大雨と深淵

 学校の先生をしています。

 先日の授業中、大雨による避難警報が鳴った。警戒レベルは4、もう避難を始めなければならないのだが、学校ではそのようなアナウンスをしようという動きには至らず。自分もその集団の1人だ、という自省を踏まえつつ、学校における「正常性バイアス」の話を少しした。
 正常性バイアスとは「今まで何もなかったから、今回も大丈夫だろう」という類の思い込みのことだ。これは人生経験が多ければ多いほどこのバイアスは強くなりやすく、また災害時には避難の動きを妨げることがある。
 その正常性バイアスという性質と、「最終的な意思決定権を持つものが年配者であることが日本では多い」ということとがリンクして、避難警報が鳴っても何も動きがないという事態が起こるのではないか、ということも話した。

 この話をしたのは、高校1年生の授業だった。少し難しい話かもしれないなと思いつつ話したのだが、うんうん、と頷きながら聞いてくれた。この話題についてこられる生徒が何人もいる。ものすごくレベルが高いと思った。

 私は高校生を子どもだとは思っていない(もちろん完全な大人でもない)。ましてや、「最近の高校生は学力が落ちた」なんて全く思わない。それは適切な評価ができていないだけである。何かを評価するとき、実は評価する側の度量が試されていると思うのである。

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