TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~STAND 3 FINAL~ Tour Report Part.1
TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days~STAND 3 FINAL~の会場。
ステージ上にはツアータイトル入りの幕。
セットは見えない仕様となっている
前回のDEVOTIONツアーとは打って変わり、
会場内に流れるSEはオペラ。
聴こえてきたのはロッシーニ?
パヴァロッティ?…
パヴァロッティといえば、ロン・ハワードが撮ったドキュメンタリー映画『パヴァロッティ 太陽のテノール』があったことを思い出す。
1990年FIFAサッカー・ワールドカップの舞台で、20世紀最高の3人のテノール歌手、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ、ルチアーノ・パヴァロッティが競演した伝説のコンサートは記憶にある人もいるだろう。サッカー愛と友情で結ばれた3人が奏でた奇跡の「誰も寝てはならぬ」は世界中の人々を魅了した。
「三」大テノール。
STAND「3」FINALになにか通じるものがあるのか。あるいは「ロック・オペラショー」の意味なのか。
opening
幕が上がる。ステージ上の配置は前ツアーと上下(かみしも)が変わり、上手(かみて)に小室哲哉の「要塞」キーボード・ブース。下手(しもて)にはなんとグランドピアノが置かれている。
実は今年の初夢に「グランドピアノを先生が買う夢」を見た。今、言っても信憑性には欠けてしまうのだが…
心音のようなBPMの低音が響く中、映像が始まる。
3つの四角があらわれ、まるで額縁のよう。
画面の中には潜伏者の3人。
小室さんは潜伏基地に佇み、古い重厚な本をめくり、何か計画を練っているのか描いている。
宇都宮さんは活版印刷の活字を拾い、木根さんはアルファベットを探している。何か言葉を紡いでいるように見える。
本の中から広い集められたアルファベット。赤い流線が3の文字を描き出すと、ツアータイトル「STAND 3 FINAL」の文字が浮かび上がる。高揚感が高まるインスト、その心音のような響きは次の曲へとつながっていく。
下方から上方へ向かって青いリボンのような光が9本伸びていき、丸い9基の飛行体が浮かび上がる。
動くつるされたこの物体は無観客ライブの「How do you crash it?」の継承を思わせる。その時は△であったものが⚪になっている。やがて☐へとつながっていくのだろうか…
そして映像の中の3人が現実となってゆっくりと登場。特徴的な、あの曲のイントロの、あの音が繰り返し聴こえてくる。
3人が舞台にゆっくりと登場。
客席のバングルライトが一斉に灯される。
M1・Nights of the Knife
1994年「TMN終了」時のシングル。今回も驚きを隠せないオーディエンスも多かったように見受けられた。10年前のQuit30ツアー初日、横須賀公演のみで演奏され、2日目以降はセットリストから消えた曲。
あの横須賀で泣き崩れた潜伏者たちも多かったはず。背景に、ちぎれた紙片が紙吹雪となって飛んでいく画像が流れる。あのときの「もやもやした何か」がいま、宙に舞って消えていったのかもしれない。むしろ、今でははじまりを感じさせる前向きな歌詞が心に残る。
この曲は小室さんはシンセ、木根さんはグランドピアノという構成。
M2・DEVOTION
前ツアーからの続投曲。客席は2曲目からすでにヒートアップ!!
もうFANKSの間では定着されたと言っても過言ではない。「NO NO NO」の振り☝️☝️もお忘れなく!
ライブ映えする1曲。素晴らしい歌詞をたどりながら、小室さんのコーラスはこの曲の重要な要素のひとつだ。イントロとアウトロの木根さんのギターソロも見どころ。
小室さんはボイストレーナーをつけて練習されているとSNSで公表されていた。歌唱はとてものびやかで高音域のハモリも出ていて、小室さんの声質がとても活かされていたように思う。
たとえ向上心を抱いても、行動に移すことは簡単なようでいてとても難しいことだ。そうしたたゆまぬ努力に感服する。
M3・DIVING
2007年発売のアルバム「SPEEDWAY」収録曲。映像には歌詞に出てくる色がカラフルに展開されていく。
おそらく、多くの人がライブで聴きたかった曲のひとつではないだろうか?
ウツがギターを持ち、ラララララをクラップしながら客席に歌うことを促す。
小室さん手弾きのハモンド・ソロ!
プログレッシブ・ロック全開のシーン。
そして、Day27山口公演からは宇都宮さんと木根さんがギターを弾きながら、ハモンド・オルガンの小室さんのもとに集い、3人のセッションが展開される。
永遠の音楽少年たちのJam。
このトライアングルは40年前から、もっと前から、ずっと変わらない構図なのかも。
純粋に音楽を夢中で楽しむ姿がエモーショナルに映る。
グリッサンドを交えながら、ハモンドを奏でる小室さんの綺麗な色の髪が揺れ、キース・エマーソンか、はたまたカート・コバーンのよう。
クールなTMとはまた違う3人の表情に、観ているこちらの心が躍る。
それを2024年の今、目撃している奇跡を感じた。
今ツアーのアレンジや、曲の間奏はグラム・ロックとその時代のフォーク、そしてダンス・ミュージックの融合が懐かしく、そして新しい。TM NETWORKが、小室哲哉が産み出してきたサウンドは、多岐にわたるジャンルの、多くの音楽、豊かな音色から創造されていることがとてもよくわかる構成だと感じる。
M4・ 君がいてよかった
2012年シングル「I am」、2014年のアルバム『QUIT30』とも違う、とてもダンサブルなアレンジ。原曲よりもBPMが上がっているのが心地よい。毎日すり減っていく自己肯定感を回復させてくれるような歌詞が沁みる。
そしてDay28の2/9名古屋公演からは、ご当地ソングが爆誕!
小室さんが「名古屋で!」「新潟で!」「神戸で!」「札幌で!」「立川で!」とそれぞれの地で歌詞を入れ替えて呼びかける。
「よかった\(^^)/」と続くと客席から「キャー」という歓声が上がる。
地元FANKSはもちろん、観客みんながその場所でしか聴けない、その日にしか聴けないワンアンドオンリーを共有できた1曲となった。
ちなみに立川では「立川で!」「よかった」の後に2回目の地名が入る部分が「みんながいて!」に変更されていた。
M5・ GOOD MORNING Mr.ROADIE
前ツアーから続く、木根さんと小室さんふたりのコーナー。小室さんによるフォーク・ソングは、洗練されていて、リアリスティックな今を思わせるような歌詞。コンサート設営スタッフの方々(ローディ―)への感謝が込められ、労いの言葉が綴られている。
昨年12/13に小室さんはTOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」にゲスト出演し、メディア・アーティストの落合陽一さんと対談した。
その際、番組内でジャクソン・ブラウンの「Stay」をリクエストしていた。
ジャクソン・ブラウンのこの曲は1977年のアルバム「Running on Empty」に収録されている。コンサートが終わってしまうのが名残惜しいと歌う、ミュージシャンの心境を現した曲だ。
この曲は「The Load-Out」という曲と対になっており、「The Load-Out/Stay」としてシングル・カットされている。
この「The Load-Out」こそ、ジャクソン・ブラウンがローディーへの感謝の気持ちを込めた楽曲なのだった。
おそらく、この曲をモチーフとして、今回「GOOD MORNING Mr.ROADIE」を制作したのではないだろうか。ジャクソン・ブラウンの誠実さ、人柄が伝わる優しい曲調。「GOOD MORNING Mr.ROADIE」にはその思いが継承されていると感じる。このようなテーマの楽曲は洋楽・邦楽を問わず、なかなか見当たらない。
この曲はきっと小室さんなりの「The Load-Out/Stay」。
木根さんと小室さんが奏でるハーモニーはあたたかく、優しく会場を包む。2/18のDay30新潟公演からはツアートラックが公演会場に到着する様子、搬入の様子が画面に映し出されるようになり、会場の歓声を誘った。
そして、3/7・3/8のDay33・34立川公演では演奏時の映像にローディ―のみなさんとメンバーとの集合写真が追加され、映し出されていた。
また、3/8最終日の公演後には、歌詞通りその集合写真がSNSにポストされていた。
Part.2へつづく…