見出し画像

蔦屋書店で見知らぬ人に本を勧めた数分間のこと

一人時間ができるとつい足を運んでしまうのが本屋さん。
今日は夫に息子をみててもらい、一人で梅田を散策。
蔦屋書店にももちろん行った。


ぐるりと並ぶ書棚を眺めてゆっくり歩いたり、気になる本を手に取ったり、気ままに過ごしていると同年代くらいの女性から声をかけられた。
「あの…本とかよく読まれますか?」
どういう意図で声をかけられたのか分からず、驚いてうまく返答ができずにいると、いろいろと経緯を教えてくれた。

『友達の誕生日に本を贈りたいけど、本について詳しくないからおすすめがあれば教えてほしい』とのことだった。
プレゼントになにが欲しいか尋ねたら、「本が一番嬉しい」と言われたらしい。
ご友人は普段から本を読むタイプで、特に映画化やドラマ化されたものの原作はよく読んでいるとのこと。


すごく難しいなと思ってしまった。
だってぴったりなものをおすすめできるほど私の中にはライブラリーがない。
けどなんだかウキウキもした。本を勧めるということに。


少し話していると、その女性のお連れの友人も来て、3人でまた話をした。
普段どういうタイミングで本を読んでいるのかとか、どんな本が好きかとか、いろいろ尋ねられて、聞かれるがままに答えた。すごく辿々しくなってしまっていたと思う。
自分は持ち合わせていない積極性に驚き、静かに感嘆していた。

「最近読んだ本でおすすめありますか?」と聞かれ
急だったこともありちょうど良さそうなものがすぐには思い浮かばなかった。
ただ、最近読んだ中ですごく印象に残っていて、まさに誰かにおすすめしたいと思っていたものがあったのだった。
映像化されているのでもう読んだことがあるかもしれないと補足しつつ、
辻村深月の「傲慢と善良」と
平野啓一郎の「空白を満たしなさい」を紹介した。
その場で検索してくれて、あらすじを見て面白そうとか、表紙を見たことがある!とかコメントしてくれた。
探してみます、と彼女たちはその場を去っていった。

ひとりになると頭のなかがおしゃべりになる。
エッセイが好きなら〇〇がいい、感動する系のものが好きなら〇〇がいい、とかいろいろと浮かんできた。
あんなに質問などしてくれたのだから、もっとそれに応えたかったし、その場で話をするだけじゃなくて一緒に本を見て回ったりしてもよかったかもしれない。

一連の出来事のあと、花田菜々子の「出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと」を思い出した。
初対面の人に本をおすすめしまくった作者の体験を書いた私小説だ。
見知らぬ人に本を勧めることになった、この不思議な状況にぴったりだった。
この本を紹介できていればメタ的要素があって面白かっただろうな…とめちゃくちゃ惜しい気持ちになった。



本を勧めるって私は素敵なことだと思っている。
なんだか押し付けてしまうような気もするけど、その本の良さを伝えたいという気持ちが強い。
心を動かされる感覚を、自分の思いを、伝えられたら素敵だし、受け入れてもらえたらとんでもなく嬉しいだろうと思う。

今回は相手のことを知る材料があまりにもなかったことや、私の力不足もあり、独りよがりなおすすめになってしまったかもなあと思っている。
しかし、不思議なきっかけだったけど、全然ぴったりのものは紹介できてないけど、「知らない人に本を勧める体験」ができて嬉しかった。

またこんなことができたらいいなと思う。


いいなと思ったら応援しよう!