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ポジションを変えるたびに説明書を配る
バレーボールのスターティングオーダー6人は、6個の丸が印刷されている小さな紙に背番号を記入して提出する。
この紙のことを「メダマ」というのは、我が地方だけなんだろうか?全国共通の隠語なのだろうか?
まあさておき。
ネットに近い方3人が前衛。
遠い方3人が後衛。
後衛のうち、ネットに向かって一番右の選手が、サーブ順1番となる。
サーブ権がある間に得点し続けると、その間はずっと同じ選手が連続してサーブを打つ。
サーブを打ったチームが失点、つまり相手チームが得点すると、点数を取ったチームにサーブ権が移る。
相手がサーブを打った後にこちらが得点すると、さっきサーブを打った選手の次のサーブ順に当たる選手がサーブを打つことになる。
この時、時計回りに1箇所ずつ位置が変わることをローテーションという。
前衛の、ネットに向かって一番右だった選手が後衛の一番右の位置になって、サーブを打つ。
その他の選手は一コマずつ時計回りに押し出される。決して追い越すことはできない。
そのようにして、6人の選手は、自分が後衛の一番右に来た時はサーブを打つということを、セットが終わるまで延々と繰り返す。
なのでできれば、サーブが上手な選手により多くサーブが回ってくるように、1番打者にしたい。
ロサンゼルスドジャースの大谷翔平みたいに。
チームの6人が同じくらいいいサーブを打てるならばどうでもいいが、中学生だから、大概6人に実力差はあって、おおよそ上手い順に並べた方が有利になるのはセオリー。
その他にも考えるべきことはあって、
セッターは基本、攻撃しないので、後衛にいる時間が長い方がいい。
エーススパイカーはできるだけ長く前衛にいた方がいい。
エーススパイカーはだいたいがレフトに入るので、同等の選手を対角のレフトに置けば、サーブに下がった時にちょうどもう1人のレフトが前衛に上がるので、攻撃が途切れない。
ちなみに右利きの選手はレフト(ネットに向かって左側)からが打ちやすく、左利きの選手はライトからが打ちやすい。
といった様々なチーム事情(特性と弱点)と、バレーの常識などを考慮して、スタメンのポジションは決められるのである。
これは野球の打順と守備位置よりも制約があって、難しいのではなかろうか。
ポジションの中で、最も曖昧で難しいのが、ミドルブロッカーのポジションである。
いわゆるセンターと呼ばれて来た、コート中央にいる選手である。
実はレフトやライトと呼ばれて来たポジションも今や、アウトサイドヒッターとなり、つまりはコートの外側に居ればいいので、守るも攻めるも、自分の位置が把握しやすい。
一方、ミドルブロッカーはアウトサイドヒッターの攻守の邪魔にならないように位置どりするようなところがあって、大義のために譲るような態度が求められる。
その割に、相手が攻撃する度にブロックし、すぐまたセッターの手にボールが入った瞬間にはジャンプしてクイック攻撃、または囮として相手を騙さなければならない。
非常に高い運動量と献身的な姿勢が要求されるポジションなのだ。
全日本のアウトサイドヒッターはきっと攻撃的な顔立ちをしていて、ミドルブロッカーはおとなしめな顔立ちをしている、ように見えなくもないだろう。
我がチームでは、セッターと最長身ミドルの2人以外は、とにかくポジションを動かした。
練習試合、公式戦があるたびに、後日その課題を分析しては、動かした。
初心者が多かったので、レフト打ちよりライト打ちが上手くなってみたり、また元に戻ったら活躍したりと、成長は直線のようではなく、ぐにゃぐにゃとふらふらと不安定なものであったから、とにかく動かして、成長を促した。
レフトエースだったのにリベロにされて、不貞腐れた子もいた。
ずっとセンターだと思っていたのにライトにさせられて、苦労した子もいた。
とにかく目標は最後の6月。
その時まで、いろんなポジションを経験して、他者の苦労を思いやれるようになってほしかった。
コロナなどの急病、捻挫などのケガに備える意味もあった。
なんとしても目標の場所まで連れて行く!
そのためのポジション変えだった。
その度に、やはりサーブが上手い順というのも考慮しつつ、オーダーを組んだ。
そんなに頻繁に変えると、選手が試合中、自分のサーブ順がわからなくなってくるだろうとも予想した。
だから私は、紙に印刷して、ポジションを説明した。
サーブ順が1個ずつズレて行くと、6パターンの布陣がある。
①〜⑥までの布陣で、誰がサーブの位置か、誰が前衛で後衛か、攻撃の選択肢はいくつあるか、誰がブロックするか、図面入りの説明書を作って配った。
そして、今現在のオーダーで、取り組むべき課題や、全員が共有するべき方針を、明確に示して記載した。
保護者に対しては、なぜこういうスタメンなのか、説明する意味もあった。
決して、試合中にわからなくなって恥をかいたりしないように、口頭でも説明した。
説明後に、コートで実際に6パターンを経験させながら、また説明した。
その工夫もあって、我がチームはポジションを変えることに躊躇することはなかった。
選手たちは、しっかりと自分の役割を理解して、一生懸命に覚えて、動いてくれた。
保護者も理解してくれた。
いつも、私の意思がしっかりと伝わっているという実感を得ることができた。
だから、私は、バレーボールのコーチングが、たまらなく面白いものだということに、気づいてしまったのだ。