振り返る言葉、解像度

 高校教員です。
 先日のこの記事と、内容が続いているかもしれない。

https://note.com/tk_skbn/n/ndff45badd51b

 学期末や、試験のあとは、「振り返り」について話す機会が多い。以下は、一学期最後の考査(定期テスト)が終わったあとの手紙(「学級通信」と呼んだりもする)。

 皆さん、とにかく期末考査お疲れさまでした。
 ひとまず、身体を休めてください。睡眠と水分が足りない状態は、人体にとって危険です。

 明日から、いわゆる「学期末期間」に入ります。テストが返され、成績の話も出てきて、「この学期はどんな感じだったかな・・・」と考える人もいると思います(コロナ禍で、とんでもない一学期でしたね)。  私は、この一学期を振り返ると・・・「未だにコントロールできない自分」を発見しました。臨時休校が長く続き、職員も自宅勤務に切り替えた4,5月。自宅で勤務しながら、かなり機嫌よくやれていたはずが、ある時全然寝付けなくなりました。それに焦って、また眠れず・・・ということが数日。自分の心身のバランスは上手く取れるようになったと思っていたのですが、まだまだなようです。それが分かっただけでも、収穫です(睡眠リズムはちゃんと戻りました)。

 「自分を振り返るための言葉」、もっというと「自分の状態を言い表すための言葉」を豊富に持っておくと、今後何かと良いですよ、ということをお伝えしておきます。

 現代人は基本的に、言語によって思考します。周囲の状態も、自分の内面も、ひとつひとつ名前をつけることで格段に捉えやすくなります。
 逆に、ちょっと信じがたいかもしれませんが、人は「名前を知らないものは見えません」。街を歩いていると私達は無数の物事と出会いますが、その名前を知らなければ、基本的には無視してしまいます。物の名前をたくさん知っている人は、想像もつかないくらい「解像度の高い世界」にいるわけです。
 自分の内面(気持ち)でも同じことが起こっています。「何となく不安でモヤモヤしている」という人は、そのモヤモヤを上手く言い表せず無視します。しかし、モヤモヤ自体、なくなりはしないので、それが蓄積して、やがて身体の不調に表れたり、ある時一気に爆発したりしてしまう、なんてことが起こります。「なんか落ち込んでいたけど、誰かに話したらそれだけですっきりした」なんてこと、ありませんか?それは、「自分の気持ちに自分で名前をつけることができた」のだと思います。
 つまり何が言いたいかと言うと。自分の内面を見つめる視点の解像度が高ければ高いほど、自分の「嫌なところ」と上手く付き合えるだろう、ということです。現代文の授業で様々な語彙や、その組み合わせについて学ぶのはこのためだと私は考えています。

 また、「振り返る言葉」は、周囲からのアドバイスも引き出すことができます。
 テスト勉強をしていて、わからないことを誰かに聞く時、「なんかこの科目わからないのだよね」と言うよりも、「この問題のこの部分の考え方がわからない」とか、「解説のこの部分からわからなくなる」と、詳細に伝えられた方が、より的確に問題解決に向かうことができます。
 自分がイライラしている時なども、「今自分はこういう状態で、これにイライラしている」と伝えられた方が、相手は「あ、じゃあ少し時間置くね」とか「その原因はすぐ対応して取り除くね」とか「それはあなたの認識を変える必要があるね」とか、より具体的に反応できます。

言葉は社会に開かれたインフラ(=誰でも使えるツール、ということ。義務教育で皆学んでいるから)です。上手く使いこなせると良いです。
 私も、まだまだ下手くそですが、日々、言葉の扱いを学んで改善させているつもりです。

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