語楽:ブレベis何
スタバの呪文が唱えられない民なので “ブレベ” というオプションのことを初めて知った。
ブレベってなに?
いつものことだけど言葉自体が気になる。ので、調べてみた。
日本のスタバでは
『ミルクとホイップ用クリームをブレンドしたもの』をブレベと呼んでいる模様。ブレベオプションは『ミルクの代わりにブレベを使う』こと。
味わいが甘く濃厚になり、泡の舌触りもしっかりしたものになるのだとか。攻撃力も上がるけれど。
言葉の源流は
元はイタリア語のbreve。意味は『短い』や『簡潔』。英語でいうとbriefと縁のある単語。
……それがなんで牛乳と生クリームの混合液を指すことに?
遡ると、カフェ・ラテを基にアメリカで生まれたカフェ・ブレベ(他にブレベ・カフェやブレベ・ラッテなど)という飲み物に行き着く。
アメリカでのアレンジ
まず前提として、アメリカでは牛乳と生クリームを一対一で混ぜたものが普通に売っている。複数のメーカーから発売されてて、一般に “half-and-half” と呼ばれるそうな。
コーヒーに入れたり朝食用シリアルにかけたりするらしい。甘そう。
こいつでカフェ・ラテを作ろうと、誰かが考えた。天才。
牛乳より乳脂肪分の多いハーフアンドハーフは、多少雑に蒸してもしっかりした泡が立つし潰れにくい。
カフェ・ラテだけだとシロップやドーナツを足したくなる人でも、牛乳をハーフアンドハーフに換えればかなり満足感がある。
結果、カフェ・ラテに比べて作るのが楽だし洗い物も少なく済む。言わば『省エネ版カフェ・ラテ』で、そういうニュアンスでbreveという語をあてた可能性はありそう。
語源は想像だけど、ともかくアメリカではこの簡易版カフェ・ラテがカフェ・ブレベなどと呼ばれた。
再び日本のスタバにて
日本で “ブレベ” と呼ばれる液体は、アメリカの “half-and-half” と大体同じモノだろう。
でも日本でハーフアンドハーフっていうとピザのイメージが強いから別の名前を付けたくて、悩んだ末に(語義としては遠いのを承知で)ブレベって呼ぶことにしたのかも知れない。
breveという単語には半分とか同量とかミルクとかの意味は一切無い。
アメリカでカフェ・ブレベと呼ばれたドリンクに必要不可欠な要素だから、『ミルクとホイップ用クリームのブレンドしたもの』をブレベと呼ぶことにした(※)、ということかも知れない。
スタバの内部事情なので確かめようがないけど。
※元の事柄を(関連する)別物に言い換えているので、換喩の一種。
実際には植物と何の関係もないのに樹脂っぽい性質があるから樹脂と呼ばれる合成物質とか、日本以外ではそんな名前どこでも使われてないのにフランスから来たからラ・フランスって呼ばれる梨とか。
逆輸入、その結果
今はイタリアでも楽しまれているらしいカフェ・ブレベ。イタリアでもbreveを含む名前で呼ばれている。
ただ、ネットで見つかるイタリア語レシピは材料として同量の牛乳と生クリームを含むものがほとんどで、“half-and-half” にあたる既製品はあまりポピュラーではなさそう。
(直訳すると “metà e metà” になるけど、これは日本と同じくピザか、種類の異なるクリームチーズを混ぜたドルチェなどを指すようだ)
ということは、イタリアでカフェ・ブレベを作るのってカフェ・ラテより面倒なのでは……?
breve(簡単)とはなんだったのか。
ことばって本当におもしろい。