そして2月が終わる
以前読んだ映画脚本についての本に、(それは安藤紘平さんが訳し、大林宣彦監督の帯コメントが書かれていた本)「人は脚本を書き始めると必ず妨害衝動が起きる」という章があって。
妨害衝動と言っても物騒な、時計じかけのオレンジ的な話ではなく、
要するに脚本を書こうと何か1くだり書いたところで、脚本を書く以外の行為、たとえば急に部屋の掃除がしたくなる、全然必要ない調べ物をし始める、SNSを貪るようにチェックする、とにかく他のことがしたくなるという衝動のことです。
脚本に限らずわりと誰しも、やらなくちゃいけない作業系全般をする時に起こるあの衝動のことね、と思い付くのではないでしょうか…。
その本に書いてあった衝動への対処法は、「妨害衝動が起きてないふりをするのではなく、これは妨害衝動なんだと、ただ認識すれば良い」ということでした。
ちょっと話は逸れますが、大学時代の演技の授業で役者が演技中に出てしまう身体の癖(例えば、身振り手振りをオーバーに動かしてしまうとか)について教わったのも、思えばほぼ同じ対処法でした。
「癖を止めなきゃ」と抗おうとするより、「あ、今、癖が出てるな」と自分でただ認識するだけで良い。
身体の癖は完全に消そうと焦るのではなく、必要になった時に活かせるようになるほうが良いのだと。
妨害衝動に話を戻すと、その本では著者が「私が好きな妨害衝動は〜」と挙げていたのが、「今取り組んでいる作品や企画とは関係ないもののアイデアが浮かぶ」というものでした。
所詮その時浮かんだアイデアも妨害衝動のなかで生まれたものなので、後から思い返すと大したことじゃないことが多いけど、中には本当に良いアイデアを思いつく場合もあるので、思い浮かんだアイデアはとりあえずスマホか別のノートにメモだけして、あくまでも今取り組んでる作業を続けるべきだと書いてありました。
最近僕は、自団体の“コントと演劇をさまよえる集団”コヒツジズの単独公演を無事に終えることが出来たのですが、(自団体とか終えることが出来たとか言ってますが、今回もお客様含め本当にみなさんのおかげで盛況でした。本当にありがとうございました。公演自体の振り返りについては、後日配信されるであろうコヒツジズのネットラジオのほうでたっぷりお送りすると思います。かしこ。)
まさに公演の準備期間こそ、それなりにまとまった量のさまざまな作業が立て込みます。作業が立て込むということは、さまざまな妨害衝動も度々起きるということで。
それすなわち、ひとたび公演が終わると「あれやりたかった」「これやらなきゃ」の妨害衝動リストの消化シーズンが到来するわけです。
溜まっていた深夜ラジオのタイムフリーを聴きながら、公演終わったらまとめたいなぁと思ってたことを手帳に書いたり。なんとか上手くいかんかなぁと思ってたことに関する実用書を読み始めてみたり。まとまった時間に描きたいと思ってた絵を描き始めてみたり。
どんなもの書きたいか、どんなものを読みたいかは(妨害衝動の時々に)けっこう具体的にリストアップされてるので、本当にもうあとは書くだけ買うだけ読むだけ。
いったいどんだけ自分で自分を妨害しようとしてきたのか。
田中マトンのLINEスタンプ第3弾用シチュエーションのメモなんかもう、ずいぶん前からとっくに40種類以上。溜まりに溜まってます。
そして、ここまで読んでもうお気づきの方もいるかもいるかもしれませんが、
溜まったリストを眺めて「どれをどのタイミングに消化出来るだろう」と考えていると、それがもはやそういうまとまった作業と化しています。
衝動のままにメモしてる時は「これが終わったらやるぞ」というある程度のモチベーションになっていたはずなのに、気づけば今や息抜きリストに追われる身。悲しい。嬉しいはずなのに悲しい。
でも息抜きでやる作業にはベストなタイミングこそあれど締切は存在しないから、と自分に言い聞かせつつ。本番後の期間を比較的ゆるゆる過ごしています。
そんな2月終わりのざっくりとした近況でした。
(よし、これで《noteを更新する》のリストに斜線と…)
そういえば、去年末からコヒツジズの2月公演に向けて取り組んできて、千穐楽のカーテンコールでも「次は何やります」とか、特にアナウンスしそびれてしまっていました。
ありがたいことにお声を頂く機会があり、今年もますます俳優として順次出演作品のお知らせしてゆくことになると思います。
引き続き楽しく面白い作品作りに貢献出来るよう頑張りますので、どうぞよしなに…。
あとそういえばそういえば、
役者にとっての心のカルテと名高い(?)世阿弥の『花鳥風月』を最近ようやく読み終えました。
役者やパフォーマーにとって、こんなに重要な事が書いてある本がどうしてそこまで拡まっていないんだろう(いや、昔から超有名だけど、もっと現代に拡まっていてもおかしくないと思う内容)と思ったけど、
ここに書いてあることは拡めるな的なことがちゃんと最後に書いてありました。
ケンドーコバヤシさんが言う「お笑いも、プロレスが盛り下がった時代のように裏側の手のうちを明かしすぎると退廃してゆく」論に近いことなのかなと思ったり。
あと、能楽の本なので鬼の役の演じ方のコツとか書いてあって、僕も今回鬼の役演じたなぁ、とか思いながら読みました。
それではまた。