
【コラム】『PLAN75』が見せた近未来の日本の姿。先ず個の権利の尊重ができる社会の実現を(※ネタバレ含む) #PLAN75 #命の選別
昨日、この作品を見てから、うまく言葉が繋げられないでいる。 妻の作ってくれた「体に良い食事」を美味しく頂きながら、作品の中での独居老人たちの食事を思った。 そして夫婦二人で食事している、後期高齢者の両親の姿が重なった。父は前立腺がん、母は心臓病の爆弾を抱えている。
五臓六腑に沁みるご飯でした。#LoveLikeTheresNoTomorrow 💘 pic.twitter.com/IsDrWAfNMi
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) February 18, 2023
この制度が現実に存在したら、両親はきっと喜んで制度を利用するだろう。それが社会のため自分の尊厳のためだと思って。但し、今ではない。
私の80代後半の両親はおそらく、成田氏が提唱する尊厳死の制度化促進や延命措置への保険適用見直し等については、賛同の立場をとると思います。あくまで制度としては。しかし個人としてその制度を今利用する選択はしないでしょう。やはり生を全うしたいからです。強いですよ。生き抜く意志。 https://t.co/JzMtCUJWRw
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) January 12, 2023
そういう人は多いかもしれない。そして自由選択である限りは、そういう人々の意思を尊重してあげなければならないのかもしれない。
ただ、この映画に出てくる制度は、「自発的な安楽死」を装った実質的な「 強制安楽死」。思考の弱くなった老人が翻意しないように、「安楽死」を選ぶことの考えを変えることがないように、巧みに誘導しようとする。
命の尊さ最大限尊重するとしつつ、参加者の遺灰や遺骨は、墓地にではなく、埋立地に集積され、廃棄物として扱われる。
そんな制度にもし両親が参加したいと意思を示したら、私だって反対する。私だって、映画の登場人物たちのような行動を取るかもしれない。家族の同意を必要としないところで、物事が進められていくからだ。本人が同意したとしても、家族の同意が必要ないとしても、反対の意思は示すだろう。
個人の「安楽死」を認めるのと、老人という、年齢の属性でのみ安楽死を認めるというのは、まったく違う。 母は常日頃、自分の「尊厳死」を認めるように、私たち家族に念を押す。もうすでに一筆したためてある。
母はもう八十歳に届く。心臓が弱く、脳にも爆弾を抱えている。何度も、何度も生と死の境をさまよってきた。そんな母が、いざという時には延命措置を続けないようにと、私たち家族全員に、尊厳死の容認を求めた。受け入れざるを得なかった。母の強い意志と、願いだったから。
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 24, 2020
それが法律上有効であるかは別として、それが母の意思だ。尊重したいとは思うけど、いざその時にその通りに振る舞えるかどうかは全く自信がない。
では法律上有効になったとして、それが家族の同意を必要とするものであって、そして本人の意思も二重に三重に確認されるようなものであって、なおかつ母がその制度の利用を望むのであれば、その時初めて、認められるのだと思う。
以前まとめたことがある。医療先進国のアメリカでも、厳密に医療行為としての PAS(医療自殺幇助)は、厳格な規定により管理されており、「尊厳死」(=安楽死)一般は、連邦法律上認められていない。またPASはその実例も多くない。それだけのハードルがあって然りなのだ。
再び纏めに戻る。今度はデータ編。
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 27, 2020
①
●米国では1991のオレゴン州尊厳死法の成立により医療自殺幇助(Physician-Assisted Suicide: PAS)が合法化。2006年に連邦最高裁が合法と認定。現在PASはハワイを含む10の州で合法。
●ハワイでは2019年1月よりPASが合法。但しPAS施行要件は次のように厳格
●ハワイ州でのPAS施行要件
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 27, 2020
・ハワイ州在住で18歳以上
・疾患の末期にあり予後が半年以内
・本人が判断できる状態にあること
・本人判断に影響する重大な精神疾患がないこと
・本人が自発的に希望すること
・本人自ら致死薬を内服できること
●ハワイ州でのPAS施行プロセス
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 27, 2020
・本人がPASの希望を主治医に伝える
・本人が口頭で二回希望を伝える
・1回目の表明から20日以上空ける
・2人以上の医師による末期と予後の確認※
・精神科医による判断能力の評価
※内1人は必ず主治医でなければならないが、主治医が拒否した場合は他の医者を探す
●PASの統計データ(オレゴン州)※
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 27, 2020
・PASによる死 - 132件
・死亡数全体に占める割合 - 0.4%
・疾患別PAS施行例
悪性疾患 - 77%
神経性疾患(含むALS)- 8%
呼吸器疾患 - 4%
心疾患 - 3%
※2015年度統計に基づく。ハワイ州の2019年度のPAS死は15件
●PAS施行患者の希望理由(オレゴン州)
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 27, 2020
・自立性の喪失 - 91%
・生きる喜びを感じるような活動ができなくなった - 89%
・尊厳の喪失 - 68%
・耐え難い痛み - 25%
●米国ではPASを希望し実際に亡くなるケースはごく稀。PAS希望患者にはまず緩和ケアによる一次評価を行い苦痛軽減を試みることが肝要。
個人の権利の尊重の先で、丁寧な議論を。
私たち日本人は、いつかそういう話をしなくてはならなくなる。それは超少子化社会の今、すべき話なのかもしれない。だが私たちの社会は未だ、個の尊厳を尊重するということを、社会の規範とすることすらままならない現情にある。いつか議論する必要があるとしても、今の日本社会には荷が重すぎる。
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 24, 2020
尊厳死や安楽死は『個人の権利の尊重をとことん突き詰めた先にある、究極の自己決定の一つ』まさにそうだと思う。個の尊厳をその全体として尊重することを至上命題とできない社会には、過ぎた考え。分不相応な着想なのであると、そうした自制を以てこそ、議論を始められる。https://t.co/kVlTkVnwyJ
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 24, 2020
"尊厳死や安楽死は『個人の権利の尊重をとことん突き詰めた先にある、究極の自己決定の一つ』"
この考えは今も変わらない。 だから個人がその自己決定を行うプロセスも、厳格に規定されなければならない。だが個人の尊厳や個の尊重が軽んじられる、そうした傾向の強い現代の日本社会で、このような抑制の効いた制度を作れるだろうか。図らずしもこの映画は、近未来であっても、そんな制度が日本では作れないだろうことを示してくれた。だからこのことを軽々しく議論することは、厳に慎むべきなのだと思う。
議論をすることそのものは否定しない。けれども丁寧に議論していこう。丁寧な議論から始めよう。間違っても、一部の政治家に囃し立てられるように、急かされるように、今決めなければならないことのように思わされたまま、拙速な議論を行うことは慎もう。人の生き死にに、関わる事なのだから。
— 💫T.Katsumi🏳️🌈📢 (@tkatsumi06j) July 24, 2020
「安楽死や尊厳死は、政治家が軽々に扱うものではありません。」
この3年前の自分の言葉に、新たに一言付け加えたいと思う。
「安楽死や尊厳死は、政治家や公人が軽々に扱うものではありません。」
#成田悠輔 あなたのことだ。
議論をすることそのものは否定しない。けれども丁寧に議論していこう。丁寧な議論から始めよう。間違っても、一部の政治家や公人に囃し立てられるように、急かされるように、今決めなければならないことのように思わされたまま、拙速な議論を行うことは慎もう。
人の生き死にに、関わる事なのだから。
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