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自動車は今、先祖返りしていると思う
まえがき
自動車ライターとして仕事をしていて、思ったことがあるのですが。それが、「自動車の先祖返り」です。
これは、最近のフエラディZなどで、「古いモデルのデザインをオマージュしたりすること」も、先祖返りのひとつといえるが、もっと大きなくくりで、「車の価値」も先祖返りしていると思った。
自動車の誕生は、馬の不要な乗り物
時は1888年、場所はドイツの田舎町で、自動車「モートルヴァーゲン」が発明されたとされる。これには賛否あるけれど、石油系燃料(当時薬局で手に入るような油性洗剤が燃料だったらしい)を利用した車という意味では、ここが最初となる。
当時の主流は、蒸気機関車や馬車が専らで、一般人にとってモートルヴァーゲンは、未知の技術が詰まったものだったそうだ。
これを作った、カール・ベンツの婦人ベルタが、カールに内緒で子供を連れ、勝手に実家までモートルヴァーゲンで子供を連れて帰ったというう話があるが、これが自動車初めての長距離旅行だったといわれている。その走行距離は100kmで、12時間もかかったそうです。
つまるところ、楽に移動をするために発明されたといっていい。
どんどん加速した性能競争
パリの万博で初めて発表された自動車は、モートルヴァーゲンだけではありませんでした。
ダイムラーの作った、ワイヤーホイール車も出展されていました。性能差も大きく、「1気筒のモートルヴァーゲンと、2気筒で倍のパワーのダイムラー」、「3輪のモートルヴァーゲンと、安定感のある4輪のダイムラー」だった。
ただ、この場では宣伝力で上回った、ベンツのほうに人気が集中したとある。
この頃になると、自動車がビジネスになるとフォードも車を作り始める。フォードは、デモクラシーの流れもアリ、庶民は価格ながらモートルヴァーゲンの4倍ものパワーが出ていたそうだ。
より良いもの、高性能なものを作りたいという欲求は、技術者や職人肌の根底にあるものでしょう。
馬力という考え方が誕生したのもこの頃で、エンジンでどの位のものを引き上げられるか(トルク)とエンジンの回転数から、馬力を計算するようになる。これで、エンジン性能を客観的に数値比較できるようになった。
世界初の公式レース
こうなるともう、競争はとどまることを知らず、1895年にフランスで初めて公式に行われた自動車レースが催される。主に、宣伝のために行われたと言われるが、その背景には富裕層が自慢のために車を買うといったケースが多かったのだと思う。
ある種のブランディングだが、最初は便利なものの発明だったものが、さらなる性能を求めるものへと変わったという事実でしょう。
現代でも、ソラーカーレースや、トヨタの水素エンジンでの耐久レースへの参戦など、レース活動から一般車両へ技術をフィードバックしていく姿もよく似ています。
自動車の進化は、繰り返されている
自動車の始まりは、「便利な乗り物」として誕生し、「高性能な乗り物」へと需要が変化してきました。
そして、世界戦争に突入すると戦車や、輸送の観点から「便利な乗り物」へ、そして戦争の中で、より頑丈に、より速く「高性能な乗り物」になっていきます。
次に戦後には、経済成長に必要な「便利な乗り物」になり、豊かに成長する生活の中で「高性能な乗り物」になっていきました。
その後のマスキー法の制定によって、車の高性能化より、環境性能が優先され、「便利な乗り物」へとシフトしていきます。
バブル期に車は「高性能な乗り物」としてグングン成長し、環境問題によって現在の車は「便利な乗り物」になろうとしています。
こうやってみると、それぞれの時代に変化は存在しているし、「100年に一度の自動車の大変革」というのも少し大げさな気はします。
しかし、この間ずっと同じだったものが石油系燃料です。
自動車の転換期(現在)と誕生(過去)
現在の自動車業界は、大きな転換期を迎えているといわれています。
今、自動車に求められているものは、環境性能ですが、エネルギーをガソリンから、電気や水素をエネルギーとした自動車を作ることが目標になっています。
その姿は、蒸気機関では水蒸気、馬車では馬を利用していたものを、石油系燃料に切り替えたことに似ています。
「ボイラーを温める時間が不要で手軽」とか、「馬の事を考えずに済む」などと、「環境に配慮したエネルギーを」という意味では少し違いますが、乗り物の仕組みに、変化が起こったという事実は同じです。
現実に、電気自動車や、水素自動車は街中を走りだしています。
それに合わさるのは、車の高性能化です。「より楽に」、「より速く」、「より遠くに」という高性能化は、自動車における永遠の課題といっていいでしょう。
そのために現在、トヨタが先日発表した全個体電池をはじめとする、「EVシフトを受け『全固体電池』の実用化競争が加速」というニュースがあったり、トヨタの水素をエンジン内で発火させるエンジンなどが存在します。
それを言い換えるなら「より楽に環境規制をクリアできる燃料」で、「自動運転によって円滑で速く移動」、「一度の満タンで、ガソリン自動車よりも遠くへ」といった車が望まれています。
言いたいこと
この状態は、自動運転の「便利な乗り物」と、環境重視の「高性能な乗り物」の両立をしようとしていて、非常にお金がかかって、難しいことを二個同時にやっているようにしか見えません。
予算にも限りがあるんだから、とりあえずどちらか一方を集中して研究開発したほうが、少ない予算で長引くよりはよほどマシだと思うのです(試作や、テストの回数が製品の完成度に影響を及ぼすのは言うまでもありませんが、予算がその時間と結果のほとんどを左右するといっても過言ではない)。
このように、技術的な知識が、一般的に少ない業界の規制ってたまに無理が過ぎることがあって、そのしわ寄せがどこかに行くわけですが、今回も自動車かと思うわけです。
結局、こういう時の車の変化は「便利な乗り物」としての変化が強くて、その後にどんどん性能アップしていくパターンなのかなと思います(当然ですが、技術なんてものは、後出しのほうが強いのは当たり前)。
なんだかんだ考えると、スポーツカーとか、個性的な車とか、趣味感の強い車が好きな私にとっては、すこし寂しい時代を迎えるのかなーと思うわけです。
今乗ってるMR-2と、レガシィ、親父のマークⅡは大切に乗ろう、、、