褒めて伸ばすか、厳しくするか
中学校部活動のバレーボール部で技術指導する場合、褒めるか怒るか。
選手が迷路を進む様子をイメージしてみよう。
真っ暗な迷路の進んでほしい方向から光が見えるように導くのは、褒める指導。
明るい迷路の、進んじゃいけない道を塞ぐように立ちはだかるのは、怒る指導。
寓話「北風と太陽」にも喩えよう。
コートを脱いだ方がいいと思わせる太陽と、無理矢理ぶっ飛ばせばいいという北風。
私はまだ指導者1年目で、信頼関係が未構築であったから、太陽になるしかなかったし、北風のような態度でギスギスするのは自分も楽しめないから、怒る指導はしないと誓った。
けれど私の後輩でチームメイトでもある南中の監督は、北風を地で行く指導。
朝一発目から、挨拶が悪いと生徒を怒る。
試合では、一つひとつのミスには怒らないが、我々がリードしそうになると、タイムアウトを取って激怒し、なぜかその後、必ず逆転で勝利をさらっていく。
それを見たら、私も怒るべきなのかなと思ってしまう。
一度だけ、試合で負けそうな時に、タイムアウトで厳しく「ブロックから逃げずに強く打て!」と言ってみたことがあるが、流れは変えられず負けた。
うーむ、慣れないことはすべきじゃないね。
南中は、練習でできていることを試合でやれ!という激怒。
対して私は、練習でやらせていないことを試合で怖がらずにやってみろ!と言った。
その違いだと気付いた。
世の指導者は、怒りたくなった時、落ち着いて冷静に自問してみよう。
その要求は、練習であなたが教えていることなの?
練習の時やっていないのに、試合でやれって言ってないか?
私はそのあと、とにかくいろいろな場面を再現して経験させることにした。
例えば、
突然顔面にボールが飛んできたとき
ネットにぶつかって跳ね返ったとき
スパイクにブロックがあるとき
人と人の間にボールが飛んできたとき
ライン際にボールが落ちそうなとき
選手同士近づきすぎた時の譲り方
高ーいボールを打って返すとき
ネットから遠いトスと近いトス
などなど
でも、厳しく教えなくてはならない時もある。
それは技術的な事ではなくて、
仲間に対して不親切、不義理をした時と、仲間を不愉快にさせた時。
無視したり、ヒソヒソ話をしたり、不機嫌な表情を見せたり、自分だけ諦めたり、といった、自己中な態度を見せた時だ。
これは本来、外部コーチの仕事ではないが、監督の先生が、当事者同士話し合えとか、おかしな対応を言い出す時があるので、言った時がある。
当事者同士話し合えば、丸く収まるなんて、幻想だと思う。
絶対、話が上手い方、年上の方が勝って、負けた方に遺恨が残る。
私は、君の言いたいことは分かるが、チームの雰囲気が悪くなると分かっている場合は、当事者どちらも我慢して、何も言うな!と指導した。
県大会に行きたいという大きな目標を叶えるためには、小さな不満は無視してほしい。
話し合っても解決はしないから。
それよりも、コートの中ではいつも互いに助けて、助けられている、そのことをまず思い出せ!
気持ちの通じない2人でも、1つのボールを追って協力し合っている、貴重なチームメイトだ。
その不思議な関係、同じチームで出会った奇跡を、面白いと思えるようになりなさい。
そうですよね?みなさん。
平和でなければスポーツはできないし、
スポーツをするから、平和は創られるんですよね。
人はスポーツをするから、厳しくも、優しくも、なれるんですよね。
自分の心を見つめるように、同じ眼で、仲間の心も見つめてみたいものです。