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【一幅のペナント物語#56】パーフェクトな一作。昭和の観光地は楽しい!

◉ポコンと頭を突き出しているのは「覚円峰(かくえんぽう)」と名が付いている岩山だそうだ。高さ約180mの昇仙峡の主峰で、覚円という僧侶がこのてっぺんで修行したことにちなんだ名前だとか。

よくぞこんなつるんとした所で・・・(撮影: クルマ旅写真館様 photoACより)

ここは山梨にある国の特別名勝「昇仙峡」。ペナントには珍しく、二等辺三角形の枠をはみ出す加工でひときわ目を引く。奇岩がそそり立つ迫力を上手く表現しているなと思う。通常よりも手間がかかるだろうに、それだけ制作者のこだわりが強かったということだろう。縁のモールも、白と紫の糸と金のテープを組み合わせた手の込んだものを使ってある。実際、手元にあるこれは画鋲の痕も残っていて、部屋に飾られていた証の劣化が激しい。しっかりと本分を果たしていた優秀なペナントである。

覚円峰の部分を拡大してみた

◉大きなサイズのペナントではないが「昇仙峡」を象徴するモチーフが複数入れ込まれていて、昇仙峽ロープウェイ、そして葡萄の葉っぱ形の枠内には、1925年(大正14年)に竣工した県内最古のコンクリートアーチ橋「長瀞橋」が描かれている。2012年に選奨土木遺産にも認定された歴史的価値の高い橋だ。

観光地に欠かせない「観る」「食べる」「乗る」の三大要素をしっかりコンパクトに詰め込み、その上、独特な加工でアピールする・・・というペナントのありようとしてまさに理想的。”日本一の渓谷美”と謳われる観光地のプライドを感じる一幅だ。

◉2020年(令和2年)には日本遺産91番目の認定を受けた「昇仙峡」。昨年は、国の名勝に指定されて100年、かつ特別名勝になって70年の記念すべき年だったようで、短歌コンテストなどで盛り上がっていた模様。観光協会も新しいものをどんどん採り入れているようだし、まだまだ観光地として伸びしろのある場所だと思う。



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