「公務員はやめとけ」と言ってた合宿の同僚の話
僕は大学を2年留年して迎えた24歳の夏休み、運転免許を合宿で取りに行った。
運転免許合宿というのはとても面白い。
いろんな大学の男女が、地方の同じホテルに泊まって同じ教習所に通い、イベントを通じて仲良くなるのだ。
僕は2年留年していたので、現役学生の集団の中で仲間ができるか心配だったのだが、オリエンテーションで声をかけてくれた男がいた。
話を聞くと彼はKO大学の院生で、同じ年恰好の僕を見つけて声をかけてくれたようだった。
今から20年前の当時はデフレ真っ盛りで不景気。新卒でも契約社員や派遣社員になるのが珍しくなかった時代だ。
僕は当然進路が決まっていなかったが、
KOの彼はメガバンに内定済みであることをすぐに僕に話してきた。
苦労話は一切ない。自信に満ちた彼の話の行間からは、「余裕」という二文字を読み取らずにはいられなかった。
大学が違うとこうも人生が違うのかと思い知らされたものである。
そんな彼が、「公務員はやめとけ。」と言っていたのを、今も思い出すことがある。
「公務員って一種のことだよね?いやありえないよwまして二種や地方なんて、ありえないありえないww」と彼は笑った。
当時は平成不況真っ只中だが、その時代でも、先輩から情報が入ってくるこの学閥の学生コミュニティーでは公務員は全く不人気だったようである。
時は流れて令和。
狭い学生のコミュニティーではなく世間一般の間で、公務員受験の不人気や、若手官僚の早期退職が話題になっている。
公務員になれば経済的安定と身分保証がある。
デフレ世代にとって公務員就職は憧れだった。
それが令和の今、物価高騰と賃上げトレンドの中で、公務員の年収はZ世代の若者からすれば平凡以下。
激務、組織優先、自己犠牲のストレス。
コスパが悪いと評価されているようだ。
出世や権力という特権についても、令和世代にとってはあまり響かないようだ。
自分自身の人生や家族の幸福を追求する価値観が強くなっている。
今SNSで支持や共感を集めているのは、「生命が一番大切、早く逃げろ」「君の代わりはいくらでもいる、それが組織」「我慢は時間の無駄」といったもの。
これは若者世代だけでなく、昭和世代に生まれて組織への奉仕と我慢を続けながらも、多くの場合見返りが少なかった(むしろ昇給凍結や賃下げなどの憂き目にあった)今の50代前半から40代の世代からも、大いに共感を得られるものだと思う。
時代は変わっているのに、組織のあり方が昭和の頃と変わらなければ、自分軸を持った前向きな人ほどそういった組織からは去っていくものだろう。
構成員なしに組織は成り立たない。
人が去れば、組織も気がつくのだろうか。
気がつけば、組織は自浄能力を発揮し、時代に合わせて変わっていくのだろうか。