居場所を見つける

学校の先生をしています。

ある初夏の日、授業を終えて職員室に戻ろうとすると、とある生徒が廊下に座り、教室と廊下とを隔てる壁にもたれかかっていた。
「どうしたの?」
と尋ねると、
「涼しいんで」
と、その彼。私は、いいね、と返事をし、そのまま職員室に戻った。
確かに廊下は涼しく、その日は風が良く通り抜けていたので、そこで休憩するのはとても良さそうに思えた。そんな楽しみ方もあるのか、と思った。目から鱗だった。
また別の日、とある秋の日だったと思う。放課後、なんとなく教室を回っていると、生徒が二人、窓際に向けて机を並べて、談笑するでもなく座っていた。これも、
「どうしたの?」
と尋ねると、
「風がぶわーっとして楽しいです」
と、彼女ら。放課後の、最高の過ごし方の一つだ、と思った。

学校の教室はいたってシンプルで地味な構造だ。床と、壁と天井と、机と。それでも、まだ私の知らない居場所の見つけ方がある。むしろ、シンプルだからこそ、見つけられるのかもしれない。
自らが変わってみると、そこでの振る舞いや、関係性や、視点が変わる。色々な角度から物を見つめる。とっても面白い。

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