックに行うこと。これは実際に今年、ジャカルタ州知事選挙の時に頻繁に起きたことなのです」


[中国の場合]

中国では、「女性の権利と利益を保護する法律」なる法律により性暴力から明示的に女性が保護され、加害者の告訴を可能にすることで性的加害行為があった場合に雇用者に対し損害賠償や訴訟の提起ができるようになっている。

ただし、香港を拠点に活動するNGO「China Labour Bulletin」は、裁判になっても正義はほとんどなされないと指摘する。

「寛大な措置か、ほとんど処罰されないかのいずれかで、被害者の側に多大な立証責任が負わされることが往々にしてあります。原告側は、中国の法制度のあらゆる難関を克服しなければならないのです」

同団体がWebサイトに掲載した報告書には、こう書かれていた。

サイトには、2005年から2016年までの間、北京のハイダン地区で性暴力被害を訴えた10人の女性のうち、勝訴したのはたった1名だったと語る判事の言葉が引用されていた。

セクハラは中国で増え始めている、と語るのは中国社会学アカデミーのLi Yinhe教授。

広州の「広東世論調査センター(CPRC)」が2013年に北京、上海、広州の1,500人の女性を対象に実施した調査によると、31%が過去3年の間にセクハラの事案が増えており、16歳から25歳では、48%がセクハラが増加していると感じたと答えている。

CPRC の調査ではまた、セクハラに遭ったことがあると答えた被害者の35%が、口頭によるもの、個人対個人のもの、そしてインスタントメッセージや電話のコールで、セクハラ被害に遭ったと答えた。

Li 教授は語る。

「これは法律が以前よりも厳格でなくなかったからです。かつて性犯罪は、死刑や懲役刑に処せられる類の犯罪でした。ところが現代では、懲役刑であったとしても1年か2年程度です。性犯罪を行う人間が増えるのも当然です」


A CULTURAL SHIFT

沈黙の文化を変える

38歳のオフィスワーカー Zhang Xiaolin さん(仮名)は、わずか8歳の時に、従兄弟に性的に“いたずら (touched) ”された。祖母の家で眠っている時に起こったこの出来事は、彼女に深い心理的な傷を残し、結婚した後も彼女の性生活を損なうものとなった。

「夫に触れられるのを嫌いました。“乱暴者(hooligan)”と呼んでしまう。ひじょうに不快で、侮辱されているような気がしてしまうのです」

Xiaolin さんは二十歳の時にもある出来事に接していた。この時は、家庭教師を行っていた男児の父親だった。レッスン中に腹部が痛くなった時に、医師である男児の父親が彼女に診てあげると言った時のことだった。

「診療用のベッドで、彼はまず私の腹部を触診したのですが、彼の手が下着に伸びたのです。飛び起き、衝撃を受けた目で彼を見つめると、彼の顔は真っ赤になっていました。部屋を飛び出し、二度と教えには戻りませんでした」

「衝撃を受けるとともに怒りを感じました。でも、その事件を通報しようとはしませんでした。自分の権利を知らなかったからです。愚かでした」

Li 教授は、学校や職場にはセクハラに対処するための正規の規則や規約を設けるべきだと主張する。また、学生や労働者も、ハラスメントを受けたときにどう自分を守るべきかを教育されるべきだと言う。

加害者を罰する刑法は存在しているが、各機関は、従業員がそのような問題行動に及んでいることが確認され場合は降格や解任等の処分を行う措置を講じるべきであると、Li 教授は言う。

だがより大きなハードルは心理的なものだと、 Xiaolin さんは言う。

「現在の中国はひじょうに開かれた社会のように見えて、水面下ではひじょうに保守的な社会なんです。親はこうした事件を通報しようとしません。周囲に知られると、子どもの将来に傷がつくと考えるからです」


IN NUMBERS

統計が示すこと

35%

物理的な暴力または性暴力の被害に遭った全世界の女性の割合。

1億2000万人

強制的な性交またはその他の性行為の被害に遭った全世界の少女の数。

79%

インドで公然とセクハラ被害に遭ったことのある女性の割合。

84%

ブラジルで警察によりセクハラ被害を受けたことのある女性の割合。

64%

イギリスで公然とセクハラ被害に遭ったことのある女性の割合。

4人に1人

北米で生涯を通じて性暴力を受ける女性の割合。

3人に1人

ジンバブエとルワンダで生涯を通じて恋人から性暴力を受けるる女性の割合。

37%

アラブ圏で生涯を通じて何らかの暴力を受ける女性の割合。


出典:UN Women, Actionaid, Sex Assault Canada, Zimbabwe National Statistics Agency, Stop Street Harassment.

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戦いのノート
noteをご覧くださりありがとうございます。基本的に「戦う」ためのnoteですが、私にとって何よりも大切な「戦い」は私たち夫婦のガンとの戦いです。皆さまのサポートが私たちの支えとなります。よろしくお願いいたします。