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一力遼「応氏杯」初制覇 日本棋士で19年ぶりの世界戦優勝

すごいニュースが飛んできた。当日のtwitterの、囲碁界の熱狂と言ったらすごかった。

何を隠そう、私は9月8日のその日、日本棋院で応氏杯第三局のパブリックビューイングに参加していた。19年前に世界戦で優勝した張栩先生と我らのアイドル梅沢(吉原)先生という豪華な2名の解説で始まった大盤解説会、張栩先生が105手目の愚形の好手を読み筋として数手前に披露した場面は会場が大いに沸いた。途中で上野愛咲美先生が訪れ、111手目中央コスミツケの強手が打たれると「この対局はもう勝ちです!」と笑顔で言い放って会場は色めいた。その後コウ仕掛けのあたりから劣勢になり会場の空気は落ち込むも、171手目のカドで根拠を奪う手が打たれると張栩先生は「この流れ、しゃかさんは自分がそこまで良いと思っていないかもしれない。更に、しゃかさんは早見え早打ちでこれまでほとんどペナルティ(2目払って35分の持ち時間を増やすこと)を経験しておらず、ペナルティ慣れしていない」と精神面の解説で会場を励まし、ついには200手目のツギが打たれると梅沢先生が「評価値が戻りましたよ、きゃーーー!!!!」と本当に叫んでいた。

日本棋士の偉業や日本囲碁界の世界的な位置付けの変化など、twitterで多くが語られているが、パブリックビューイングに参加した私が今回感じたのはLIVE観戦の可能性だ。この対局の重要性や一力先生のカリスマももちろんあるものの、LIVE観戦中はまるでサッカー日本代表を見ているように形勢で会場の雰囲気が熱気を帯びたり落ち込んだりしていた。

「解説の〇〇先生に会えるから」「対局後にビンゴ大会があるから」私が持っていた囲碁の対局観戦のイメージはそんなものだった。しかし、今回のパブリックビューイングは、HUBでビール片手にワールドカップを見て一喜一憂するのに似たような熱量があった。好手が打たれて拍手喝采、勝ちが見えて歓声、逆転となれば咆哮がそこにあった。

将棋のabemaトーナメント、地域対抗戦では、対局当日にその地域の人がパブリックビューイングを楽しむ姿が放映されていた。「そんなに面白いものかね」と少し冷めた目で見ていたが、未だに冷めない興奮が、囲碁の次の楽しみ方を予感させる。囲碁観戦そのものの価値を高めることが、囲碁の発展に不可欠であると考えている。

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