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自陣コートの面積は?バレーボールにおける数学教育の必要性

全国大会から帰って来た3年生が、引退後に練習に参加してくれる機会が数回あった。
県選抜に入った選手が3人いて、まだまだ12月までは動いておきたいという思い。
高校でもバレー部に入るつもりの子も来てくれた。
1-2年生で9人しかいないから、少しでも来てくれて、ゲーム形式ができるのはありがたかった。

そんな3年生に質問をしてみた。

「6人で守るべきコートの面積は?」

???

超意外な質問をされた、という顔。
どう考えたらいいの?と混乱していた。

私「コートはタテヨコ何m?」

前キャプテン「えっと・・・8?m?」

おいおい!8m四方は小学生だぞ!

私「アタックラインはセンターラインから何m?」

前キャプテン「3m・・・」「あっ!じゃあ9m?」

私「そう。タテヨコ9m。ということは、面積は?」

前キャプテン「81平方!センチメートル!」

私「ブッブー!平方メートルです!」

というやり取りが実際にあった。

全国大会に行った子が、小学生と変わらない8mコートのままだとぼんやり思っていたことに驚いた。
算数のテストで面積の問題は、だいたいがcm単位ばかり出されるから、自然と「平方」の次は「センチメートル」と口走ってしまうのは頷ける。

私は、困らせようと思ってこの問題を出したのではなかった。
全国に行った3年生なら当然、コートの対角線の長さが、9mよりどれだけ長いかを知っているよな、という確認をしたかったのだ。

けれどもそれは、誰も知らなかった。

念の為もう一つ聞いてみた。
「二等辺直角三角形の斜辺の長さって、習ったよね?何タイ何タイ何って」

???わからない。

そうなの?!

私「1:1:√2って習わない?」
「9:9:9√2でしょ?だから対角線の長さは、9mの√2倍。√2はヒトヨヒトヨニヒトミゴロだから、約1.41倍だよ」

つまり、ネットに対して直角にスパイクを打てば、9mより長ければアウトになってしまうが、対角線方向にボールを打てば、12mの長さでもインになる。
3mも得するじゃん!

だから、ネットより高い打点から打ち込めないような、背の低い選手は、ネットから離れたトスを、コートの対角線方向に、いわゆる足の長いスパイクを打つことにより、インになる可能性が高くなるのだ。
もちろんこの時、ドライブ回転をかけて、下に落ちる山なりの軌道にするのは必須だけれど。

世界トップレベルの選手たちだって、相手ブロックがめちゃくちゃ高いから、自分たちの打点が350とかめちゃくちゃ高いからといって、下には打たない。
ネット上の通過点が低くなり、ブロックシャットを喰らいやすくなるから。
だからブロックの指先を狙いつつ、指先に当たらなくてもコート内に落ちるように、足の長いスパイクを、ものすごいドライブ回転をかけて打っているのである。

1辺9mの正方形のコート。
任意の頂点から9mのヒモをピンと張って伸ばし、隣の頂点に当てる。ピンと張ったまま、扇形を描くように90°移動させると、9mのヒモが届かない部分ができる。
そこがラッキーゾーンである。9m以上の長いスパイクでもインになるラッキーゾーン。

それは、バレーボールを専門的にプレーする選手たちの共通認識であると思っていたが、中学生レベルでは、そうではなかった。

それから面積について。
81平方メートルを6人で守るとすれば、1人何平米の守備範囲なのか?

答えは13.5平米である。

例えば、守備範囲が半径1.5mの円だとすると、1.5×1.5×3.14=7.065平米。
半径2mなら12.56平米。
身長150cm程度の中学生が、飛び込んで手を伸ばしても2mくらい。
それでもまだ足りないほどの面積を守らなきゃならない。

どうやってそれだけ広い面積を守るか?

答えは、分担と読み である。

まずは、6人が自分の役割をしっかり守ることが前提条件。
前衛の誰かがブロックをして、ボールが落ちる可能性のある部分を狭くする。
落ちる可能性の高い部分に、その他のレシーバーを分布させる。
その約束事をまずは厳守する。

次に、相手スパイカーがどんな態勢で、どんな身体の向きで、どんな腕の振りで、どのようなトスにどうアプローチしようとしているかを観察して、強打かフェイントかを読む。
捨てるべき部分を捨て、瞬間的に居場所を微調整する。
何回か被弾しているうちに、落ちやすい場所を記憶してそこに重点を傾ける。

そうしたレシーブシステムを理解するために、意外にも数学は必要なのである。

まあ、常識の範囲の数学ですが。

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